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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №12 「電気治療の種類方法」

2023/01/13

こんにちは。No.11に続いて今回は電気治療の種類というテーマで、ここ横浜からお届けしてまいります。

 

神経筋電気刺激の基礎知識

脳梗塞 リハビリ 電気治療

神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation:NMES)はおおまかに下の3種類に分けられます。

 

●経皮的電気刺激(TENS)

●治療的電気刺激(TES) 

●機能的電気刺激(FES)

 

経皮的電気刺激TENS:Transcutaneous electrical nerve stimulation)

・・疼痛の軽減を目的とする非侵襲的な治療法です。痛み等の侵害刺激は直径の細い線維を介して脊髄後角へ入ります。TENSを用いると直径の太い神経線維が刺激されます。後角の所で細い神経線維を介する痛みの感覚の伝達を遮断します。それによって鎮痛・除痛効果が得られます。

 

治療的電気刺激TES:Therapeutic electrical stimulation)
・・TESは筋力強化、筋活動の再教育、循環の改善、組織の癒着防止、関節可動域の維持と改善、骨萎縮の予防と改善、疼痛軽減などを目的として行われます。FESよりも運動機能により焦点を当てたものです。

 

機能的電気刺激FES:Functional electrical stimulation)

・・脳卒中や脊髄損傷など中枢神経系の障害によって失われた運動機能を電気により代償し、動作の再建を図る目的として行われるものです。

 

 電気刺激(NMES)は、筋力増加、廃用症候群による筋萎縮の予防や改善に応用できると報告されています。

 また電気刺激の最大の特徴は、一般的に筋収縮は小さい運動単位(typeⅠ線維)から動員されるのに対して、電気刺激では大きい運動単位(typeⅡ線維)から動員されることです。

 これは速筋が選択的に障害を受けやすい脳卒中患者の治療にとても有効です。

 

 脳卒中患者の高閾値の運動単位の選択的な喪失

原著はLarge motor units are selectively affected following a stroke

 先行研究では、脳卒中患者の運動単位の機能の喪失が明らかになっています。しかし、運動単位がランダムに影響を受けるのか、特定のパターンで影響を受けるのかは不明なままでした。

 

※サイズの原理とは、筋力の発揮の際に小さな運動単位から動員され、必要とされる筋力が増加するにしたがってより大きな運動単位へと順に活性化されていくこと。複雑な難易度の高い動きなどの場合は選択的に高閾値の運動単位が動員されることもある。

 

 脳卒中後の大きな(高閾値)または小さな(低閾値)の運動単位の選択的喪失があるかどうかを評価しました。

 

方法

●45人の脳卒中患者と40人の健常者が研究に参加した。マクロ筋電図は、小指外転筋から2つのレベルの出力(低および高)で記録されました。

 

●麻痺側のマクロ運動単位電位(マクロMUP)の振幅の中央値を、非麻痺側および健常者の振幅と比較しました。

 

結果 

 

図参照:Large motor units are selectively affected following a stroke

 

 結果、健常者と非麻痺側では、マクロMUPは、低レベルの出力よりも高レベルの出力で有意に大きかった。ただし麻痺側では、高出力でのマクロMUPは、低出力で記録されたものと同程度の振幅であった。これらの変化は、不全麻痺の重症度と相関していた。

 脳卒中後、高閾値運動単位の選択的な機能喪失が観察されました。これらの変化は、症状の重症度に関連していた。

 本論文では高閾値の運動単位の選択的な喪失が示唆された。これは、速い動作や複雑な課題では高閾値の運動単位が選択的に動員されやすいため難しくなりやすいことを示唆している。

 治療としては、ゆっくりかつ簡単な静的課題が難易度が低く導入としては良さそうだが、速さや複雑な課題も取り入れ高閾値の運動単位への働きかけも重要と言える。電気刺激は速筋を促通するのに有用と言われる。

 

電気刺激の臨床応用

 

 電気刺激は

 

●通常の電気刺激(NM-F1、ESPURGEなど) 

●筋電駆動型電気刺激(IVES、MUROなど) 

●フットセンサー等の種々のトリガー駆動での電気刺激(ウォークエイドはじめ種々の機器)

 などが現在リハビリで使用されています。

 

 脳卒中患者では大雑把に言えば

通常の電気刺激】

●随意運動が見られないもしくは著明に出力が弱い患者の運動単位の動員をアシストし関節運動を引き起こすために使用

●筋感覚フィードバックとして使用

●感覚閾値を超えた付近で用いることで感覚促通練習として使用

 

筋電駆動型電気刺激】は

●随意運動が見られ、筋電で筋活動を拾うことが出来る患者を対象として使用

●主に課題志向訓練の場で用いられ、十分に自身でコントロールできない筋活動に対してサポート的な意味合いで使用

 

筋電駆動型では同時収縮が強い患者は、双方向で信号を拾ってしまう可能性があるので患者の反応や目的に応じて電気機器の種類や刺激強度を使い分けていく必要があります。

 

電気刺激貼付部位

 

電極の貼付部位は、脳卒中患者においては手指では総指伸筋、下肢では前脛骨筋に貼付されることが多い印象です。共に、随意コントロールが難しい筋を対象にしています。近年では、複合的に電極を貼付することがより効果的との報告もなされています。

 歩行においては機能的運動単位(モジュール)という概念を用いて電気刺激の組み合わせを実施すると良いと思います。例えば、遊脚期であれば足関節背屈(前脛骨筋)への電気刺激に同じ相で活動する股関節屈筋の大腿直筋近位に貼付するなどは有効です。

 海外では「FAST FES」というワードが聞かれるようになっています。

 脳卒中患者では前脛骨筋だけでなく、下腿三頭筋の弱化がほぼ全ての患者で見られると報告されています。

 比較的早い歩行の中で、下腿三頭筋に対する電気刺激が筋活動のタイミングに合わせて付与されるという練習になります。

 

 

原著はFunctional electrical stimulation therapy for restoration of motor function after spinal cord injury and stroke: a review

 

機能的電気刺激治療(FEST)の概念

 機能的電気刺激治療(FEST)介入では、患者は麻痺側上下肢に電極が貼付され、能動的に機能的な動きを試みるように求められます。自発的な動きを実行する能力が回復し、電気刺激が必要なくなるまでFESの使用は徐々に減じていきます。

 

 FESTには3つの基本的な構成要素があります。下図はその概念図です。

 

 

図:本論文Functional electrical stimulation therapy for restoration of motor function after spinal cord injury and stroke: a reviewより引用

 

 

①治療を受ける患者は能動的に運動を試みなければなりません。

②電気刺激は、患者が運動を行おうとしたタイミングと正確に一致して付与され、一致した感覚フィードバックの下で練習を実行します。この文脈での刺激は、患者が自発的に作り出すことができない動きにのみ使用されます。

③セラピストは手足の動きを補助して、動きの正確さと質を確保します。セラピストはまたFEST介入中の患者の回復状況に基づいて、電極の配置と刺激のパラメーターを適切に変更します。

 

 患者の運動意図とFESの補助から生じる感覚フィードバックが同時に繰り返されると、神経可塑性の変化が生じ、最終的には自発的な運動機能の回復につながると考えられています。

 

機能的電気刺激FESTの先行研究からの報告

 

 Merlettiらは「従来の理学療法治療」に対して、腓骨神経の刺激を通じて足関節背屈を引き起こすFESの効果を比較し、足関節の自発的な背屈によって生成されたトルクは、対照群と比較した場合、治療群で3倍高かったと報告した。

 テイラーらは、下垂足に対する背屈誘発の電気刺激装置を18週間使用した後の歩行速度の増加を報告しました。

 Thrasherらは頸部および胸部の脊髄損傷を負った5名の患者が、12〜18週間の電気刺激介入を完了しました。この介入では、歩行の補助としてFESTを少なくとも片脚に適用しました。リハビリテーション終了後に、4人の参加者が歩幅とケイデンスを増やし、その結果歩行速度が向上しました。

 Popovicらは、6か月電気刺激治療後、C5〜C7レベルのSCIに起因する四肢麻痺のある患者の上肢機能(パワーグリップおよび/または運動範囲の増加)を改善するバイオニックグローブの有効性を実証しました。

 

電気刺激量について

 

 「感覚閾値は、動きが生じない場合でも、刺激を受けた人が刺激を知覚できる最低の強度です。

 「運動閾値は、収縮が動きをもたらさない場合でも、目に見える筋肉収縮をもたらす最小強度です。

 「最大許容強度は、人が不快感を感じることなく許容できる最大レベルです。

 

  まとめ

 

①電気刺激は用いるけれど、あくまで患者の能動的な活動をサポートする事が大事

②末梢で電気刺激を用いながら、中枢部ではハンドリングで適切な運動を補助するなどもっと幅広い電気刺激治療の方法がある

③電気刺激治療には「感覚の付与」「運動単位の動員を補助して関節運動・不足しているパワーをサポートする」という役割があることを学びました。その際に、運動企図から運動を実行しフィードバックを受ける一連の流れのループの中で自然と電気は付与される必要がある

④電気刺激の効果が即時的に現れているのか、電気刺激のなしまたは弱めた状態での動きも確認していくことは重要

 

 

 

 

高齢者の骨格筋の運動介入の効果

 

原著はAge- and Stroke-Related Skeletal Muscle Changes: A Review for the Geriatric Clinician

 

 理学療法士は、歩行速度、反復の椅子の立ち座り、階段昇降などの臨床検査に加え、ダイナモメーターを使用し四肢の強さを評価できます。超音波イメージングは 、筋と関連する軟部組織の形態と機能を評価するための、信頼性が高く有効な非侵襲的な臨床評価ツールとしてよく使われてきています。

 

●2006年にMartelらは、大腿四頭筋の9週間のレジスタンストレーニングの結果、健康高齢者のタイプⅡ線維の断面積が増加したことを報告しました。また、12週間のレジスタンストレーニングにより、大腿四頭筋の断面積が12%増加し、等速性筋力が22から28%増加した。

● 2008年、Suettaらは片側THA後の60〜86歳の方々の12週間のレジスタンストレーニングにより、タイプIおよびタイプⅡの筋線維面積が増加し、動的筋力が29〜30%増加し、階段能力が改善したと報告しました。

●ハンソンらは座っていることの多いグループの上肢と下肢のレジスタンストレーニングを22週間行った後、レッグプレスと歩行速度および椅子立ち座りと階段昇降によって評価される下肢筋力の改善を報告しました。

レジスタンストレーニングは、筋肉内脂肪を減らすこともできます。Taaffeらは、高齢者の上肢および下肢のレジスタンストレーニングを中止すると筋肉内脂肪が増加し、週に2回再開すると脂肪が減少することを示しました。高齢者の筋肉の筋肉内脂肪の増加は、時間の経過とともに運動関連機能の低下のリスクが高くなるため、筋肉の組成を改善する能力は注目に値します。

 

脳卒中患者の骨格筋の変化と運動介入効果

 

 骨格筋に対する加齢と脳卒中の影響。

 年齢に関係なく脳卒中後の筋は加齢による変化する筋と多くの類似点を示す。脳卒中後タイプII繊維の数は徐々に減少し骨格筋の断面積が失われます

 脳卒中後少なくとも6か月の高齢者(50歳から76歳)の間で、ライアンらは骨格筋に対するレジスタンストレーニングの有益な効果に関する最初の論文を発表しました。12週間のレジスタンストレーニングプログラムの参加者は、大腿の筋断面積の増加を示しました(麻痺性13%、非麻痺性9%)。また、レッグプレスの出力(麻痺側33%、非麻痺側32%)および膝伸展筋力(麻痺側56%、非麻痺側31%)の最大強度の増加を示した。

 脳卒中後、伝統的なレジスタンストレーニングが障害に与える影響に関するエビデンスは決定的ではありません。たとえば、Weissらは、脳卒中後の個人で1RMの70%で12週間の高強度レジスタンストレーニングを行うことで、椅子の立ち上がりが改善したことを報告しました。対照的にOuelletteらは、参加者が活動および活動参加の改善を報告したものの、同様のプログラムでは椅子の立ち上がりに大幅な改善がないと報告しました。さらに、麻痺側の脳卒中後の等速性トレーニングは、階段昇降において実質的な改善をもたらさなかったと報告した。

 セラピストは、脳卒中患者が身体の不使用に陥らないよう医学的に安定していると判断されたらすぐに介入する必要があります。タイプⅡ線維の大規模な損失の証拠があるためこれは特に重要です。起立着座動作や階段昇降などの機能的に関連する活動は、大きな力の発生を必要とするため、タイプⅡ繊維の減少を改善するのに役立つ場合があります。 タイプI線維とⅡ線維を動員する可能性のある神経筋電気刺激(NMES)の使用は、随意筋活性化が障害されている場合、運動単位動員の増加に役立ちます。特定のタイプのNMESである機能的電気刺激は、下肢の筋パフォーマンスを改善し、急性および慢性の脳卒中関連の障害を持つ個人の歩行再訓練を支援するためのトレッドミルトレーニングの補助として使用できます。

 

 

 本論文からでは、脳卒中後は高齢者同様にタイプⅡ線維(白筋繊維、速筋、無酸素状態での筋収縮能が高い。ミトコンドリアは比較的少なく解糖系による瞬発的な収縮の可能)が損失しやすいとある。起立動作や階段などは苦手となりやすく、練習も重要である事が示唆される。上手く十分な筋収縮レベルまで運動単位を参加させるのが難しい患者には、NMESで運動単位の動員の補助を行う事も臨床のおいて有用であるかもしれない。