【脳梗塞リハビリ】〜脳卒中の評価項目PART2〜
目次
【脳梗塞リハビリ】〜脳卒中の評価項目PART2〜
【日常生活の評価法】
〜FIM〜
FIM(Functional Independence Measure)は、日常生活動作(ADL)の機能的独立性を評価するためのスケールです。FIMは通常、リハビリテーションや医療の分野で使用され、患者の身体的な機能や日常生活スキルを測定します。
FIMは18項目から成り立っており、これらは次の6つの領域に分かれています。
1.自己介助
2.移動
3.洗濯
4.トイレ動作
5.食事
6.情報伝達(言語やコミュニケーションに関する能力)
各項目は7段階の評価尺度で評価され、最高得点は126点です。高い得点は高い機能的独立性を示し、低い得点は機能的な依存を示します。FIMの評価は、患者の治療計画やリハビリプログラムの進捗を追跡するのに役立ちます。
【急性期の評価項目について】
〜GCS〜
GCS(Glasgow Coma Scale)は、意識レベルを評価するための指標で、主に急性期の患者の神経学的状態を判断するのに使用されます。以下はGCSの主なポイントと評価の手順です。
1.視覚の反応(Eye Opening):
・4点: 自発的に目を開ける。
・3点: 声かけで目を開ける。
・2点: 痛み刺激で目を開ける。
・1点: 目を開けない。
2.言葉の反応(Verbal Response):
・5点: 適切な言葉で応答する。
・4点: 混乱した言葉で応答する。
・3点: 十分な言葉で応答するが、不明瞭。
・2点: 単語のみで応答する。
・1点: 言葉で応答しない。
3.運動の反応(Motor Response):
・6点: 命令に従い、自発的な動作がある。
・5点: 痛み刺激において、特定の部位に反応がある。
・4点: 痛み刺激において、全身で反応がある。
・3点: 姿勢反応があるが、適切ではない。
・2点: 体が伸展(ストレッチ)する。
・1点: 体が屈曲(屈曲)する。
GCSの合計点は、3つの反応の合計であり、最高得点は15点です。GCSは頭部外傷や脳卒中などの神経学的な問題の程度を評価するのに役立ちます。高い得点は正常な意識状態を示し、低い得点は意識の障害を示します。
〜NIHSS〜
NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は、急性期の脳卒中患者の神経学的な機能を評価するためのスケールです。以下は主なポイントと評価の手順です。
1.意識(Consciousness):
・0点: 正常
・1点: 軽度の意識障害(適切な刺激で回復)
・2点: 中等度の意識障害(定常的な刺激で回復)
・3点: 重度の意識障害(回復なし)
2.注視(Gaze):
・0点: 正常
・1点: 麻痺またはガーゼの目の方向の制限
3.視野(Visual Fields):
・0点: 正常
・1点: 部分的な欠損
・2点: 両眼の視野損失
4.麻痺(Facial Palsy):
・0点: 正常
・1点: 軽度の顔面麻痺
・2点: 中等度の顔面麻痺
・3点: 重度の顔面麻痺
5.腕の運動(Motor Arm):
・0点: 正常
・1点: 軽度の麻痺または重力に対する抵抗がある
・2点: 重度の部分的な麻痺
・3点: 重度の完全な麻痺
6.脚の運動(Motor Leg):
・0点: 正常
・1点: 軽度の麻痺
・2点: 重度の部分的な麻痺
・3点: 重度の完全な麻痺
7.協調の評価(Ataxia):
・0点: 正常
・1点: 軽度の失調
・2点: 重度の失調
8.感覚障害(Sensory):
・0点: 正常
・1点: 軽度の異常感覚
・2点: 重度の異常感覚
9.言語(Language):
・0点: 正常
・1点: 軽度の言語障害
・2点: 中等度の言語障害
・3点: 重度の言語障害
10.失認(Neglect):
・0点: 正常
・1点: 軽度の失認
・2点: 重度の失認
合計点は、各項目の得点を合算して計算され、最高得点は42点です。高い得点は脳卒中の重症度を示し、低い得点は軽度な症状を示します。
【高次脳機能の評価法について】
〜スクリーニング検査〜
1.MMSE
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、高次脳機能の評価に使用される一般的なツールの一つです。これは、認知機能や認知状態を簡単に評価するための検査です。以下に、MMSEのいくつかのポイントを挙げてみましょう。
1)領域の評価
MMSEは異なる認知機能領域を評価します。これには言語、記憶、指示に対する反応、計算能力などが含まれます。
2)最高得点と意味
MMSEの最高得点は30点で、得点が高いほど認知機能が良好であるとされます。通常、24点以上は正常範囲、20〜23点は軽度の認知障害、16〜19点は中等度の認知障害、16点以下は重度の認知障害を示唆することがあります。
3)質問の例
MMSEには質問が含まれ、被験者は日付の記憶、場所の指示、簡単な計算、言語理解などに関する質問に回答します。
4)注意点
MMSEは一般的な評価ツールであり、病状や個々の状況によっては特定の認知機能の障害を正確に評価できないことがあります。臨床状況によっては、他の評価ツールや検査が必要となることもあります。
重要なのは、MMSEの結果だけでなく、他の臨床的な情報や検査結果と総合的に判断することです。
2.Raven色彩マトリックス検査
Raven色彩マトリックス検査(Raven’s Progressive Matrices Test)は、非言語的知能や抽象的な推理能力を測るための検査です。この検査は、図形のパターンや関係を理解し、次のパターンを予測する能力を評価するために使用されます。
以下はRaven色彩マトリックス検査についての主なポイントです:
1)非言語的検査
Raven色彩マトリックス検査は、言語に頼らずに問題に対処するため、文化や言語の違いによるバイアスが少ないとされています。
2)進行性の難易度
検査は進行的な難易度を持ち、問題ごとに難易度が上がります。これにより、被験者の能力範囲を広く評価することが可能です。
3)抽象的な推理能力の測定
図形のパターンや関係を理解し、抽象的な推理を行う能力を測定します。これは一般的な知能とも関連しています。
4)年齢や文化の差に対応
Raven色彩マトリックス検査は、年齢や文化による影響を最小限に抑えるように設計されています。そのため、広範な年齢層や異なる文化背景の被験者に使用されることがあります。
この検査は一般的に、学校や職場などで知能検査として利用され、個々の認知能力や問題解決能力を測定するのに有用です。
〜前頭葉機能障害〜
1.FAB
FAB(Frontal Assessment Battery)は、前頭葉機能の評価に使用される一般的な検査バッテリーの一つです。この検査は、前頭葉の損傷による認知機能の変化を評価するために開発されました。以下は、FABに関する主なポイントです:
1)目的
FABは主に前頭葉の機能に焦点を当て、認知機能や実行機能(行動を計画し、実行する機能)の評価に使用されます。これには注意力、抽象的思考、推理、計画などが含まれます。
2)評価項目
FABは6つの課題から構成されています。これらの課題は、患者の認知機能や実行機能の異常を特定するために設計されています。
・概念生成(Conceptualization)
・装置(Mental Flexibility)
・手と指の動作(Motor Programming)
・態度の認識(Conflicting Instructions)
・抽象性(Abstract Thinking)
・顔の表情の制御(Inhibitory Control of Interference)
3)スコアリング
各課題に対してポイントが与えられ、総合スコアが算出されます。低い得点は前頭葉機能の障害を示唆する可能性があります。
4)臨床利用
FABは神経心理学的な診断や臨床研究で前頭葉機能の変化を追跡するために使用されます。特に神経精神疾患や前頭葉に関する損傷を持つ患者の評価に役立ちます。
FABは患者の日常生活における機能障害を理解する上での手がかりとなり、治療プランの策定に役立つことがあります。
〜言語の障害〜
1.SLTA
SLTA(Standard Language Test of Aphasia)は、アファジア(言語障害)の評価に使用される標準的な言語テストの一つです。アファジアは通常、脳の特定の領域の損傷によって引き起こされ、言語の理解や表現に関する障害を伴います。以下は、SLTAに関する主なポイントです:
1)目的
SLTAは、アファジアの種類や程度を評価し、患者の言語機能の具体的な問題を把握するために使用されます。言語理解や表現における異常を特定することが目的です。
2)評価項目
SLTAは、異なる言語能力の側面を評価する複数の項目で構成されています。これには、単語の理解や言葉の意味、文法的な構造の理解、言葉の再生、表現などが含まれます。
3)言語領域のカバー
SLTAは、音韻、語彙、文法、意味など、言語の様々な側面を網羅的に評価します。これにより、アファジア患者の言語能力の損傷の範囲を把握することが可能です。
4)結果の解釈
テストの結果は通常、患者の言語機能の正常な水準と比較されます。これにより、アファジアの程度や種類に基づいて治療計画を立てるのに役立ちます。
5)臨床利用
SLTAは、言語療法の診断や進捗モニタリング、およびアファジア患者の日常生活におけるコミュニケーション能力の評価に広く使用されています。
SLTAは、言語障害に対する治療アプローチの選択や進行状況の把握において、臨床家や言語療法士に重要な情報を提供します。
2.発話明瞭度
発話明瞭度(Intelligibility)は、言語障害の評価において重要な側面の一つです。発話明瞭度は、話者が発音や発声の際にどれだけ理解しやすいかを示す尺度です。言語障害がある場合、発話明瞭度が低下することがあります。
以下は発話明瞭度に関する主なポイントです:
1)発話の理解度
発話明瞭度は、他者が話者の発話をどれだけ正確かつ容易に理解できるかを評価します。発音、発声、リズム、音声強度などがその要因となります。
2)言語障害との関連
言語障害がある場合、発話明瞭度が低下することがあります。これは発音の誤り、音の交換、省略、挿入などが含まれます。
3)評価の方法
発話明瞭度の評価は、専門家や言語療法士によって行われることが一般的です。評価には、患者が特定の言語サウンドや単語、文を発声する際の正確さや理解しやすさが含まれます。
4)治療の方針
発話明瞭度の低下が特定された場合、それに基づいて個々の言語療法プランが立てられることがあります。発音矯正や音声療法がその一例です。
5)コミュニケーションの影響
発話明瞭度の向上は、個人のコミュニケーション能力を向上させるのに寄与します。他者との円滑なコミュニケーションが重要な場面で、発話明瞭度の向上は自己表現や相互理解において大きな影響を与えることがあります。
言語障害の評価において、発話明瞭度は患者の日常生活への影響を理解し、適切なサポートや治療を提供するための重要な情報源となります。
〜視空間失認〜
1.BIT
BIT(Behavioral Inattention Test)は、視空間失認(左側視空間無視など)を評価するための検査です。視空間失認は、脳損傷によって生じ、特に脳の右半球の損傷によって左側の情報を無視する傾向があります。以下は、BITに関する主なポイントです:
1)目的
BITは、視空間失認の程度や特性を評価するために設計されました。この検査は、特に中風(脳卒中)や頭部外傷などによる脳損傷後の評価に使用されます。
2)評価項目
BITはさまざまな視覚的な任務や課題で構成されています。これには、図形の描画、部分的な報告、中心からの遠心的な注視、左右対称性の判断などが含まれます。
3)左側無視の評価
BITは、主に左側視空間無視を評価するための検査であり、被験者が視界の左側にある情報を無視するかどうかを確認します。
4)カットスコア
テストの結果は通常、カットスコアを使用して評価されます。このスコアは、被験者がどれだけの課題で左側の情報を処理できるかを示します。
5)臨床的な意義
視空間失認は、日常生活での活動に影響を与える可能性があります。BITの結果は、患者の日常生活での機能や安全に対するリスクを評価するのに役立ちます。
BITは神経心理学的な評価において、特に視空間失認の評価に焦点を当てる場面で広く使用されています。結果に基づいて適切なリハビリテーションやサポートが提供されることが期待されます。
〜記憶障害〜
1.AVLT
AVLT(Auditory Verbal Learning Test)は、記憶障害の評価に使用される検査の一つです。AVLTは主に言語的な記憶を評価するためのテストであり、特にエピソードメモリ(特定の出来事や経験に関する記憶)を測定します。
検査は、試験者が被験者に単語リストを読み上げ、被験者ができるだけ多くの単語を覚え、再び思い出すというプロセスを通じて行われます。時間が経過するにつれて、被験者が単語をどれだけ覚えているかを評価します。
AVLTは主に神経心理学や臨床心理学の分野で使用され、脳の損傷や認知症の診断、治療効果の評価などに役立ちます。
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