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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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【脳卒中の治療について〜脳梗塞急性期〜】

2025/01/21

目次

【脳梗塞急性期】

経静脈的溶解療法(Intravenous Thrombolysis)とは

経静脈的溶解療法は、急性脳梗塞の患者に対して血栓を溶かし、血流を再開させるために行われる治療法です。特に、発症後早期(4.5時間以内)に適応される「t-PA療法(組織プラスミノーゲン活性化因子を用いた治療)」が広く知られています。この治療は、脳梗塞による後遺症を軽減する目的で使用され、早期治療が成功の鍵となります。


t-PA療法の概要

使用薬剤

  • t-PA(Tissue Plasminogen Activator):血栓を溶かす酵素を活性化させ、血流を回復する。

投与方法

  • 発症後4.5時間以内に、t-PAを点滴で投与します。
  • 適切な患者選択のため、治療前に脳のCTまたはMRIを行い、脳出血や梗塞の広がりを確認。

適応条件

  1. 診断:急性脳梗塞であることが明確。
  2. 時間制限:発症から4.5時間以内。
  3. 年齢:原則として18歳以上。
  4. 出血リスクが低いこと
    • CTやMRIで脳出血が確認されない。
    • 血液検査で凝固異常がない(PT-INR ≤ 1.7、血小板数 ≥ 100,000/μL)。
    • 血圧が安定している(収縮期血圧 ≤ 185 mmHg、拡張期血圧 ≤ 110 mmHg)。

治療の流れ

  1. 発症時刻の確認
    患者または同伴者から発症時刻を確認。症状がいつ始まったかが重要。
  2. 診断と検査
    • 脳CTやMRIで脳出血を除外。
    • 血液検査で凝固能や腎機能を評価。
  3. t-PAの投与
    • 点滴静注で投与。
    • 一般的には、体重あたり0.9 mg/kgのt-PAを使用(最大90 mg)。
    • 投与量の10%を最初の1分で静注し、残りを1時間かけて持続投与。
  4. 治療後のモニタリング
    • 投与後24時間は集中治療室(ICU)で厳重な血圧管理と出血の監視を行う。
    • 24時間後に再度画像検査を行い、治療効果を評価。

t-PA療法のメリット

  • 早期治療による効果:血流が再開し、脳組織の不可逆的な損傷を抑える。
  • 後遺症の軽減:運動機能や言語機能の回復が期待できる。

リスクと副作用

t-PA療法は有効性が高い反面、出血のリスクが伴います。

主なリスク

  1. 頭蓋内出血
    • 最も重大な合併症で、死亡率が高い。
    • 全患者の約6%で発生するとされています。
  2. 全身出血
    • 消化管出血や注射部位からの出血。
  3. アレルギー反応
    • t-PA投与による発疹や蕁麻疹、まれにアナフィラキシー。

適応外のケース

以下の場合、t-PA療法は適応されません。

  • 発症から4.5時間以上経過している。
  • 頭蓋内出血または大規模な脳梗塞の既往。
  • 最近の手術、外傷、または消化管出血。
  • 抗凝固薬(ワルファリンやDOAC)の使用中で、出血リスクが高い場合。

その他の補助療法

t-PA療法が適応されない場合や、治療が不十分だった場合には以下が検討されます。

  1. 血管内治療(機械的血栓回収術)
    血栓をカテーテルを用いて除去する治療法。特に大血管閉塞に対して有効。
  2. 抗血小板療法
    アスピリンなどを用いて血栓形成を予防。
  3. 抗凝固療法
    心房細動や心原性脳塞栓症の予防のために使用。

まとめ

経静脈的溶解療法(t-PA療法)は、適切なタイミングと条件下で実施することで、脳梗塞患者の機能回復に大きな効果をもたらします。ただし、適応条件やリスクを十分に評価した上で治療を行う必要があります。早期発見・早期治療が成功の鍵となるため、脳卒中が疑われる場合は直ちに救急医療を受けることが重要です。

 

抗血小板療法とは

抗血小板療法は、血小板の凝集を抑制することで血栓の形成を防ぎ、脳血管障害(特に脳梗塞)や心血管疾患を予防・治療するための治療法です。動脈の血栓形成には血小板が重要な役割を果たすため、この療法は動脈血栓症の予防と管理に有効です。


目的

抗血小板療法は主に以下の目的で使用されます:

  1. 脳梗塞の予防
    • 一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞の既往がある患者に対して、再発を防ぐ。
  2. 冠動脈疾患の管理
    • 心筋梗塞や狭心症の予防および治療。
  3. 動脈硬化性疾患の予防
    • 頸動脈狭窄や末梢動脈疾患の進行を抑制。

主な抗血小板薬

1. アスピリン

  • 作用機序
    • シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害し、トロンボキサンA2の生成を抑制することで血小板の凝集を抑える。
  • 適応
    • 脳梗塞、心筋梗塞、冠動脈バイパス術後の血栓予防。
  • 用量
    • 1日75~150mg(低用量が推奨される)。
  • 副作用
    • 消化性潰瘍、出血傾向、アレルギー反応。

2. クロピドグレル

  • 作用機序
    • 血小板のADP受容体(P2Y12)を阻害し、血小板凝集を抑制。
  • 適応
    • アスピリンが使用できない場合や、アスピリンとの併用療法(DAPT)として使用。
  • 用量
    • 1日75mg。
  • 副作用
    • 出血、下痢、皮膚発疹。

3. プラスグレル

  • 作用機序
    • クロピドグレルと同様にADP受容体を阻害。
  • 適応
    • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の血栓予防。
  • 特徴
    • クロピドグレルよりも強力だが、出血リスクが高い。
  • 副作用
    • 出血、貧血。

4. チカグレロル

  • 作用機序
    • 可逆的なP2Y12受容体阻害作用を持つ。
  • 適応
    • 急性冠症候群(ACS)や心筋梗塞後の再発予防。
  • 副作用
    • 息切れ、出血、徐脈。

5. ジピリダモール

  • 作用機序
    • 血小板のアデノシン取り込みを阻害し、血小板機能を抑制。
  • 適応
    • アスピリンとの併用で脳梗塞の再発予防に使用されることがある。
  • 副作用
    • 頭痛、めまい、吐き気。

併用療法

デュアル抗血小板療法(DAPT: Dual Antiplatelet Therapy)

  • アスピリンとクロピドグレル、またはチカグレロルなどを併用する療法。
  • 適応
    • ステント留置後や急性冠症候群(ACS)の治療後。
  • 注意点
    • 出血リスクが高まるため、期間や患者の状態に応じて適切に使用。

適応と使用例

脳血管疾患における使用

  • 一過性脳虚血発作(TIA)やラクナ梗塞の再発予防
    • アスピリン単独、またはアスピリン+ジピリダモール。
  • アテローム血栓性脳梗塞
    • クロピドグレルやアスピリンを使用。

心血管疾患における使用

  • 急性冠症候群(ACS)
    • アスピリン+チカグレロルまたはプラスグレル。
  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後
    • DAPTを6~12か月継続。

末梢動脈疾患(PAD)

  • クロピドグレルやアスピリンを使用。

注意点

出血リスク

  • 消化管出血や脳出血のリスクが高まるため、以下に注意:
    • 出血性疾患の既往がある場合は慎重に使用。
    • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往がある場合、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用。

高齢者での使用

  • 加齢に伴い出血リスクが高くなるため、リスクと利益を慎重に評価。

手術前の中止

  • 血小板機能が回復するまで数日かかるため、計画手術前に中止する必要がある。
    • アスピリン:3~5日前に中止。
    • クロピドグレル:5~7日前に中止。

治療のモニタリング

  1. 臨床症状の観察
    • 出血兆候(皮下出血、歯茎からの出血)をチェック。
  2. 血液検査
    • 血小板数や凝固検査で出血傾向を評価。
  3. 定期的な医師の診察
    • 使用期間や併用薬の見直し。

抗血小板療法は脳血管障害や心血管疾患の予防・治療に重要な役割を果たしますが、効果を最大限にするためには適切な患者選択とモニタリングが必要です。また、医師の指示に基づき、安全に使用することが大切です。

 

 

抗凝固療法とは

抗凝固療法は、血液凝固因子の働きを抑制することで血栓の形成を防ぎ、血流障害を予防・治療するための治療法です。特に静脈血栓症(深部静脈血栓症や肺塞栓症)や心原性脳塞栓症(心房細動に伴う脳梗塞)に対して効果的です。


目的

  1. 脳塞栓症の予防
    • 心房細動や心弁膜症などの患者で血栓形成を防ぎ、脳塞栓症を予防する。
  2. 静脈血栓塞栓症(VTE)の治療
    • 深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)の予防と治療。
  3. 人工弁や血管ステントの血栓予防
    • 機械弁や生体弁の手術後、または血管内治療後に血栓を予防する。
  4. その他
    • 抗リン脂質抗体症候群や動脈硬化による血栓の予防。

主な抗凝固薬

抗凝固薬は、作用機序や適応によって分類されます。

1. ワルファリン

  • 作用機序
    • ビタミンK依存性凝固因子(II、VII、IX、X)の合成を阻害。
  • 適応
    • 心房細動による脳塞栓症の予防。
    • 機械弁置換術後の血栓予防。
  • 用量
    • 個別調整が必要(PT-INR値を2.0~3.0に維持)。
  • 注意点
    • ビタミンKを多く含む食品(納豆、青菜など)との相互作用に注意。
    • 定期的なPT-INR検査が必要。
  • 副作用
    • 出血(特に消化管や脳出血)。

2. DOAC(Direct Oral Anticoagulants、直接経口抗凝固薬)

DOACは近年使用が増加しており、従来のワルファリンに代わる選択肢です。

代表的なDOACと特徴
薬剤名 作用機序 適応 特徴
ダビガトラン トロンビン(IIa)直接阻害剤 心房細動、VTE 腎機能低下時に注意
リバーロキサバン 第Xa因子直接阻害剤 心房細動、VTE 食事と一緒に服用が推奨
アピキサバン 第Xa因子直接阻害剤 心房細動、VTE 出血リスクが比較的低い
エドキサバン 第Xa因子直接阻害剤 心房細動、VTE 服用が1日1回で済む
  • メリット
    • 定期的な血液検査が不要(ただし腎機能や肝機能のチェックは必要)。
    • ワルファリンに比べて薬物相互作用が少ない。
  • デメリット
    • 特定の解毒剤(アンタゴニスト)が必要な場合がある(例:ダビガトランの解毒剤はイダルシズマブ)。

3. ヘパリン

  • 作用機序
    • 抗トロンビン作用を増強し、凝固因子(IIa、Xa)を阻害。
  • 適応
    • 急性期の静脈血栓症や肺塞栓症の治療。
    • 血液透析時の抗凝固。
  • 特徴
    • 静脈注射または皮下注射で使用。
    • 効果の即効性が高いが、作用時間が短い。
  • 副作用
    • 出血、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)。

4. 低分子ヘパリン(LMWH)

  • 作用機序
    • 第Xa因子を選択的に阻害。
  • 適応
    • 急性期の静脈血栓症や肺塞栓症の治療。
    • 妊婦における抗凝固療法(ワルファリンの代替)。
  • 特徴
    • 皮下注射で使用。
    • 投与後のモニタリングが不要な場合が多い。
  • 副作用
    • 出血。

適応と使用例

1. 心房細動における抗凝固療法

  • 脳塞栓症の予防
    • CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアでリスクを評価。
    • 中高リスク患者にはDOACまたはワルファリンを使用。

2. 静脈血栓塞栓症(VTE)

  • 治療と予防
    • 急性期:ヘパリンや低分子ヘパリン。
    • 慢性期:DOACまたはワルファリン。

3. 人工弁置換術後

  • 機械弁:ワルファリンが第一選択。
  • 生体弁:DOACまたはワルファリン。

副作用とリスク

  1. 出血
    • 最も重要な副作用で、消化管出血や頭蓋内出血のリスクがある。
  2. ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
    • ヘパリンや低分子ヘパリンの使用に関連する免疫反応。
  3. 腎機能低下時の注意
    • 特にDOACは腎機能低下に影響されやすいため、定期的な腎機能検査が必要。

モニタリング

  • ワルファリン
    • 定期的なPT-INR測定。
  • DOAC
    • 定期的な腎機能と肝機能の評価(特に高齢者や併用薬が多い場合)。
  • ヘパリン
    • 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)のモニタリング。

抗凝固療法と抗血小板療法の違い

項目 抗凝固療法 抗血小板療法
主な対象 静脈血栓、心房細動による脳塞栓症 動脈血栓(脳梗塞、心筋梗塞)
主な薬剤 ワルファリン、DOAC、ヘパリン アスピリン、クロピドグレル
モニタリングの必要性 ワルファリンは必要、DOACは不要 通常不要

抗凝固療法は患者の状態や疾患に応じた薬剤選択が重要であり、適切なモニタリングと副作用管理が求められます。医師の指示に従い、定期的に状態を確認しながら安全に使用することが大切です。

 

 

脳浮腫療法とは

脳浮腫療法は、脳浮腫(脳のむくみ)を治療・管理するための方法です。脳浮腫は、脳内の異常な水分の蓄積によって脳圧が上昇し、神経機能が障害される状態を指します。原因には脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、外傷、感染症、腫瘍などがあります。適切な治療は、脳圧を下げて脳組織を保護し、神経障害や死のリスクを軽減することを目的とします。


脳浮腫の種類

  1. 細胞性浮腫(Cytotoxic Edema)
    • 原因:脳梗塞、外傷性脳損傷、低酸素状態。
    • 特徴:細胞内に水が蓄積。血液脳関門は正常だが、細胞のエネルギー代謝障害が原因。
    • 部位:灰白質と白質。
  2. 血管性浮腫(Vasogenic Edema)
    • 原因:腫瘍、脳炎、脳出血など。
    • 特徴:血液脳関門が破壊され、水分が血管外に漏出。
    • 部位:主に白質。
  3. 間質性浮腫(Interstitial Edema)
    • 原因:脳室内圧の上昇(例:水頭症)。
    • 特徴:脳室周囲に水分が漏出。
    • 部位:脳室周囲。
  4. 浸透圧性浮腫(Osmotic Edema)
    • 原因:低ナトリウム血症や浸透圧の急激な変化。
    • 特徴:脳細胞内外の浸透圧バランスが崩れることで発生。

治療の目標

  • 脳圧(ICP: 頭蓋内圧)を正常範囲(10~15 mmHg)に維持する。
  • 脳血流を保ち、虚血や二次的な脳損傷を防ぐ。
  • 浮腫を減少させて神経症状を改善する。

治療法

1. 薬物療法

  1. 浸透圧利尿薬
    • マンニトール
      • 高張性溶液で脳血管から水を引き出し、脳圧を下げる。
      • 投与量:0.25~1 g/kgを6~8時間ごとに静脈投与。
      • 注意点:脱水、電解質異常に注意。腎機能低下がある場合は慎重に使用。
    • 高張食塩水
      • 血漿の浸透圧を上げて脳浮腫を改善。
      • 用法は3~23.4%の濃度で使用される。
  2. コルチコステロイド
    • 血管性浮腫(特に腫瘍性浮腫)に効果的。
    • デキサメタゾン
      • 初期量:4~10 mgを6時間ごとに静注。
      • 注意点:高血糖、感染症リスク、胃潰瘍に注意。
  3. 利尿薬
    • フロセミド
      • マンニトールとの併用で脳圧低下効果を強化。
  4. 鎮静薬・麻酔薬
    • プロポフォールやミダゾラムなどを使用して脳代謝を抑制し、脳圧を下げる。
    • 特に重篤な場合や人工呼吸管理中に使用。

2. 外科的治療

  1. 外減圧術(開頭減圧術)
    • 頭蓋骨を一部除去して脳の膨張を許容する治療法。
    • 脳浮腫が重度で薬物療法が無効な場合に適応。
  2. 脳室ドレナージ
    • 脳室内圧を直接減圧するためにカテーテルを挿入して髄液を排出。
    • 特に間質性浮腫や水頭症に有効。
  3. 腫瘍や血腫の除去
    • 浮腫の原因が腫瘍や血腫の場合、その除去が治療の中心。

3. 全身管理

  1. 体液と電解質の管理
    • ナトリウムや浸透圧のバランスを保つ。
    • 目標血清ナトリウム濃度:140~145 mEq/Lを維持。
  2. 呼吸管理
    • 過換気療法(PCO2を25~30 mmHgに下げる)を短期間使用し、脳血管を収縮させ脳圧を低下。
    • 注意点:長期使用は虚血のリスクを高めるため、慎重に行う。
  3. 体温管理
    • 高体温は脳代謝を増加させるため、解熱薬や冷却療法で正常体温(36~37°C)を維持。
  4. 体位管理
    • 頭部を30°挙上して静脈還流を改善し、脳圧を下げる。

合併症とリスク管理

  • 合併症
    • 電解質異常(低ナトリウム血症、高ナトリウム血症)。
    • 感染症(カテーテル挿入やステロイド使用による)。
    • 脳ヘルニア(未治療または治療が遅れた場合)。
  • リスク管理
    • 定期的な脳圧モニタリング(ICPモニタ)。
    • 血液ガス、電解質、腎機能を定期的に評価。

治療成績と予後

  • 脳浮腫の予後は原因疾患の重症度と治療開始のタイミングに大きく依存します。早期治療が行われれば、神経機能の回復が期待できますが、重症の場合は後遺症が残る可能性があります。

重要:脳浮腫が疑われる場合、早急な診断と治療が必要です。神経学的な評価と適切な治療計画を立てるため、専門医の管理下での治療が推奨されます。