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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №5 「手のリハビリ方法編・第三弾」

2022/12/17

手のリハビリ方法編ということで、今回も第一弾・第二弾に引き続き代表的な上肢機能アプローチについてご紹介していきます。

 

5. 電気刺激療法

手のリハビリ方法の5つ目として、電気刺激療法をご紹介します。

 

電気刺激療法とは

 電気刺激療法とは物理療法の中の一つの治療法であり、電気エネルギーによって生じる生体反応を治療に応用したものである。1965年にMelzackWallが疼痛緩和の治療法としてゲートコントロール理論を報告したことをきっかけに、現在に至るまで盛んに研究と臨床応用がなされている分野である。

 

ガイドライン上の電気刺激療法

中等度の麻痺筋(手関節背屈筋、手指伸筋など)には電気刺激の使用が勧められる(グレードB)。

痙縮筋に対し、高頻度のTENSを施行することが勧められる(グレードB)。

麻痺側の肩関節可動域と亜脱臼の改善を目的として、FESが勧められるが、長期間の効果の持続はない(グレードB)。

 

痙縮抑制に対する電気刺激療法

脳卒中などの上位運動ニューロンの損傷から生じる痙縮に対して、電気刺激により痙縮抑制を行うものである。痙縮抑制の電気刺激療法はコンディショニングを目的として、ストレッチの併用、もしくは実施後に行うことが勧められる。痙縮筋、拮抗筋に刺激を行う方法、刺激強度は感覚閾値や運動閾値で行うなど様々な方法が実践されている。

 

神経筋再教育としての電気刺激療法

   中枢性運動麻痺に対して、神経・筋の制御を改善する目的で電気刺激を行うものであ

  る。改善する機序としては、末梢神経・筋に対する経皮的な電気刺激を行うことによる

  末梢効果と中枢効果の2つの効果の組み合わせが影響しているといわれている。末梢効果とは、電気刺激が末梢の運動神経を脱分極させることで筋の収縮および関節運動が起こることである。これにより、筋の収縮力と疲労耐性の増加、筋肉量の増加、浮腫の軽減などに作用して、運動麻痺による随意収縮頻度の低下に起因する廃用性の筋萎縮に対する予防効果が期待できる。一方、中枢性の効果では、末梢の感覚神経の興奮は末梢神経を求心性に上行して、皮質の感覚野へ入力される。皮質感覚野の興奮性を増大させる作用があるといわれている。また、電気刺激を与えるタイミングは、対象者の随意運動に同期させることで皮質の興奮性増大の効果を高めるとされている。臨床においては、運動麻痺の程度や併用する他の運動療法などに応じて刺激方法・パラメーターの設定を調節することが重要である。

 

FEE-ESアプローチ】

   FEE-ESfinger equipped electrode electrical stimulation)アプローチとは、手指装着型電極(FEE)を使用した電気刺激と刺激部位(肩・肘・手関節・手指)の単関節の反復運動(各関節50回以上)を行うことで、運動麻痺の改善を促通する方法である。KishimotoらやInobeらが回復期から生活期までの中等度~重度麻痺に対する介入による効果を示している。特に急性期や重度上肢麻痺に対する筋萎縮の予防、回復初期の基礎的な運動単位の増大に向けたアプローチとして実践されている。

 

PSSアプローチ(末梢神経感覚刺激)】

PSSとは、感覚閾値の電気刺激を一定時間与えることで、刺激部位の皮質運動野の興奮性を増大させる方法であり、上肢・手指機能改善に効果があることが示されている。刺激強度は感覚閾値であることから運動の阻害や筋疲労、痛みを誘発しにくいため、他の運動療法との併用が行いやすいことが利点として挙げられる。PSSの主な対象は軽度麻痺であり、電極を正中・尺骨神経に貼付して、課題指向型アプローチとの併用で実施することによる手指巧緻性の改善などを目的としている。近年、感覚障害に対するPSSの効果も報告されるようになっている。

 

6. HANDS療法

手のリハビリ方法の6つ目として、HANDS療法をご紹介します。

 

HANDS療法のエビデンス

 神経筋電気刺激はAmerican Heart Associationのガイドラインにおいて、わずかな随意運動を有する対象者の上肢麻痺の改善に有効とされており、エビデンスレベルAとされている。

 本邦の脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]では、麻痺側手関節の自動伸展運動がみられる程度の中等度麻痺例では、運動にトリガーされる電気刺激により、特に手関節伸展筋の筋力増強、上肢の運動障害(impairment)の改善がみられる(レベル12)。さらに、随意運動介助型電気刺激と手関節装具を使用し、18時間の日常生活での使用を促すことで、長時間持続的に上肢機能障害が改善(レベル2)するとしており、中等度の麻痺筋、特に手関節背屈筋の筋力増強には電気刺激が勧められ、推奨グレードBとされている。

 Shindoらは回復期でランダム化比較試験を実施し、HANDS療法(Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation therapy)を実施した群が対照群に比べ上肢機能が有意に改善したと報告している。

 

IVESとは?

 随意運動介助型電気刺激装置(integrated volitional control electrical stimulationIVES)はMuraokaによって開発された、刺激電極と同一の電極により筋電を検出することが可能であり、標的筋の随意収縮をトリガーに、筋電量に比例した電気刺激を与えることができる電気刺激装置である。すなわち、標的筋に力を入れた際に電気刺激が加わり、力を抜けば電気刺激もなくなる。強い力を入れば強い電気刺激が入り、力を弱めれば電気刺激も弱まる。このように、電気刺激の強度や時間は対象者自身の随意収縮によりコントロールされる。

 従来の電気刺激療法では対象者の意図とは関係なく、あらかじめ設定された強度や時間、電気刺激が加えられるため、刺激筋の筋力増強や拮抗筋の痙縮抑制の効果は期待できるが、受動的な練習に留まっていた。一方IVESは対象者の随意収縮に応じた刺激が与えられるため、筋収縮の練習はもとより、筋収縮の調整の練習や筋収縮後の脱力といった運動学習が可能となり、さらには課題指向型アプローチや実際の生活場面で上肢を使用する際にも使用できるのが最大の特徴である。

 随意運動に合わせて電気刺激を与える効果の裏付けとしてはKhaslavskaiaらの研究が参考になる。健常者を対象に30分間、総腓骨神経に電気刺激を単体で行った群と、随意的な背屈運動と電気刺激を組み合わせて実施した群のトレーニング後の運動誘発電位(脳の興奮性)を比較したところ、電気刺激のみの群は運動誘発電位が38%増加したのに対し、随意的な背屈運動に組み合わせて電気刺激を行った群は66%増加しており、電気刺激のみの刺激よりも随意運動にあわせて電気刺激を行うことでより脳の興奮性を高める可能性があると報告されている。

 またIVESを使用した臨床研究として、Haraらは生活期の脳卒中片麻痺患者にIVESを用いたホームプログラムの効果を検証している。対象者20人を対照群と介入群に振り分け、介入群では長手根伸筋および短橈側手根伸筋・総指伸筋・示指伸筋・三角筋に対してIVESを使用して、肩屈伸や握り・離し、洗濯物たたみなどのADL練習といった個別のホームプログラムを週5日、3060分、5ヶ月間実施した。結果、介入群では手指伸展および肩屈曲の筋出力およびアクティブROM、筋緊張が改善したとし、IVESを用いたホームプログラムは手関節と手指の伸展と肩の屈曲の機能改善に効果があると報告している。

 

 

HANDS療法

 HANDS療法はIVESと上肢装具を18時間、3週間装着し、日常生活で麻痺側上肢の使用を促して上肢機能を改善し、実用性を改善させようとするアプローチである。IVESと上肢装具の装着は練習時間内に留まらず、生活場面でも装着しリアルな上肢の使用場面で電気刺激を与えることができ上肢の使用をアシストすることが可能である。

 

適応基準

・脳卒中後による片麻痺患者(失調や不随意運動は除く)

・杖、装具は使用していても構わないが、歩行が一人で可能なこと

・日常生活の基本的な動作が自立している方(食事、トイレ動作、乗り移り動作)

・麻痺手の手指伸筋群(総指伸筋など)の筋活動が表面電極で記録できる

・麻痺側の手が乳頭の高さまで挙がる

・感覚障害が重度でない(目をつぶって、よいほうの手で麻痺側の親指を探してつかめる)

・練習の指示理解が可能、日常での意思の表出が可能

除外基準

・ペースメーカーを使用されている方

・麻痺側上肢に異常な疼痛、しびれがある方

・麻痺手の著しい拘縮(指や手首の関節が既に固くなってしまい、他動的に動かそうとしても動かせない方)

・認知症、高次脳機能障害によって練習の施行が困難な方

・麻痺側前腕に金属などの体内異物がある方

・皮膚の問題があり、電気刺激が困難な方

・コントロール不良なてんかんがある方

 

 

 

参考文献 

作業で紡ぐ上肢機能アプローチp122123124125134135136  医学書院