【脳梗塞リハビリ】〜脳梗塞後の肩のトラブルについて〜
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【脳梗塞リハビリ】〜脳梗塞後の肩のトラブルについて
脳卒中後に何かしらの肩の違和感や痛みを訴える患者様は非常に多いです。
臨床では、「肩が痛くて挙がらない」「ずっと痺れや違和感がある」など肩〜腕にかけての声はよく耳にします。
今回はそんな肩のトラブルについて様々な視点でご紹介します。
【肩甲骨は翼のような形になりやすい】
脳卒中患者が翼状肩甲になりやすいのは、脳卒中によって片麻痺や筋肉の弱点が生じ、肩甲骨周囲の筋肉のバランスが崩れることが原因とされています。
脳卒中によって片麻痺が生じた場合、片側の肩甲骨周囲の筋肉に負荷がかかるため、肩甲骨が正常な位置に戻りにくくなります。
また、片側の筋肉の弱点により、肩甲骨周囲の筋肉のバランスが崩れ、翼状肩甲が生じることがあります。
さらに、脳卒中によって片麻痺が生じた場合、患側の肩甲骨周囲の筋肉の緊張が弱くなるため、患側の肩甲骨が背中に突き出しやすくなります。
このような状態が長期間続くと、肩甲骨周囲の筋肉の萎縮が進行し、翼状肩甲が定着することがあります。
したがって、脳卒中患者においては、肩甲骨周囲の筋肉のバランスを整えるための運動療法やリハビリテーションが重要であり、早期の治療が必要とされています。
【肩甲上腕リズムの崩れ】
肩甲上腕リズム(英語: scapulohumeral rhythm)とは、肩甲骨と上腕骨の動きの連動のことを指します。
これは、腕を上げ下げするときに、肩甲骨が上下に、内側外側に、回旋することで、上腕骨が自由に動くために必要な連動のことです。
具体的には、腕を上げるとき、最初に肩甲骨が上に回旋し、15°程度上がると肩甲骨は外側に回旋します。
さらに、腕を90°程度まで上げると、肩甲骨は下に回旋して、その後、腕を180°まで上げるときには、肩甲骨は回旋しなくなり、上腕骨が自由に動くことができます。
この肩甲上腕リズムは、肩甲骨周囲の筋肉や靭帯の働きによって制御されています。
このリズムが正常に行われていると、腕を上げ下げする際に、上腕骨の動きがスムーズで、肩や肩甲骨周囲の痛みや障害が発生しにくくなります。
脳卒中患者が肩甲上腕リズムの崩れを起こす主な原因は、脳卒中による脳の障害により、運動の制御が困難になり、筋肉の協調運動が難しくなるためです。
脳卒中によって脳の一部が障害を受けると、運動の制御や調整に関わる脳の領域が損傷を受け、筋肉の協調運動や運動制御が困難になります。
このため、脳卒中患者は、腕を上げる際に、肩甲骨や上腕骨の動きをコントロールすることが困難になり、肩甲上腕リズムが崩れやすくなります。
また、脳卒中によって片麻痺が生じることがあり、片側の筋肉の弱点や萎縮が進むことで、肩甲骨周囲の筋肉の力が偏り、肩甲上腕リズムが乱れることもあります。
以上のように、脳卒中患者が肩甲上腕リズムの崩れを起こす主な原因は、脳の障害による運動制御の障害や片麻痺による筋肉の力の偏りなどが考えられます。
適切なリハビリテーションや運動療法によって、肩甲上腕リズムの回復を促すことができます。
【肩の亜脱臼】
脳卒中患者が肩の亜脱臼を起こす主な原因は、脳卒中による片麻痺や肩関節周囲の筋肉の萎縮や筋力低下、関節可動域の制限などが考えられます。
脳卒中によって片麻痺が生じることがあり、片側の筋肉の力が弱くなるため、肩関節周囲の筋肉のバランスが崩れ、肩関節の安定性が低下することがあります。
また、脳卒中後には、肩周囲の筋肉が萎縮し、筋力が低下することがあります。
このような状態では、肩関節を適切に保持する筋肉の力が不足し、肩関節の安定性が低下し、肩が亜脱臼を起こすことがあります。
また、脳卒中患者は、身体の片側の運動制御障害により、肩関節周囲の筋肉の可動域が制限され、肩関節の動きが制限されることがあります。
このような状態では、肩関節の可動域を制限する筋肉が過剰に働くため、肩関節の安定性が低下し、肩が亜脱臼を起こすことがあります。
以上のように、脳卒中患者が肩の亜脱臼を起こす主な原因は、片麻痺や肩周囲の筋肉の萎縮、筋力低下、関節可動域の制限などが考えられます。
適切なリハビリテーションや運動療法によって、肩関節周囲の筋肉の強化や可動域の改善を促すことが重要です。
【脳梗塞後の肩の痛みについて】
1.インピンジメントによる痛み
脳卒中と肩のインピンジメントには関係があるとされています。
脳卒中患者は、片麻痺や筋力低下、関節可動域制限、姿勢の変化などの影響で、肩周囲の筋肉のバランスが崩れ、肩関節の安定性が低下し、肩関節の可動域が制限されることがあります。
このような状態では、肩関節周囲の筋肉の働きが弱まり、肩甲骨が安定して動かなくなるため、上腕骨頭が肩甲骨の下縁に圧迫されるインピンジメントが起こりやすくなります。
また、脳卒中患者は、片麻痺側の肩を保護するために、健側の肩を上げたり、肩を内側に回旋させたりすることがあります。
これにより、肩関節周囲の筋肉の不均衡が生じ、肩の姿勢が悪化することでインピンジメントが起こりやすくなります。
さらに、脳卒中患者は、片麻痺側の腕を使用しない傾向があるため、健側の腕による肩関節の使用が増えます。
これにより、健側の肩関節周囲の筋肉の疲労が生じ、肩甲骨の動きが制限されることがあります。
この状態が長期化すると、肩関節周囲の筋肉が萎縮し、肩関節の可動域が制限され、インピンジメントが起こりやすくなります。
以上のように、脳卒中と肩のインピンジメントには関係があります。
適切なリハビリテーションや運動療法によって、肩関節周囲の筋肉の強化や可動域の改善を促し、インピンジメントの予防や改善を行うことが重要です。
2.ストレッチによる痛み
脳卒中後の肩のストレッチで痛みが生じることは、しばしば報告されています。
これは、脳卒中患者が持つ肩関節周囲の問題に起因する可能性があります。
脳卒中患者は、片麻痺や筋力低下、関節可動域制限、姿勢の変化などの影響で、肩関節周囲の筋肉のバランスが崩れ、肩関節の安定性が低下し、肩関節の可動域が制限されることがあります。
このような状態では、肩関節周囲の筋肉や関節の柔軟性が低下し、ストレッチを行う際に痛みが生じる可能性があります。
また、肩関節周囲の炎症や組織の損傷がある場合、ストレッチを行うと痛みが強くなることがあります。
この場合は、適切なリハビリテーションや治療を行い、痛みの原因を取り除いた上で、ストレッチを行うことが重要です。
痛みが生じるストレッチは、患者の痛みのレベルや痛みの原因に合わせて調整される必要があります。適切なストレッチを行い、筋肉の柔軟性を改善することで、肩関節周囲の問題の改善や痛みの軽減が期待できます。
しかし、無理なストレッチや無理な運動は、痛みを悪化させることがあるため、適切な指導や監視の下で行うことが重要です。
3.肩の夜間時痛
脳卒中後の肩の夜間痛みは、肩関節周囲の問題や筋肉のバランスの崩れ、姿勢の変化などの影響によるものが考えられます。具体的には以下のような原因が挙げられます。
①肩関節周囲の筋肉の硬さや緊張によるもの
脳卒中後の患者は、片麻痺や筋力低下、関節可動域制限などの影響により、肩関節周囲の筋肉のバランスが崩れ、硬くなったり緊張したりすることがあります。
このような状態が続くと、夜間に肩の痛みが生じることがあります。
②姿勢の変化によるもの
脳卒中患者は、片麻痺や筋力低下により、姿勢が崩れることがあります。特に、寝るときに側臥位になると、肩関節周囲の筋肉に負担がかかり、痛みが生じることがあります。
③インピンジメント症候群によるもの
肩甲骨や上腕骨の動きに影響を与えるインピンジメント症候群が起こることもあります。肩甲骨や上腕骨の動きが悪くなると、肩関節周囲の筋肉や組織に負担がかかり、痛みが生じることがあります。
④肩関節周囲の炎症によるもの
脳卒中後の患者は、肩関節周囲の炎症が生じることがあります。この炎症が夜間に悪化すると、肩の痛みが生じることがあります。
これらの原因に対して、適切なリハビリテーションや治療を行うことで、肩の夜間痛みを軽減することができます。
また、寝るときに適切な枕を使用するなどの対策も有効です。しかし、痛みが強い場合は、適切な治療を受けるために、早期に医師や理学療法士などの専門家に相談する
4.視床痛
脳卒中後の視床痛は、脳卒中によって視床が障害を受けたことが原因とされる症状です。
視床は、脳の深部に位置する重要な部位で、自律神経や内分泌系を調節する役割があります。
視床に障害が生じると、体温調節、食欲、睡眠、自律神経などの機能が崩れることがあり、その一つとして視床痛が発生することがあります。
視床痛は、頭痛、肩こり、全身の痛み、倦怠感、めまい、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。また、視床痛に伴って、不安感やうつ病の症状が出ることもあります。