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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №11 「エビデンスに基づいた電気治療」

2023/01/13

こんにちは。以前「手のリハビリシリーズ」のときに、少しご紹介しましたが、今回は電気治療について更に深掘りをして、ここ横浜からお届けしてまいります。

 

はじめに

 脳梗塞 リハビリ 電気治療

リハビリテーション医学の英訳は physical therapy and rehabilitation medicine であり,物理療法 physical therapy)と共にリハビリテーション医学 が発展してきたことを示している.物理療法は 「熱,低温,光,水,電気,マッサージなどを用い る身体的治療の科学および技術」であり,電気刺 激療法は物理療法の1つである.電気刺激療法の基本 生きている細胞は,細胞内外で電位差を発生さ せ細胞機能を発現しており,細胞の死と共に電位 差を失う.また,視覚や聴覚,触覚などの感覚器 官からの情報は,電気信号に変換され神経を通じて中枢へ伝えられ,中枢からの指令も電気信号に よって身体各所に伝えられる.このように,電気は 生命活動の基盤を形成し,細胞の集合体である人 体の情報伝達も電気によって行われている.したがって,外部から電気刺激を行うことで細胞機能 や身体機能に干渉可能であり,これが電気刺激療法である. Duchenne が骨格筋に対する電気刺激 療法を報告して以来,鎮痛を目的とした経皮的電 気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulationTENS)と,筋力増強や浮腫改善,痙性の抑 制,創傷治癒や血流の促進などの治療を目的とし た治療的電気刺激(therapeutic electrical stimulationTES),中枢神経・麻痺筋の制御による機能 回復を目的とした機能的電気刺激(functional electrical stimulationFES)がある.FES は医用 工学的技術の粋であり,TES と区別すべきである. 電気刺激は,運動点に刺激電極を置く単極刺激 運動障害以外の疾患に対するエビデンスに基づいた電気刺激療法 (通電)法と,運動点を挟んで 2つの電極を置く双 極刺激(通電)法がある.電気刺激は電流強度,パルス持続時間,波形の傾き式,波数に よって調節される.電気刺激は機械を使用するの で,用語は重要である.

⿟運動点(motor point):電気刺激により筋収縮を 誘発されやすい部位.筋肉ごとに存在する.⿟電流密度:単位面積あたりの電流の強さ.電流 の強さに比例し,電極の大きさに反比例する.  

⿟電流強度:電流強度=(電圧/電流)×パルス幅 で示され,神経や筋肉を興奮させるため一定以 上の電流強度が必要である.電流強度が強すぎ ると不快感や痛みを生じる.

⿟通電時間:刺激パルスの持続時間とパルス幅か ら成る. ⿟波形の傾き:刺激に必要な急峻な電流変化. 

⿟刺激周波数:筋肉の収縮を得るため一定以上の 刺激の繰り返しが必要となる.周波数が高すぎ ると不応期となり筋収縮が得られなくなる.電気刺激療法は周波数やパルス幅を変えることで治療方法や目的を変更可能である.電気刺激療 法の種類を表 ø に示す. 電気刺激療法の適応 

⿟鎮痛:TENS は疼痛治療として一般的に使用さ れ,無作為化比較試験で変形性膝関節症や慢性 腰痛に有効であるø)TENS の鎮痛作用はMelzack らの gate control 理論によって説明されてきたが,下行性疼痛抑制系の賦活化や脊髄後角への抑制的な影響が指摘されている.TENS は術後疼痛やがん性疼痛にも応用されているが, 強固な証拠はまだない.臨床では SSPsilver spike point)電極を経絡「ツボ」に置いて電気刺 激を行う治療もある.

TES による運動機能改善:末梢神経損傷による 麻痺筋の筋収縮を誘発し筋萎縮を予防する.中枢神経損傷では,正常な末梢神経・筋を利用し て筋力を増強し,痙性を抑制する.廃用性筋力 低下も同様に筋収縮によって筋力を増強する. TES による刺激方法は,低周波や中周波,干渉 電流が用いられる.

FES による機能回復:麻痺筋を制御して機能を 再建する.中枢神経の可塑性やネットワーク再 構築を促進する.

⿟末梢循環:筋収縮によるポンプ作用で浮腫を軽 減させる.  

⿟創傷治癒:循環の改善や修復細胞の活性化によ る.

⿟排尿機能:骨盤底筋に作用し失禁を改善する.

 

 電気刺激療法の保険適応について:電気刺激療 法はホット・パックや超音波療法と同じく,消炎鎮痛処置に該当し請求できる. リハビリテーション料を算定すると消炎鎮痛等処 置を算定できない.また,大学病院などの特定機能病院やù÷÷ 床以上の病院は再診の際に外来診療料を算定しており,消炎鎮痛処置はこれに含まれ るため,やはり算定できない.

 

電気刺激療法の禁忌 電気刺激療法の禁忌および禁忌部位を示す.電気刺激療法中は電極と患部との接触を完全にして,電流が流れている間電極を体から離さな い.金属と皮膚との接触を避け,通電中に電源を 切らない. 電気刺激療法のエビデンス .脳血管障害(脳卒中治療ガイドライン)から抜粋) 

 

⿟上肢機能障害に対するリハビリテーション:中等 度の麻痺筋(手関節背屈筋,手指伸筋)には電 気刺激の使用が勧められる(グレード B).反復 経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激は考慮し てもよいが,患者の選択,安全面に注意を要する (グレード ).  

⿟片麻痺側の肩に対するリハビリテーション:麻痺 側の肩関節可動域と亜脱臼の改善を目的とし て,機能的電気刺激が勧められるが,長期間の 効果の持続はなし(グレード B).

⿟痙縮に対するリハビリテーション:痙縮に対して 高頻度の TENS を施行することが勧められる (グレードB).

⿟歩行障害に対するリハビリテーション:慢性期で 下垂足がある患者には FES が勧められるが,効 果持続時間は短い(グレード B).

脊髄損傷 脊髄損傷に対する FES は多くの報告があり,脊 髄損傷理学療法ガイドラインでグレード B となっ ているü)

慢性創傷・褥瘡 低出力直流電流,高電圧パルス電流,交流, TENS はいずれも創傷治癒を促進するý).同様に褥瘡においても有用である.米国内科学会による

 電気刺激療法の禁忌や注意すべき部位

・心臓ペースメーカーなど体内埋め込み型電子機器装着者  

電子装置の誤作動誘発 心臓病の病歴がある患者の胸部

不安定な不整脈悪化

・知覚障害

酒気帯び 電気刺激を知覚できず,過大な刺激 を与える可能性

・動静脈の血栓症,血栓性静脈炎

筋収縮による血栓遊離

・悪性腫瘍

脳血管障害やてんかん発作の病歴をもつ頭蓋顔面領域血流増大に伴い状態悪化

・妊婦の腹部,腰仙部,骨盤領域

発育中の胎児や妊娠子宮への影響

・筋収縮が禁忌となる病態(腹部・鼠 径ヘルニアなど) 筋収縮により状態悪化

・目

皮膚が過敏,損傷,病変がある領域

・急性損傷や炎症のある部位

過剰の電流が流れる可能性

・頸動脈領域

急速な血圧低下の可能性 出血や血腫が起こりやすい組織また は月経時の腹部 血流を増加させる可能性

 褥瘡治療ガイドラインで,創傷治癒を早めるため 補助的な電気刺激療法が勧められている(弱い推 奨・中等度のエビデンス ).日本褥瘡学会の褥 瘡予防・管理ガイドライン)にも局所治療 として電気刺激治療が勧められている(推奨度 B)

 排尿障害 日本排尿機能学会による「女性下部尿路 症状診療ガイドライン」で,腹圧性尿失禁に対する 電気刺激療法は推奨グレード B とされた.

 嚥下障害 嚥下障害に対する電気刺激療法のメタアナリシ スは多く,中等度の嚥下障害に有用性が示されている) FES の話題と ニューロリハビリテーション FES は中枢性麻痺の残存する末梢神経を刺激し て機能回復させる医用工学的治療であり, 前脛骨筋の電気刺激によって脳卒中片麻痺患者の 足関節背屈を促した Libersonの報告から始まっ た.脳卒中や脊髄損傷患者に対するFES の効果 は多く報告されている) 近年,FES は埋め込み電極から表面電極を用い たシステムが主流となり,感覚入力と運動出力を 統合させる手法として,筋電をトリガーとして電気 刺激を行う筋電誘発電気療法(electromyography-triggered neuromuscular stimulation ETMS)が推奨されている.ETMS は, Hansen が麻痺患者の手関節伸筋にETMS を行った報告が最初で,日本では村岡が IVES 療法(Integrated Volitional controlled Electrical Stimulation)を開発し,IVES 療法に手関節 固定装具を加えた HANDS 療法(hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation)も報告 されている

 ETMS として表面電極が 装具に組み込まれた NESS システムの上肢用 ÷÷ と下肢用 ÷÷ の薬事承認が得られ,臨床に 応用されている. FES はニューロリハビリテーションとしても使 される.FES の複雑性から限界が指摘されてい たが,神経・筋を刺激することで損傷された脳の可 塑性や神経ネットワークの再構築が促進される FES は神経筋電気刺激(neuro-muscular electrical stimulationNMES)としてニューロリハビリテーションの構成要素となっている. 電気刺激療法の最新知見神経に支配されている臓器はすべて電気刺激に反応するので,医用工学の発展と共にさまざまな電気刺激療法が実用化され,臨床応用されている.

⿟迷走神経刺激によるてんかん抑制:薬剤抵抗性 の難治性てんかん発作を有するてんかん患者(開 頭手術が奏効する症例を除く)の発作頻度を軽 減する補助療法として保険適応と なった.

⿟修正型電気刺激療法(modified electronic convulsion therapymECT):躁うつ病や統合失調症など多くの精神疾患に使 用されている.

⿟脊髄刺激療法:複合性局所性疼痛症候群(脳卒中後の肩手症候群を含む)や末梢神 経損傷に伴う神経因性疼痛およびその他の難治 性疼痛に対して行われる.遷延性意識障害や四 肢痙性麻痺に対して脊髄後索電気刺激(dorsal column stimulationDCS)も行われる.

法(deep brain stimulation DBS):パーキンソン病や振戦,ジス トニアの治療として保険適応となった.

⿟仙骨神経刺激療法(sacral neuromoduration 594 Jpn J Rehabil Med Vol. 54 No. 8 2017 木村浩彰・他 SNM):便失禁に対する新たな 治療法として保険適応となった.

⿟横隔膜ペーシング:上位頸髄損傷や中枢性呼吸 障害に対して行われるが,保険適応はない. 骨格筋刺激による新しい 方法と代謝への影響 TES による効果的な筋力増強法として,運動時 に動作を妨げる拮抗筋を電気刺激して得られる筋 収縮を運動抵抗とするハイブリッドトレーニングシ ステムが挙げられるøý).短時間,短期間で効果を 示すことが明らかにされており,今後無重力空間 での運動療法としても期待されている.

 

また,電気刺激による筋肉収縮を介した代謝への影響も重 要である.筋肉はα運動ニューロンによって支配 されており,特定のα運動ニューロン支配下の筋 線維は組織化学的に同じ性質をもっている.筋肉 は大別して遅筋(Type Ⅰ)と速筋(Type Ⅱ)に 分けられ,Hennemanの「サイズの原理」に応じて 小さく動員閾値の低いType Ⅰから順次動員され る.しかし,電気刺激は大きな神経に伝わるので 「逆サイズの原理」が働 Type Ⅱから動員され øþ).また,神経移植や神経刺激頻度によって筋 肉はその性質を変化させる).森谷らは,大腿 四頭筋の電気刺激によって低い運動強度で解糖系 エネルギー利用の高い速筋線維の動員を可能にし, 筋エネルギー消費と糖代謝を活性化できることを 示した.これにより,肥満や糖尿病に対する代 謝促進や,外科術後,寝たきり患者,要介護者,サ ルコペニア,失禁に対する筋肥大にも電気刺激療 法が応用できる可能性が示唆された.

結語 

 電気刺激療法は古くから広く臨床で用いられて いるが,臨床的エビデンスに乏しい.医用工学の 進歩により新しい電気刺激療法が創られている. リハビリテーション医学は物理療法としての電気 刺激療法をこれからも積極的に使用し,エビデン スのある治療として確立させなければならない.

 

出店

運動障害以外の疾患に対する エビデンスに基づいた電気刺激療法 Electric Stimulation Therapy Based on Evidence for Diseases Other than Movement Disorders 木村浩彰 * 三上幸夫 * 牛尾 会 * 澤 衣利子 * 上田健人 Jpn J Rehabil Med 2017;54:590-595

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