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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №10 「嚥下障害 リハビリ」

2023/01/13

目次

今年の最初は嚥下障害にフォーカスして、特徴、病態、リハビリテーションなどについて、今回もここ横浜あざみ野からご紹介していきます。

1. 脳卒中の嚥下障害の特徴
嚥下障害 リハビリ
脳卒中は嚥下障害を引き起こす代表的な疾患である。急性期に嚥下障害を発症する頻度は、障害の部位や程度、評価の方法によって差はあるものの、軽度なものまで含めると70%程度に合併すると報告されている。急性期には嚥下障害を高率に合併するが、数週間の経過中に改善する症例が多く、3ヶ月後には数%にまで減少するといわれている。大脳の一側性病変による核上性障害では嚥下障害は軽度であるが、両側性病変による偽性球麻痺や延髄病変に伴う球麻痺では中等度から重度の嚥下障害が遷延する場合がある。脳幹梗塞、多発性梗塞、巨大半球病変やうつ状態は誤嚥の大きなリスクといわれている。また、嚥下反射異常、自発的咳嗽の障害、発声障害、口唇閉鎖不全、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)高値や脳神経麻痺も嚥下障害の警告要因である。呼吸器感染症の頻度は22%であり、65歳以上の高齢者や言語障害、重篤な後遺症、認知障害、嚥下障害は肺炎の高リスクと関連するため、特に急性期では誤嚥を予防して肺炎リスクを低下させることが重要である。
急性期の特徴として、脳浮腫や脳機能全体の低下による嚥下障害の影響を考慮する必要がある。一側性病変であっても損傷された部位だけでなく、対側の血流低下を生じて一過性に偽性球麻痺の症状を呈する。意識障害を伴う症例も多く、嚥下反射が惹起されにくいなど嚥下中枢への影響もある。脳卒中急性期に嚥下障害を認める患者では、嚥下障害のない患者と比べて自然状況下での唾液嚥下回数が減少しており、嚥下障害の重症度が高いほど唾液嚥下回数は少ないことが報告されている。脳浮腫や意識障害が軽快すると嚥下障害も改善する症例が多いが、回復期においても偽性球麻痺、球麻痺や大脳皮質嚥下中枢の障害、認知機能の低下、高次脳機能障害によって嚥下障害が残存する症例も存在する。
近年では治療の進歩に伴い脳卒中による死亡者数は減少したが、後遺症として嚥下障害を抱える患者は増加している。日本人の死亡原因の上位である肺炎、不慮の事故(窒息)、誤嚥性肺炎の多くに脳卒中後の嚥下障害、誤嚥が関係しているともいわれている。脳卒中発症時や回復期に嚥下機能が保たれていても、維持期の経過において加齢や活動低下、栄養障害によって嚥下機能が徐々に低下する場合もあり、脳卒中後の嚥下障害への対策も極めて重要な課題である。

2. 嚥下障害の病態
嚥下障害 リハビリ
脳卒中の嚥下障害は病巣部位によって、偽性球麻痺、球麻痺、一側性大脳病変の3つの病態に分類されている。いずれの病態にも急性期には意識障害が存在することが多く、嚥下機能全般への影響を考慮する必要がある。

【偽性球麻痺】
上位運動ニューロン(皮質延髄路)の両側性損傷で発症し、構音障害と嚥下障害を呈する。痙性構音障害により開鼻声、努力性嗄声、構音の歪みがみられる。嚥下障害は嚥下関連筋群の協調運動が悪くなること、筋力が低下することが特徴である。具体的な症状としては、口唇閉鎖不良により食物の取り込みが不良で口唇からこぼれる、咀嚼と食塊形成が不十分となり食塊の口腔残留がみられる。また、舌運動障害と筋力低下により、口腔から咽頭への送り込みが低下する。感覚障害を合併すると、口腔内に唾液が貯留したり、流涎が強い場合もある。咽頭期では嚥下反射は保たれていることが多く、嚥下パターンも障害されないが、嚥下反射の惹起遅延がみられ、咽頭への流入速度が速い液体などで嚥下前から嚥下中の誤嚥を生じる。反復唾液嚥下テストのような随意的な嚥下運動を行うと、口腔内の唾液処理に時間を要し、嚥下運動は緩慢となり、嚥下反射が起こっても嚥下圧が低く、口腔期の運動や咽頭閉鎖との協調性に欠ける。嚥下時の咽頭挙上範囲は正常だが、筋力と運動速度の低下がみられる。嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の所見では、食塊形成や送り込みに障害がみられ、食塊が下咽頭まで達しても嚥下反射が惹起されないことが多い。偽性球麻痺の嚥下障害(期、stage)が遅れるという、相と期のずれがみられる。

【球麻痺】
延髄の脳神経障害により嚥下障害と構音障害を主症状とする病態である。顔面神経麻痺や三叉神経麻痺、眩暈、失調症状を伴うことも多い。構音障害は弛緩性タイプが多く、ときに軟口蓋挙上不全による開鼻声をきたす。舌下神経核の障害により舌の萎縮と線維束性収縮、疑核の障害により咽頭麻痺、気息性嗄声が出現することもある。
嚥下障害は、嚥下反射の惹起不全、咽頭挙上障害、咽頭収縮の低下、食道入口部開大不全など咽頭期障害がみられる。代表的なWallenberg症候群では、急性期に嚥下反射がほとんど起こらず、唾液を吐き出すためにティッシュペーパーを常時携帯している重症例もみられる。嚥下に伴う咽頭挙上は弱く、努力性に不完全な挙上を繰り返す。嚥下中枢は延髄に存在すると考えられており、疑核、弧束核などが介在して嚥下のプログラムを起動している。延髄病変によって嚥下のCPGが破綻すると、嚥下のパターン異常を生じ、特徴的な咽頭期嚥下障害を呈する。具体的な症状としては、嚥下時の咽頭挙上、咽頭収縮、輪状咽頭筋弛緩にタイミングのずれが生じ、結果的に食塊の咽頭残留や誤嚥がみられる。食塊が通過する際に輪状咽頭部の圧が上昇する協調障害がみられる場合もある。Wallenberg症候群では、咽頭期の嚥下において食塊の通過側に左右差を認めることが多い。食塊の食堂入口部通過は健側優位に通過しやすいとする報告がある一方で、病巣側優位に通過する症例も報告されている。

3.  嚥下リハビリテーション治療
嚥下障害 リハビリ 間接訓練
間接訓練は食物を用いない基礎訓練であり、嚥下関連器官に対する感覚・運動訓練、口腔ケア、呼吸訓練、嚥下手技の習得など多くのアプローチ方法がある。個々の訓練法のエビデンスレベルは高くはないが、病態に応じて複数の訓練を組み合わせることで効果を高めることができる。脳卒中治療ガイドライン2015では、頚部前屈や回旋、咽頭冷却刺激、メンデルゾーン手技、supraglottic swallow(息こらえ嚥下)、頚部前屈体操、バルーン拡張法などの間接訓練は、検査所見や食事摂取量の改善などが認められ、それぞれの症例にあわせて包括的な介入として実施することが勧められている(グレードB)。
下顎、口唇、舌に対する運動訓練では、運動範囲の拡大と筋力増強を目的とし、速度よりもゆっくりとした大きな動き、抵抗を加えた強い運動を行わせる。これらの器官に随意運動がみられない重症例に対しては、他動的な運動と感覚刺激入力を行いながら少しずつ随意運動を引き出すことを試みる。口腔内に唾液が貯留している場合や流涎が多い症例では、口腔器官の運動障害あるいは嚥下反射の惹起不全が疑われるため、運動訓練と併せて前口蓋弓冷圧刺激により唾液の嚥下訓練を実施する。のどのアイスマッサージは、前口蓋弓の他、舌後半部や舌根部、軟口蓋、喉頭後壁など広い部位に刺激を行い嚥下を誘発させる方法である。嚥下反射の誘発に対するその他のアプローチとして、近年、上喉頭神経への感覚刺激入力を目的とした経皮的干渉波電気刺激の有用性が報告されている。嚥下反射の誘発には延髄CPGに存在する嚥下関連ニューロンの活性化が必要であるが、干渉波電気刺激を用いることで感覚入力の加算効果が考えられており、今後期待されるアプローチのひとつである。喉頭期の嚥下では、嚥下反射の惹起に伴って舌骨咽頭が挙上することにより食道入口部が開大する。触診や嚥下造影検査の評価から舌骨喉頭挙上が不十分な症例に対しては、舌骨上筋群の筋力増強訓練が適応となる。頭部挙上訓練や嚥下おでこ体操、開口訓練、呼気筋トレーニングなど多様な方法があるが、症例の能力と理解の程度に応じて選択し、いずれも少し疲労が感じられる程度の負荷で実施することがポイントとなる。舌骨上筋群の収縮を促す方法として、電気刺激療法を併用する場合がある。
脳卒中後患者では肺炎の発症に注意が必要であり、特に急性期患者や不顕性誤嚥の患者では口腔ケアを徹底する必要がある。脳卒中発症後できるだけ早期に口腔ケアの介入を行うことで肺炎の発症を減らすことができるといわれている。また、口腔ケアは口腔内への感覚刺激によってサブスタンスPが増加し、咳反射と嚥下反射の誘発を改善させるとの報告もある。意識障害がある患者に対しても、口腔ケア時に他動的に口唇、頬、舌を刺激することで間接訓練としての効果も期待できる。
間接訓練においては、口腔器官に対する訓練だけでなく、直接訓練の際に重要な頚部・体幹の機能、呼吸機能の向上を目的としたアプローチも大切である。摂食場面での姿勢保持や耐久性を考慮し、頚部・体幹の可動域訓練、筋力増強、持久力の改善をはかる。特に頚部の筋緊張異常や可動域制限は嚥下機能を二次的に悪化させる原因にもなる。また嚥下と呼吸は密接な関係にあり、呼吸が安定していない患者や咳嗽力が低下した患者では呼吸訓練が適応となる。これらのアプローチには嚥下機能を考慮した理学療法の取り組みが極めて重要である。

嚥下障害 リハビリ 直接訓練
直接訓練は食物を用いて行う経口摂取訓練である。脳卒中急性期では、すべての患者に嚥下機能評価を行うと共に、できるだけ早期に直接訓練を開始することが重要である。脳卒中急性期での摂食嚥下訓練として発症7日以内に嚥下と食事に対して介入を行うと、6ヶ月後の予後を改善し呼吸器感染症を減らすとされている。小山らは、脳卒中患者において入院早期からの包括的なプログラムの実施による摂食・嚥下リハビリテーションは、呼吸器合併症を予防し、早期経口摂取の再獲得、経口摂取移行率の増加、在院日数短縮、退院時嚥下グレードの改善に寄与することを報告している。間接訓練を行っていても、非経口摂取の期間が長ければ嚥下関連器官の廃用が進み、経口摂取能力の低下と栄養障害を招くことは容易に推測できる。したがって、少量からでも早期の経口摂取を行うことが大切であるが、そのためには正確な嚥下機能評価と病態に応じた適切な条件設定、リスク管理、環境の整備が必要である。
嚥下機能評価に基づいた食形態、姿勢、代償法、食事量を決定し、摂食の安全な条件が設定された上で直接訓練を開始する。姿勢調節法には頭頸部や体幹角度の調整などがあるが、食物を意図した流路に導くこと、咽喉頭の空間を変化させること、嚥下運動を改善することなどの利点を考慮し、症例に応じた姿勢の選択を行う。食形態の種類は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2013を参考にし、咀嚼と嚥下能力に合わせて選定する。経口摂取の開始は必ずしもゼラチンゼリーが最良の選択ではなく、舌による食塊操作が不良な症例では、むしろペースト食やムース食が適切な場合もある。フードテストの結果だけでは咀嚼嚥下能力を評価することは難しいため、実際の摂食場面にて数種類の食形態を咀嚼嚥下させて評価する。咀嚼の評価では、臼歯部での咬合の有無、口唇閉鎖、口角の牽引、下顎の側方運動などが観察のポイントになる。液体誤嚥がみられる場合には、口腔保持からの嚥下の意識化、Chin-down肢位、息こらえ嚥下などの代償嚥下法を試行し、それでも誤嚥が防止できない場合にはとろみ調整食品を用いる。嚥下調整食やとろみ調整食品の使用により誤嚥リスクを軽減することはできるが、肺炎を減少させるというエビデンスは十分ではなく、脱水や低栄養を招く可能性があることも知っておく必要がある。
特に覚醒レベルの変動に注意が必要であり、患者の表情や反応、嚥下に要する時間、疲労の状況を注意深く観察することが誤嚥や窒息のリスク管理にもつながる。声質の変化も誤嚥の重要な指標であり、嚥下後の発声や会話の中で必ず行う。ゴロゴロとした声、泡立ったような声は湿性嗄声であり、声帯付近に食物や唾液の貯留が疑われる所見である。湿性嗄声がある場合には随意的な咳嗽と空嚥下を指示し、これを患者本人が意識して習慣化できるよう指導する。誤嚥や肺炎の徴候がみられず、経口摂取の量、時間ともに順調であれば食事条件を段階的にアップしていく。姿勢調整や嚥下手技などの代償手段についても嚥下能力に応じて変更する。運動学習の視点で捉えた場合、課題の難易度は、姿勢、食形態、嚥下手技、食事の量・回数などの変数を患者の能力向上に応じて調節することが大切である。

 

 

参考文献
脳卒中リハビリテーション05 2019.5.15第2巻第1号:p4,5,6,11,12,13,14,15
発行/株式会社geneISNN2433⁃9814