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【鍼灸】東洋医学の医学書・読み物【治療】

2024/11/09

目次

【鍼灸】【治療】

◎東洋医学の代表的な医学書・読み物

今日、我々が『東洋医学』と言っている医学はどこからきているのか、出典は何なのか。その理論を知るには医学に関わる古典を読み解かないといけない。
以下に代表的な医学書・読み物を列記する。

(1) 中国の医学書

・『馬王堆医経』

著者,編者不詳。1972~3年、中国湖南省長沙の前漢初期の王侯墓から出土。B.C.193年被葬の医学書。抄写文字から秦漢移行期に書写されたもので、戦国末期の医学書と推定されている。『陰陽十一脈灸経』、『足臂十一脈灸経』、『陰陽脈死侯』、『五十二病方」(いずれも仮称)などの医学書が含まれている。

・『史記』:扁鵲倉公列伝

司馬遷著,前漢(B.C.90年頃)。春秋時代の名医、扁鵲と前漢初期の名医倉公淳于意の医学上の事跡を記したもの。『黄帝内経』以前の医学を知る上での最も貴重な資料。

・『黄帝内経』(『素問』『霊枢』)

著者,編者不詳。『漢書芸文志』には「黄帝内経十八巻、秩。」とある。皇甫謐がその著『甲乙経』の序文に「素問九巻、鍼経(今の霊枢)九巻、併せて十八巻、黄帝内経なり」と記して以来、『黄帝内経』は『素問』と『霊枢』で構成されていることになっている。
『素問』とは、根源に関する問答を意味し、生理、病理、診断、治療、養生法などを論じている。東洋医学の原典とされている。注釈書は非常に多く、中国の清以前だけでも百種類以上ある。主なものは次のとおり。『黄帝内経素問注証発微』(明,馬蒔)、『黄帝内経素問呉注』(明,呉崑)、『内経知要』(明,李中梓)、『黄帝内経素問集注』(清,張志聡)、『黄帝素問直解』(清,高世)、『素問懸解』(清,黄元御)、『素問釈義』(清,張)。わが国では、「素問識」(江戸後期,多紀元簡)、『素問紹識』(江戸後期,多紀元堅)、『素問攷注」(江戸後期,森立之)などの注釈が高く評価されている。
『霊枢』は、唐代までは『鍼経』、『九巻』、『黄帝鍼経』などと呼称されていた。主として鍼医学の基本となる人体の組織や機能、および鍼の具体的な運用法について述べている。主な注釈書は次のとおり。『黄帝内経霊枢注証発微』(明,馬蒔)、『黄帝内経霊枢集注』 (清,張志聡)。わが国では、『霊枢識』(江戸後期,多紀元簡)、『霊枢講義』(江戸後期,渋江抽斎)などの注釈が高く評価されている。

・『難経』

著者不詳,隋代以降。著者を秦越人扁鵲としている。『内経』中の難解なものを問答形式で八十一篇(八十一難) 注解したものである。内容から見れば、後漢中期ごろに編纂されたものと考えられる。わが国では、『素問』、『霊枢』と並んで三大古典とされている。主な注釈書は次のとおり。『難経本義』(元,滑寿)、『難経集注』(明,王九思)。『難経正義』(明,馬蒔)、『難経経釈』(清,徐大椿)。わが国の『難経疏証』(江戸後期,多紀元胤)の注釈は高く評価されている。

・『傷寒雑病論』十六巻

張機(仲景)著,後漢(219年)。湯液治療の原典。「傷寒」の部分を晋、王叔和が整理して「傷寒論」とし、「雑病」の部分を後人が編成して『金匱要略』とした。

・『脈経』十巻

王叔和撰,晋(280年頃)。脈診および経脈と病証に関する体系的な最古の専門書。

・『鍼灸甲乙経』十二巻

皇甫謐(士安)撰,晋(282年)。『素問』、『鍼経(霊枢)』、『明堂孔穴鍼灸治要』(最古の経穴書、一部が仁和寺に残っている)に基づいて類纂・注解したもの。宋以前には『黄帝三部鍼経』または『黄帝三部鍼灸経』と呼称されていた。特に後半の経穴についての記述は亡失している『明堂経』から引用されており、重要である。

・『肘後備急方』 八巻

葛洪(抱朴子)撰,晋(341年頃)。『肘後方』とも簡称される。救急用の薬物治療専門書。

・『本草経集注』

陶弘景注,南北朝・梁(536年頃)。後漢以前に作られていた『神農本草経』を整理し、注解したもの。

・『諸病源候論』 五十巻

巣元方ら著,隋(610年)。各種の疾病を分類し、その病因と症状を解説した書。

・『黄帝内経太素』三十巻

楊上善注,隋唐の間(605~682年)。『素問』、『霊枢』を類纂したものに楊上善が注解。中国では早くに失われ、わが国の平安時代の抄本が一部のみ京都の仁和寺に秘蔵されている。宋代の校改を経ていないため、『素問』『霊枢』の最善の別伝テキストとしての価値が高く、また楊上善の注解も『内経』注解書の中で最も高い評価を得ている。

・『備急千金要方』 三十巻

孫思邈撰,唐(652年)。孫氏自ら「人命至重、有貴千金」といって篇名とした。略称『千金要方』または『千金方』。唐代以前の医学上の成果を集大成したもの。

・『外台秘要方』四十巻

王燾撰,唐(752年)。内、外、婦人、小児、五官の各科の病症、湯液療法、穴、灸法を記述している。王氏は「針能殺生人、不能起死人」といって、針法の資料は収載していない。

・『銅人腧穴鍼灸図経』三巻

王惟一撰,宋(1026年)。経絡・経穴の循行、位置、主治症、鍼灸の刺激量などについての基準となっている。

・『太平恵民和剤局方』五巻

陳師文ら編,宋(1078~1085年)。宋政府の勅命により官立薬局が編纂した処方集。

・『三因極一病証方論』十八巻

陳言(無択)著,宋(1174年)。「分別三因、帰于一治」から篇名とする。『三因方』と略称。病因を三因(内因、外因、不内外因)で捉え、疾病の分類と治療法を解説した書。

・『素問玄機原病式』一巻(あるいは二巻)

劉完素(河間)撰,金(1186年)。『内経』の五運六気(運気論)に基づいて病因病理を解説した書。劉完素は金元四大家の一人で、 寒涼派。本著は同派の重要著作。

・『鍼灸資生経』七巻

王執中撰,宋(1220年)。経穴の位置、主治症、各種の疾 病に応じた取穴法などが記載されており、特に灸法の記述が多く、後代の『鍼灸聚英』、『鍼灸大成』、『鍼灸集成』などの灸法についての記述は本書からの引用が多い。

・『儒門事親』十五巻

張従正(子和)著,金(1228年)。張氏は金元四大家の一人で、汗・吐・下の三法をよく用いたため、攻下派と呼ばれ、本書はこの三法の理論と臨床の実際を述べている。

・『脾胃論』三巻

李杲(東垣)撰,金(1249年)。李氏は金元四大家の一人で、『内経』の「人以水穀為本」の観点から脾胃を補益することを強調した書で、補土派といわれる。

・『十四経発揮』三巻

滑寿(伯仁)撰,元(1341年)。十四経脈の流注、経穴の位 置、奇経八脈の流注についての専門書。

・『格致余論』一巻

朱震亨(丹渓)撰,元(1347年)。朱子は金元四大家の一人で、 人身は「陽常有余,陰常不足」であるとして、補陰を重視し、併せて「導痰引滞」の法を主張し、養陰派と呼ばれる。

・『鍼灸聚英』四巻

髙武撰,明(1529年)。鍼灸の理論、経絡経穴、鍼灸治療法などが書かれている。

・『保等網目』五十二巻

李時珍著,明(1578年)。三十年間、八百余種の本草書を 参考にして編募した薬物書。

・『鍼灸大成』十巻

楊継洲著,明(1601年)。また『鍼灸大全』ともいう。明代以前の鍼灸学術の成果を総括し、経絡経穴、治療法などを著わしている。

・『医学入門』八巻

李挺編,明(1575年)。経絡、臟腑、診断、鍼灸法などを記述した入門書。

・『類経』三十二巻、 『類経図翼』十一巻

張介賓(景岳)撰,明(1624年)。『素問』、『霊枢』を類別編注したもの。『図翼』は『類経』を理解しやすくするために臓腑・ 経絡経穴・鍼灸治療法などを図説したもの。

・『温疫論』二巻

呉有性著,明(1642年)。明末に疫病が流行したが、傷寒治法では無効であったため、温病の病原、伝染、治法などについての新見解を立て本書を著わした。後世の温病学説の基礎をきづいた書。

・『医宗金鑑』九十巻

呉謙ら編,清(1742年)。清政府編纂の総合的な医学書。

(2) 日本の医学書

・『医心方』三十巻

丹波康賴撰,平安(984年)。現存する日本最古の医学書で、隋・唐の医説、医術を収録している。鍼灸では治療法、経穴の位置、主治症などについて記している。収録してある医学書の中には既に失われているものもあり、唐以前の医学文献を研究するうえでも重要な著作。

・『頓医抄』五十巻 『万安方』六十二巻

梶原性全撰,鎌倉(1315年)。前者は邦文、後者は漢文で、内容はほぼ同じ。ともに『諸病源候論』に倣って項目を立て、『千金方』、『聖恵方』、『三因方」、『百一方』などの書を斟酌し、唐・ 宋医学を折衷し、自説を加えた著作。

・『啓迪集』八巻

曲直瀬道三著,安土(1574年)。劉完素(河間)、李杲(東垣)、朱震亨(丹渓)の説を主に金・元医家の所説を引き、自家体験を加えて著わした。

・『杉山流三部書』

杉山和一著,江戸前期(1680年頃)。『療治之大概集』、『選鍼三要集』、『医学節用集』から成る。

・『類聚方』

吉益東洞撰,江戸中期(1764年頃)。『傷寒』、『金匱』から二百二十方を採り、古医方を進めた著で万病一毒説を提唱した。

・『十四経発揮和語鈔』

岡本一抱(子)著,江戸中期(1700年頃)。

・『鍼灸重宝記』

本郷正豊著,江戸中期(1718年)。

・『鍼灸則』

菅沼周圭著,江戸中期(1766年)。常用穴七十穴を主張、経絡をいわず、陰陽の経絡も別たず、毫針の運用に長じた著。

・『経穴彙解』

原南陽著,江戸後期(1803年)。

・『腹証奇覧』

稲葉文礼著,江戸後期(1809年)。腹診に関する専門書。

・『経穴纂要』

小坂元祐著,江戸後期(1810年)。

・『鍼灸説約』

石坂宗哲著,江戸後期(1811年)。

◎鍼について

1.鍼と鍼管

鍼灸治療を受けたことがある方は見たことあるかもしれません。鍼とその下が鍼管という道具です。

 

※寸3と寸6のサイズの鍼です。

この鍼は最も一般的に使われている鍼で、「毫鍼」と言います。

 

①鍼の名称

鍼を持つところを「鍼柄(しんぺい)」、鍼柄と鍼がくっついてる部分を「鍼根(しんこん)」、鍼の部分を「鍼体(しんたい)」、鍼の先を「鍼尖(しんせん)」と言います。

②鍼の長さ・太さ

私が臨床でよく使う鍼は

寸3-3番、寸6-5番、2寸-8番、3寸-10番です。

寸3や寸6というのは、1寸3分、1寸6分という意味で、鍼体の長さを表しています。

 

おおよそ現在の鍼は、1寸は30㎜、1寸3分は40㎜、1寸6分は50㎜、2寸は60㎜、3寸は90㎜としています。

3番や5番というのは鍼体の太さを表しています。

1番鍼は直径0.16㎜、2番鍼は直径0.18㎜、3番鍼は直径0.20㎜、4番鍼は0.22㎜、5番鍼は0.24㎜、8番鍼は0.30、10番鍼は0.34㎜となります。

 

 

私が主に使うのが寸6-5番です。やや鍼に敏感な方には寸3-3番、腰やお腹に少し深く刺すなら2寸-8番、お尻に刺すときは3寸-10番を使います。脳梗塞後遺症で手足の麻痺には3寸の鍼を横にして刺すこともあります。

③鍼管

杉山和一によって「管鍼法」という鍼の刺し方が広まり、現在多くの鍼灸師が鍼管を用いて鍼の施術をしています。

個人的にはステンレスのものを好んで使用してますが、ディスポーザブルの鍼が普及して、プラスチックの鍼管を使う先生も多いと思います。

左の写真は左から寸3、寸6、2寸、3寸の鍼管。

右の写真は左からプラスチック、ステンレス、銀の鍼管。銀の鍼管は俵のように真ん中に向けて膨れている形になってます。

 

2.鍼の刺し方

鍼の刺し方には大きく分けて2つあります。1つは「撚鍼法」、もう1つは日本独特なやり方「管鍼法」です。

 

①撚鍼法

中国より起こった鍼術は、元々はこの方法で、日本でも管鍼法が広まる前までは主流をなしたやり方です。

 

一般的なやり方は、鍼を持たない手(基本的には左手)でツボを取り皮膚に当て、圧をかけて(押手という)右手に持った鍼を左手指に沿わせて鍼尖を皮膚に当て、押手の圧と鍼をひねる操作をうまく合わせて鍼を入れていきます。つまり鍼を持たない左手で、右手で持っている鍼を支えながら刺入するのです。中国では両手に鍼を持ち、片手で鍼を刺すこともあります。

②管鍼法

江戸時代、杉山和一により考案され始められたという方法で、鍼を鍼より少し短い管の中に入れ、わずかに出た柄の部分を叩くことにより鍼を皮膚に刺すことを容易にしたものです。現在、日本における鍼治療の多くがこの方法を用いてます。

 

※挿管法

管鍼法の特徴である鍼を管に入れるやり方のことで2パターンあります。1つは、左手に鍼を持ち、右手に管を持って鍼柄より入れる「両手挿管法」、もう1つは鍼も管を片手で持ち操作する「片手挿管法」です。下図は「片手挿管法」です。

3.鍼を刺すまでの流れ

①前揉撚

鍼を刺す前に、鍼を刺す場所を指頭で揉みながら圧をかけます。これは患者さんの身体に鍼の侵入の予告、鍼する場所の皮膚や筋肉を柔げて刺激に慣らす、緊張を緩める等の意味があります。

 

②押手と刺手

前揉撚が終わったら、一般的には左手で押手を作ります。押手というのは、鍼を刺すときに皮膚を押さえ鍼を支える手のことを言います。押手には「満月の押手」と「半月の押手」があります。

 

刺手とは鍼を持ち、刺したり抜いたりする手のことを言い、押手が左手なら刺手は右手となります。

 

③切皮

切皮とは皮膚に接している鍼尖によって皮膚表面を切ることを言います。言い換えれば鍼が体内に侵入した瞬間です。

 

管鍼法の場合は、鍼を鍼管に入れ、押手である左手の母指と示指で鍼管をつまみます。鍼管より出てる鍼柄を右示指で叩打(これを弾入という)することが切皮になります。患者さんに痛みを感じないように、また鍼が曲がらないように適切な強さ、リズムで弾入、切皮します。切皮したら、鍼管を抜きます。

 

④刺入法

切皮したら鍼を体内の目的のところまで刺し入れていきます。刺入には、刺手で鍼を半回転ずつさせながら行う「旋撚刺法」と、刺手の重みや刺手の母指と示指で送りこむように入れていく「送りこみ刺法」があります。

⑤刺鍼の角度

皮膚面に対して鍼を直角に刺入することを「直刺」、皮膚面に対して斜めに刺入することを「斜刺」、皮膚面に対してほとんど平行に刺入することを「横刺」と言います。

 

 

⑥抜鍼と後揉撚

鍼を刺入し目的を成したら、鍼を抜きます。鍼を抜く速さはその時々で速かったり遅かったりしますが、いずれにせよ押手と刺手を使い丁寧に抜きます。

抜いた後、前揉撚同様、押手の示指または母指で揉撚します。鍼の刺激感を減少させ、鍼痕を未然に防ぎ、溢血の場合吸収、損傷の再生を促す等の効果があります。

灸について

1.艾(もぐさ)について

一般的に「灸」とは、「艾」を皮膚の上に置き燃焼させ、人体の皮膚、組織に温熱刺激を与え、疾病の回復、病気の予防、健康の増進をはかる治療法です。

ではお灸に使われる艾について見ていきましょう。

 

①よもぎ

艾はよもぎ(蓬)の葉から作られます。

よもぎは山野に自生するキク科の多年生植物です。春に芽を出し、成長して秋に白い小さな花を咲かせます。新葉は食用に使われ、みなさんも草餅や天ぷらなどで食べたことがあるのではないでしょうか。よもぎはどこでも採れますが、生産地としては新潟県が有名です。

 

 

②艾の製法

5〜8月頃によもぎを採集し、葉のみを3、4日間乾燥させ含水率を1〜2%以下にします。それを石臼でひいて、篩(ふるい)にかけ、唐箕(とうみ)で細かな不純物を取り除くと、良質な「艾」ができます。

 

③成分

「艾」は主によもぎの葉の裏面にある毛茸(もうじょう)と腺毛(せんもう)からできています。

 

a.毛茸

毛茸はキク科植物などの葉に密生する白い毛のことで、よもぎの毛茸はT字形したものが多いです。

b.腺毛

腺毛には揮発性の精油が含まれています。精油の主成分はチネオールで、燃焼により艾独特の芳香を発します。

 

④艾の鑑別

一般的に、皮膚の上に直接お灸を据える場合、良質な艾を使う方がよく、間接的に体へ熱を加える場合は熱の強い粗悪な艾を使うことが多いです。

 

以下が良質な艾と粗悪な艾の特徴です。

 

◎良質な艾の特徴…芳香、手触りが良い、淡黄白色、繊維が細かい、不純物が少ない、煙と灰が少ない、熱感が優しい

◎粗悪な艾の特徴…青臭、手触りが悪い、黒褐色、繊維が粗い、不純物が多い、煙と灰が多い、熱感が強い

少しわかりにくいですが、左の艾の方がきめ細やかで、右の艾の方がやや黒っぽく少しザラザラしています。

 

2.お灸の種類

お灸は大きく分類すると、皮膚にしっかり熱を通して痕が残る「有痕灸」と皮膚に痕を残さない「無痕灸」の2つに分けることができます。

 

A.有痕灸

①透熱灸

透熱灸は普通灸と言われる、一般的なお灸のことです。熱を通すことを目的とする有痕灸で、経穴、圧痛点、神経、血管に据えます。

 

②焦灼灸

焦灼灸はお灸する場所を焦灼破壊することを目的とするお灸です。わかりやすい例として、イボや魚の目などに据えて、壊死、焼却させます。他には皮膚の腫れ物、動物や虫などの咬刺による傷口、打撲などの局所に据えるお灸も焦灼灸になります。

 

③打膿灸

打膿灸はお灸を据えて、灸痕の化膿を促し、排膿(打膿)させることを目的とするお灸です。ここまでのお灸は普通の臨床ではやりませんが、都内では「四つ木の灸」が有名です。

 

B.無痕灸

①知熱灸

知熱灸は指先くらいの大きさの艾を皮膚表面に直接置いて据えるのですが、患者さんが温かいと熱を感じたら、すぐに取り除くお灸です。このやり方だと皮膚が火傷することはありません。

②隔物灸

隔物灸は皮膚の上に生姜やニンニクなどの切片やすり潰して泥状にしたものを乗せ、その上からお灸を据えるやり方です。

③温灸

温灸は艾を患部から距離をおいて燃焼させ、輻射熱で温熱刺激を与えるものです。

 

いくつか種類がありますが、代表的なものに棒灸があります。棒灸は艾をタバコのように紙で巻いたものの一端に点火して、皮膚に近づけたり、離したりして直接皮膚に接触させず、かざしながら温めるお灸です。

またせんねん灸も温灸といえます。

 

 

④艾を使わない灸(薬物灸)

艾を全く使わない「灸」と称するものがあります。

漆灸、水灸、墨灸、紅灸などがそれで、薬物を調合し、皮膚に点けたり、塗布したり、その上から施灸したりします。

 

2.お灸のやり方

透熱灸をやってみましょう。

 

練習のため用意するものは

 

・艾

・線香(私は青雲を愛用してます)

・ライター

・灰皿

・ティッシュ

・ティッシュの下に敷く金属の台

実際に艾をひねってティシュの上に置き点火するまでをまず見てみましょう。

 

どうですか?みなさんのイメージした「お灸」と同じでしたか?

上の絵のようなイメージをされた方もいらっしゃるかもしれません。この絵は知熱灸というやり方です。

 

一般的に透熱灸というのは艾の大きさを米粒大(5㎜くらい)から半米粒大(3㎜くらい)くらいの大きさで調整します。

 

 

艾は柔らかくひねると心地よい熱さに、硬くひねると熱くなります。先ほどのお灸の動画、2壮やってみましたが、左側は柔らかく、右側は硬くひねり点火しました。ティッシュの痕を確認してみます。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、先ほどお灸したティッシュの上の一枚をはがしてみると、左側は上だけ燃えて下は燃えてませんが、右側は下のティッシュも燃えて穴が開いてます。このように艾の品質、大きさ以外に、ひねった艾の硬さによっても熱の強さを加減することができます。

 

また患者さんが感じてる熱感を緩和するやり方として、もぐさが燃えてるときに皮膚を引っ張ると熱く感じにくくなります(ただしお灸の温度が変わっているわけではないので熱は通ります)

施術者が熱をコントロールするやり方もあります。親指と示指で艾を挟み燃えきる前に消してしまうやり方です。

お灸を終えたら燃えた艾を取り除き、線香の火を消しましょう。

 

3.お灸のツボ

興味を持って頂けたら、ツボに据えてみましょう。

3つツボをご紹介したいと思います。

①足三里

膝のお皿の下中央から(親指以外の)指4本分下そこから脛のちょっと外側に取ります。

「足三里」は消化器系の疾病全般に用いることができます。特に胃腸が弱い、消化不良、胃痛、嘔吐、しゃっくり、下痢、便秘、胃神経症などに効き、「胃腸の調節」に欠かせない非常に万能なツボです。

皆さんの中にはこの「足三里」を知っている、あるいは名前を聞いたことあるという方もいらっしゃるかもしれません。松尾芭蕉が旅するのにここに灸を据えたと言われ、健脚の灸のツボとしても知られています。

足三里のお灸はとても気持ちよく、ここに定期的に据えると健康に長生きできると長寿の灸としても昔から親しまれています。

②失眠

足の裏、踵の中央に取ります。

患者さんの話を聞いていると、なかなか眠れない、途中で目が覚めてしまう、という悩みを聞くことが多々あります。本当は時間を気にせず眠くなったら寝て、目が覚めたら起きてしまう、のが良いのですが、規則正しい社会生活を送っているとなかなかそうはいきません。朝は寝坊出来ないし、昼間ウトウトするわけにもいきませんよね。そんな眠りに困っている方にお灸して欲しいのが「失眠」です。ここは熱く感じるまでお灸をたくさん据えると良いです。

③裏内庭

足の第2趾の腹の中心に印を付けて、折り曲げて足底につくところです。

お腹を壊したときに知っておくと安心な奇穴が「裏内庭」です。

ここに左右の足両方に熱く感じるまでたくさん灸を据えると食中毒、食あたり、腹痛、嘔吐、下痢に効果があります。

④魚の目

また、あまり知られてませんが、魚の目にお灸は効果があるので、お悩みの方にはオススメです。これも熱さを感じるまでたくさん据えるのがコツです。

4.おまけ『強情灸』

古典落語に『強情灸』というお話があり、お話の中に「峯の灸」という実在のお灸が出てきます。今も受け継がれており、私も受けてみました。興味のある方はぜひ落語を聞いて、お灸も体験してみたら面白いと思います。

 

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