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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №7 「手のリハビリ方法編・第五弾」

2022/12/27

手のリハビリ方法編五弾ということで、今回も第一弾~四に引き続き代表的な上肢機能アプローチについて、本日もここ横浜あざみ野からご紹介していきます。

 

8. スプリント療法

手のリハビリ方法の8つ目として、スプリント療法をご紹介します。

 

【概要】手のリハビリ方法

 Langhorneらは、スプリントは「手の機能向上、痙縮や痛みの減退、筋萎縮や過伸展、浮腫を防ぐために用いる取り外しが可能な抹消の道具」と定義している。脳卒中の分野においても上肢に関してはコンディションを整えるための補助具の扱いとして認識されている。

 脳卒中におけるスプリント療法は、痙縮や萎縮、感覚障害などの影響により物品の把持・離しが困難な上肢麻痺対象者に対し、手指・前腕の痙縮のコントロールや物品の把持・離しを介助するために課題指向型アプローチに併用されることが多い。

 

【スプリント療法のガイドライン・エビデンス】手のリハビリ方法

「脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]」において、麻痺側上肢へのスプリント療法は、「行ってもよいが科学的根拠は十分ではない(推奨グレードC1)」レベルである。また、Lancet誌の脳卒中ガイドラインにおいても上肢スプリントは「手の機能改善のために装具療法は推奨しない(推奨グレードB)」となっている。

Stroke Rehabilitation Clinician Handbook2020でのスプリント療法のエビデンスレベルについて、①上肢運動機能、②手指運動機能、③日常生活活動、④痙縮、⑤関節可動域、⑥筋力増強をランダム化比較試験(RCT)にて調査した、関節可動域に関しては5つのRCTの結果から1aのエビデンスレベルをもって効果を認めたが、残りの5項目は1a,1bのエビデンスレベルをもってして効果を認めなかった。

先行研究において、Kimらは手指の痙縮がある生活期脳卒中の対象者15名を無作為に振り分け、介入群には外骨格型の伸展装具を装着し110分、12回使用したところ、対照群と比較しmodified Ashworth ScaleMAS)の有意な低下を認めた。また、Joら手関節と手指に重度の痙縮のある生活期脳卒中の対象者10名に対し110分、12回の手関節伸展スプリントを使用したところ、MASの有意な低下を認めた。

さらにFujiwaraらの研究では、生活期脳卒中の対象者15名に手関節背屈スプリントを安静時に装着して生活を送ったところ、電気生理学的指標であるH/M比の低下を認めた。これは伸張反射が低下していくことを表すため、痙縮の低下を示している。

また、手指の筋緊張抑制のためにテーピングが使用される場合もある。Santamatoらは、単盲検ランダム化比較試験でボツリヌス毒素を施注した生活期脳卒中の対象者に対し、手関節・手指の背側にテーピングを実施した群と対照群を比較した結果、MASの改善率はテーピング群のほうが良好であった。

このようにスプリントの使用によって痙縮が軽減するといった報告は多くみられ、課題指向型アプローチを行う前段階の痙縮のコントロール、手のコンディションを整える点では有効でないかと考えられる。

 

上肢機能アプローチにおけるスプリント療法のエビデンス手のリハビリ方法

近年では痙縮以外に対して、手関節や手指にスプリントを装着したConstraint-induced movement therapyCI療法)(推奨グレードA)や電気刺激療法やボツリヌス療法(推奨グレードA)、などを併用したアプローチを行うことで麻痺側上肢の機能改善を認めた報告も散見されるようになってきている。

Uswatteらは、RCT生活期重度脳卒中の対象者に対し、スプリント療法や電気刺激療法などを併用したCI療法を実施した群と対照群を比較した結果、脳卒中後の重度上肢麻痺を有する患者の「実生活における」麻痺側上肢の使用を評価するGrade-4/5MALCOPMの有意な改善を認めた。Farrelらは、生活期脳卒中患者13名を対象に手指伸展を補助するSaeboFlexを用いて課題指向型アプローチを16時間、5日間実施した。その結果、FMAの有意な改善を認めた。

事例報告では、天野らは母指を含む手指の随意伸展が困難な生活期重度上肢麻痺の対象者に対して母指CM関節掌側外転保持スプリント(CMバンド)を併用して、115時間、週3回、10週間にわたってCI療法・Transfer packageを実施した。結果、FMAMALAmount of UseAOU)改善を認めた。また、堀らは両片麻痺の回復期脳卒中の対象者に対して、スプリント療法・電気刺激療法併用下でCI療法を112時間、ロボット療法を130分、34日間実施した。結果、FMAMALAOU)、左側のARATMCIDを超える改善を認めた。このように手指伸展や母指の対立の不十分さを補う形でスプリントが利用され、エビデンスが確立されているアプローチと併用が可能となり、上肢・手指の機能改善を認めた研究が増えてきている。

そのため上肢機能アプローチを行う際に、痙縮のコントロールだけではなく、機能改善を目的としてスプリント療法を導入していくことが有効と考える。

 

上肢機能アプローチへの導入手のリハビリ方法

   軽症例(BRS Ⅳ~Ⅴ程度の麻痺)

   BRSⅣ~Ⅴ程度の上肢麻痺対象者では手指の随意的な伸展がみられ意図的な物品の把持・離しが可能であるが、手指の痙縮や感覚障害などにより、物品の形態に合わせた手の構え(pre-shaping)を作ることができず、母指の対立が困難な場合が多い。物品を把持しようとするための大きな物品(6㎝ブロックなど)細やかな物品(例:硬貨や爪楊枝など)を把持することが困難になる。

   このような対象者には、CMバンドなどの対立スプリントを用いることでpre-shapingを作ることが可能となる。また、伸縮性のあるテーピングを母指に装着することで母指の対立を促すことも可能である。さらに、反復した動作を続けることにより手指屈曲の痙縮が上がってしまい、物品の把持・離しが困難になる場合は、示指~小指にかけて伸展方向にテーピングを装着することで手指の持続伸張を促すことが可能となり、手指屈曲の痙縮を抑制することができる。

   

   中等度例(BRSⅢ~Ⅳ程度の麻痺)

   BRSⅢ~Ⅳ程度の上肢麻痺対象者では、痙縮亢進による手指の伸展はわずかに認める程度で、屈筋共同運動により手指の屈曲は可能な場合が多い。物品を麻痺手で押さえる、非麻痺側手で物品を持たせるようにすると物品の把持は可能だが、離すことが困難である。

   このような対象者に対してCMバンドのみでは手指伸展を行うことが困難となるため、短対立スプリントを用いることで課題の実施を可能にする。短対立スプリントを装着することで麻痺手を対立位で保持できるため、指間距離を保つことができ、物品を把持することが可能となる。短対立スプリントのCバーの大きさや痙性の状態にあわせて素材を調整することで持てる物品の大きさが変わるため、対象者の目標とする動作に合わせてスプリントの作成・調整が重要になってくる。

 

   重度例(BRSⅡ~Ⅲ程度の麻痺)

   BRSⅡ~Ⅲ程度の上肢麻痺対象者では手関節・手指の随意的な伸展は困難であり、痙縮が進んだことによりWernicke-Mann肢位を呈することが多い。

   このような対象者には対立スプリントやテーピングを導入しても手指伸展が困難なことがあるため、カペナースプリントやスパイダースプリントなどの動的スプリントの導入を行う。

   スパイダースプリントはワイヤーを用いることで母指~示指・中指(もしくは全指)を固定し、ワイヤーの抵抗で手指伸展させる。ワイヤーの太さ(硬さ)を変えることで対象者の状態にあった調整も可能である。

   しかし、スパイダースプリント単体で課題を実施するとワイヤーの強度が強くなりすぎ、手関節が尺屈し鷲手のような手の構えになってしまうため、短対立スプリントとの併用が必要となる。

   弛緩性麻痺を呈し、手指屈曲が不十分になり物品を把持することが困難な対象者に対しては背側カックアップスプリントの使用を勧める。背側カックアップスプリントを背屈位で装着することでテノデーシスアクションを利用し、手指屈曲を援助することが可能となり、物品の把持が可能となる。

  

痙縮手のリハビリ方法

   従来のスプリント療法の使用目的として、痙縮や筋収縮の予防が挙げられる。安静時スプリントなど訓練時以外にも装着することで筋の持続伸張により痙縮の予防・改善が図れる。Pritchardらは脳卒中上肢麻痺に対するスプリント療法において安静時スプリントを装着することで手関節・手指の痙縮の改善を認めた報告をしている。また、手関節・手指伸展方向にテーピングを実施することで筋緊張の低下が認められたという報告もある。

 

まとめ手のリハビリ方法

 痙縮などによるスプリントの使用のみではなく、課題指向型アプローチに対してスプリントを併用することで様々なアプローチが可能になるため、対象者の状態に合わせて積極的に使用してもらいたい。

 

 

 

参考文献 

作業で紡ぐ上肢機能アプローチp130131132133  医学書院