【鍼灸】鍼による整体【治療】
【鍼灸】【治療】
◎鍼による整体
よく肩や腰が痛くなると「マッサージ」や「整体」に行こうと考える方が多いと思いますが、この「整体」とはなんでしょうか?
「整体」という言葉の明確な定義はありませんが、この言葉を聞いてイメージするのは、「背骨をバキバキ」とやる治療だったり、「骨盤矯正」を謳い文句にしてる治療法でしょうか。
「整体」という言葉を使い出したのは大正時代、アメリカからカイロプラクティック、オステオパシー、スポンディロセラピーなどが入ってきて、また日本の民間の手技療術が合わさり「整体」という造語が出来たようです。
山田信一先生が出した「山田式整体術講習録」が整体という言葉が世にでた最初であり、その後野口晴哉先生の「野口整体」が広まり、「整体」という言葉が定着していきました。
私個人の意見としましては、「体が整えば整体である」と勝手に思ってます。
そこで鍼による「整体」の1つのやり方をご紹介します。
「皮内鍼」という小さな鍼と知熱感度という検査方法を使うやり方です。
皮内鍼の説明についてはこちらをご覧下さい↓
https://revive-reha-azamino.com/post/post-3888post
この皮内鍼というのは赤羽幸兵衛という先生が発明した鍼で、現在皮内鍼を臨床で補助的に使う鍼灸師の先生方も多いと思いますが、今回は赤羽先生のもう一つの独創、「知熱感度測定法」を行い、その測定結果に基づき「皮内鍼」を治療の主役として使い、「鍼の整体」のデモンストレーションをしてみたいと思います。
1.知熱感度測定法のやり方
手足の指先、爪の生え際の角にツボがあり、これを「井穴」という括りで呼びます。
「井穴」というのは、以前ツボのお話でした「正経十二経脈」の起点もしくは終点になっており、六臓六腑に繋がっています。
※こちらで少しだけ正経十二経脈に触れました。
https://revive-reha-azamino.com/post/post-3712
知熱感度測定法はまずこの手足の井穴を火の着いた線香で擦ります。そして擦った数を数えて、患者さんが熱いと感じたら、「熱い」と言ってもらい、熱く感じた回数を記録します。
それぞれの部位の左右の数が同じくらいが正常で、熱く感じる回数が早い方がより良い状態です。
知熱感度測定法では、正経の井穴の他に、赤羽先生が提唱した「中沢」(手の中指で、心包経の中衝と反対側)と「第二厲兌」(足の第三趾外端)、そして腎経の井穴は「湧泉」という足の裏にあるツボなので、知熱感度では「内至陰」(足の第五趾内端、膀胱経の至陰の反対側)を使い知熱感度を測定します。また肝経の「太敦」は本来、足の第一趾の爪の生え際の角、外端に取りますが、知熱感度測定法では生え際の真ん中に取ります。
2.皮内鍼による治療法
知熱感度を測定して数を数え終わったら、左右の数字を比べます。左右の数字の差が、少ない方の数の2倍以上の開きがあるところが治療する場所になります。
例えば手の親指の数が、右が3、左が7だとすると、左の数7は右の数3の2倍(3×2)以上なので、治療するところになります。親指の井穴「少商」は肺経のツボになります。
背中には六臓六腑の名前が付いたツボがあります。これを背部兪穴といいます。
図をご覧下さい。背中に肺兪というツボがありますね。※肺兪は第三胸椎棘突起の真下から、左右に二横指(3~4㎝)の位置
肺経を整えるのには肺兪を使います。
知熱感度測定法で「数が多かった」方に皮内鍼を入れます。
先ほどの親指の例で言いますと、右が3、左が7で左が右の2倍以上の数なので、「左」の「肺兪」に皮内鍼を刺します。
ちなみに手の中指の「中沢」は背部の「膈兪」、足の第三趾の「第二厲兌」は背部の「八兪」(膈兪の下)に対応します。
3.術後の検査
皮内鍼を刺し終わったら、再度、知熱感度を測定します。皮内鍼が正しく刺さっていると、患者さんが感じる熱さが施術前より熱くなり、少ない数で左右が揃います。左右が揃わない場合は皮内鍼の位置が間違っているので刺し直します。特に「小腸兪」と「膀胱兪」は正確に刺さないと数がなかなか揃いません。
不揃いだった左右の熱感が揃う=体が整った
ということになります。
これが鍼による整体です。
4.実習
さて「鍼の整体」として、知熱感度測定法による皮内鍼の治療法を述べてみましたが、文章ではよくわからないですよね。
実際見て頂いた方がわかりすいでしょう。
PTのS先生(腰が痛い、お腹の調子が良くない)とK先生(アトピーがある)にモデルをお願いしました。
①知熱感度の測定
一部ですが、S先生の手足の測定したところをご覧下さい。
このように線香を横にして手足の爪の生え際を擦ります。
下の写真は【左側:S先生】と【右側:K先生】の知熱感度の測定結果です。
②治療穴の決定
S先生の測定結果を見ると
大腸(左:5 右:2)
心包(左:2 右:4)
なので、治療穴は
「左側の大腸兪」
「右側の厥陰兪」
となります。
K先生の測定結果を見ると
心包(左:2 右:6)
肝 (左:1 右:6)
腎 (左:2 右:8)
膀胱(左:6 右:17)
なので、治療穴は
「右側の厥陰兪」
「右側の肝兪」
「右側の腎兪」
「右側の膀胱兪」
となります。
③皮内鍼の刺入
では皮内鍼を背中に刺してみましょう。
2人の背中に皮内鍼を刺しテープで留めました。
④術後の測定
S先生の結果は
大腸(左:5 右:2)→(左:1 右:1)
心包(左:2 右:4)→(左:1 右:1)
左右どちらも回数が「1」になり揃いました。
ちなみにS先生の腰痛部位はちょうど左の大腸兪辺りだそうで、術後、腰が楽になったと言ってくれました。
K先生の結果は
心包(左:2 右:6)→(左:1 右:1)
肝 (左:1 右:6)→(左:1 右:1)
腎 (左:2 右:8)→(左:2 右:3)
膀胱(左:6 右:17)→(左:4 右:6)
実は膀胱兪は2回刺し直しました。難しいです。
K先生が普段飲まれているお薬が、循環、解毒、排泄機能のある心包、肝、腎、膀胱に影響が出たのかもしれません。
K先生の不揃いだった「肝」ですが、右側の肝兪に皮内鍼を刺して、再度知熱感度を測定した様子をご覧下さい↓
鍼の整体、いかがでしょうか。
今回は知熱感度測定法を用いた皮内鍼の治療法をご紹介しました。
身体の状態を検査し、術者も患者さんも左右の不揃いな感覚を確認し、治療するポイントを決めて、その後治療が上手に出来ると左右の感覚が揃うことを患者さんと確認出来るこの治療法。
鍼の整体と言えるのではないでしょうか。
今では少しマイナーな治療法ですが、とても面白い治療法なので、鍼治療に興味を持って頂けたら嬉しいです。
おまけ:特殊動体鍼法
Ⅰ. はじめに
この治療法は、九州の末益粂太郎氏が無分流四代目、宇和川義瑞氏より、“固定的少数治療穴による妙術秘訣鍼法”として、秘伝書と共に教示されたという方法です。
本治療法は、刺鍼後、置鍼したまま身体を動かし、足・腕関節部の牽引および腹式呼吸を併用する特 殊鍼法で、一名《百病応用動体感誘術》とも称する全体的太極療法であり、まさに鍼による整体とも言えます。
II.治療法
1.用鍼
銀鍼あるいはステンレス鍼の寸3、2〜3番鍼を用いるが、患者の体質や虚実により、鍼の大小、硬軟は適宜変更する。
2.刺入寸度
直刺、単刺術で2分から6分刺入を基本とするが、患者の体格に合わせて適宜考慮する。
3. 治療穴
左右行間穴、気海穴、左右合谷穴の合計5穴である。
4.施術方法
1) 立位:
左右の行間穴に2〜3分直刺し、そのままゆっくりと5〜6歩、歩行させた後、ベッドに静かに仰臥位にさせ、吸気時に速やかに抜鍼して軽く後揉法を行う。
2)仰臥位:
気海穴に6分直刺した後、下肢伸展位のまま静かに起き上がる。
3)坐位:
両手を膝上に置き、合谷穴に2分直刺し、手を軽く5〜6回屈伸させた後、気海穴の鍼を呼気時に抜鍼し、次に合谷穴の鍼を抜鍼する。
4)手技:
抜鍼後、足関節と腕関節の牽引を5〜6回行い、腹式呼吸を5回させて施術を終了する。 (腹式呼吸は、臍下丹田に注ぎ込むように、深く吸い込み、ゆっくりと呼息するように 指導する。)
5.施術時間
施術時間は約5分、1日1回。1〜2週間継続すれば効果がある。
Ⅲ.まとめ
本治療法は、五臓六腑を根となし、四肢を梢となす臓腑経絡学説に基づく太極療法で、主治穴である気海穴は臍下丹田にあり、先天の気を承けて始まり、一身の太極をなす処である。また、合谷穴と行間穴は、共に五行穴の陰陽の要穴であり、流注の初めの陽分と終の陰分に所属する。これらの穴に補瀉迎随の鍼術を施すことにより、経絡の調整がはかられ、疾病の予防、治療に効果があると考えられる。
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