リハビリテーションの目的
1.運動機能の改善・維持
筋力、柔軟性、バランス、姿勢を保ち、転倒や拘縮を予防。
2.日常生活動作(ADL)の改善
動作の工夫や補助具の利用により自立を促進。
3.非運動症状への対策
呼吸機能、嚥下、発話などの改善や精神的サポート。
4.社会参加の促進
趣味や仕事を継続できるよう支援。
5.患者と家族の心理的負担軽減
病気への理解を深め、日常生活の工夫を共有。
リハビリの主なアプローチ
1. 運動療法
運動機能の低下を防ぎ、症状を緩和するための基礎です。
(1)ストレッチと柔軟性トレーニング
・筋固縮や拘縮の予防・改善を目的。
・大胸筋、ハムストリングス、ふくらはぎなどを重点的に伸ばす。
・ゆっくりとした動きで可動域を広げる。
(2)筋力トレーニング
・筋力の低下を防ぎ、日常動作をサポート。
・中強度の負荷でスクワット、プランク、ヒップリフトなどを行う。
・重りを使った運動やレジスタンストレーニングも適応。
(3)バランストレーニング
・転倒リスクを軽減。
・片足立ち、歩行中の方向転換練習、平衡台での練習。
・手すりや介助を利用し、安全に行う。
(4)歩行訓練
歩行の改善に特化したトレーニング。
・リズムを意識した歩行(メトロノームや音楽を利用)。
・歩幅を意識したトレーニング(大股での歩行を練習)。
・並進的な動作(足を引きずらない、動きを止めない)。
・**フリーズ現象(動きが止まる症状)**が出た場合の対処法を練習。
2. 作業療法(ADL訓練)
日常生活で必要な動作を練習し、生活の質を向上させる訓練です。
具体例:
・ボタンを留める、箸やスプーンの操作、靴紐を結ぶ。
・椅子から立ち上がる、トイレの利用などの練習。
・補助具の使用指導(衣服の着脱補助器具や食事用具)。
工夫:
・体幹を安定させた動作。
・動作を分解して一つずつ実施。
3. 言語療法
パーキンソン病に伴う発話や嚥下障害に対処します。
発話訓練:
・声の大きさを強調するトレーニング(LSVT LOUDなど)。
・呼吸と発声を調和させる練習。
嚥下訓練:
・飲み込みやすい食事形態の指導。
・舌や咽頭の筋肉を強化する運動。
4. 呼吸療法
進行による胸郭の固縮や姿勢異常で呼吸機能が低下するため、呼吸筋を鍛える訓練を行います。
・深呼吸訓練: 横隔膜を意識した呼吸法。
・口すぼめ呼吸: 呼気をゆっくり行い、呼吸効率を上げる。
5. 認知機能・精神面へのアプローチ
認知機能の低下やうつ、不安を緩和します。
・脳トレ: パズルやゲーム、計算問題を通じて脳を活性化。
・心理サポート: セラピーやカウンセリングの利用。
・音楽療法: 音楽を活用し、リズム感や気分の改善を図る。
6. グループ療法
同じ病気を持つ患者と共にリハビリを行うことで社会的な孤立感を軽減し、動機づけを高めます。
・軽い体操やリズム運動。
・コミュニケーションを交えた活動。
リハビリの注意点
1.安全第一: 転倒や過度の負担を避ける。
2.個別対応: 症状や進行度、患者の目標に応じたプログラム。
3.継続性: 長期間のリハビリが必要なため、無理のない計画。
4.家族の協力: 日常生活でのサポートや動機づけが重要。
パーキンソン病のリハビリは、単なる運動療法にとどまらず、生活の質の向上と患者の自立支援を目指す包括的なアプローチです。専門家の指導を受けながら、患者に合った方法で継続することが成功の鍵となります。