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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №4 「手のリハビリ方法編・第二弾」

2022/12/17

手のリハビリ方法編第二弾ということで、今回も第一弾に引き続き代表的な上肢機能アプローチについてご紹介していきます。

 

 

3. 促通反復療法

手のリハビリ方法の3つ目として、促通反復療法をご紹介します。

 

促通反復療法の概要

 促通反復療法は、リハビリテーション科専門医である川平和美鹿児島大学名誉教授により考案された脳卒中後の運動麻痺を改善させる運動療法である。

 片麻痺は大脳皮質運動関連領域、あるいは運動野から下行する神経線維の損傷が原因で生じる。病巣が、神経細胞のある大脳皮質であっても、その回復には大脳皮質から脊髄前角細胞までの神経路の再建/強化が欠かせない。

 霊長類を用いた1990年代の実験で明らかになった脳の可塑性の事実をもとに、機能改善が従来得られないと考えられていた生活期の脳卒中の対象者にCI療法を行うことで、大幅な機能改善を示した。さらに脳イメージング機材や電気生理学的手法を用いた検証により、実際に人の脳においても可塑的変化が実証されている。

 促通反復療法はこれまでに明らかになった運動機能の改善を伴う脳の可塑的な変化を最大限実現するための方法論に基づいた、運動麻痺の機能的な改善を目指す治療法である。

 

促通反復療法の治療理論とその背景

脳卒中などの神経路損傷後に新たな神経路を再建する方法は、まず霊長類を用いた研究で示された。運動野皮質の局所に損傷をつくり、課題指向型の練習や麻痺肢の自動運動の反復を求めた際に、損傷部に隣接し損傷を免れた大脳皮質に機能的な再組織化が実現した。脳卒中の対象者の上肢機能障害に関しては、同じ自動運動の反復により改善が促進されることが示され、また手指に関しても高頻度の自動反復運動を含んだ手指の軌道追跡課題が物品操作性を向上させることが示された。さらにこの研究はfunctional magnetic resonance imagingfMRIを用いた脳の活動領域の検証において、訓練前は麻痺側と同側であった皮質の活動領域が、訓練後に反対側の運動感覚皮質に移っていたことが示され、運動機能改善に合わせた脳の再組織化が実現することも明らかとなった。このように運動機能改善を伴う新たな神経路の再建には対象者の意図した運動の実現とその反復が必須であることがわかる。

ただ、片麻痺の対象者には多くの場合、共同運動と呼ばれ特徴的な運動パターンが出現し、リハビリテーションに影響を与える。共同運動は、脊髄に存在する特定の筋の前角細胞間における強い結合が、運動性下行路の損傷により上位中枢の抑制から解放され、大脳からの興奮が意図していない結合関係のある筋まで伝わる現象である。また片麻痺の回復の阻害要因として痙縮も出現する。上肢は屈筋群の筋緊張が亢進しやすい。さらに片麻痺の対象者は運動麻痺が残存しながらも生活の中で麻痺側上肢を使用していく必要があり、そのことで代償的な動作が獲得されていく。たとえば前腕回内の不十分さを代償するために肩関節は外転、内旋位をとりやすく、前腕回外を代償するために肩関節は外転、外旋位をとりやすい。代償動作も反復されるとその動作に必要な神経路の強化に至り、代償するための特徴的な筋の組み合わせで固定されてしまう。

片麻痺の回復には意図した運動の実現とその反復が重要であるにもかかわらず、様々な阻害要因により対象者本人だけの努力では運動の実現にすら難渋するのが現実である。そこで川平は運動の実現にファシリテーションテクニックと呼ばれる四肢末梢からの感覚入力や操作などを利用する治療法を工夫・改良し、脳卒中の対象者の意図により運動性下行路の興奮に対してタイミングよく促通を組み合わせる促通反復療法を考案した。つまり促通反復療法とは、対象者の意図(脳で発生した運動のシグナル)が他の筋群に向かわずに目標とする筋に容易にたどりつくよう治療者がシグナルの出口を指定するものといえる。

 

促通反復療法のエビデンス

促通反復療法の臨床的な有効性を示す国際的なエビデンスは、まず回復期における片麻痺の対象者を対象にしたABABデザインの検討でBRSと簡易上肢機能検査(STEF)の改善が報告された。さらにエビデンスの質が高いとされるランダム化比較試験(RCT)でも明確な有効性が報告された。その改善がimpairmentBRS)だけでなく、上肢の物品操作能力(STEF)を評価する指標においても示された意義は大きい。他施設において追試も行われ、他のRCTでは促通反復療法の対照治療に対する優越性を示すだけでなく、手指への促通反復療法が機能的自立度評価法(FIM)のセルフケア項目の改善を促進することが明らかとなった。急性期においては、作業療法との併用治療についての後方視的検討で、麻痺の回復は上肢、手指とも促通反復療法群が通常訓練群より有意に大きかったと報告され、生活期においては、分離運動(BRS4以上)が可能な対象者で物品操作能力が向上することが確認された。

 

【促通反復療法の回復メカニズム

   神経細胞は同時刺激することにより神経細胞間の伝達効率が持続的に向上すること

  が長期効果(long-term potentiationLTP)として知られる。また皮質感覚野や視床への電気刺激が皮質運動野にLTPを引き起こすことが明らかになり、自動運動の反復とそれに付随した体性感覚などの上行性の入力が、新しい運動技能獲得を容易にすると示された。

   川平らは神経路の再建(回復メカニズム)に2つの原則を示している。自動運動の反復により興奮を繰り返し伝えた神経路はシナプスの伝達効率の向上と組織的結合強化が生じることと、同時に興奮した神経路が結合することである。さらに健忘症への学習法として知られる「誤りなき学習」理論を促通反復療法の運動学習に取り入れている。対象者の努力のみの場合、神経路の中で最も興奮性の高い回路(共同運動に関連する)に興奮が伝達されるため、促通手技による神経路の興奮水準の操作と上行性の入力により、対象者に試行錯誤を求めず、強化したい神経路にのみ興奮を繰り返し伝えることを重視している。

 

 

4. ミラーセラピー

手のリハビリ方法のつ目として、ミラーセラピーをご紹介します。

 

ミラーセラピーとは

 ミラーセラピーとは、鏡を用いた視覚入力により、対象者にあたかも麻痺側肢が正常に動いているような感覚を生成させ、麻痺側肢の運動機能の改善を図る訓練方法である。ミラーセラピーでは通常、対象者の正中矢状面に立てられた鏡やMirror boxを用いる。対象者には、鏡に非麻痺側肢を置いてもらう。そして、非麻痺側肢を動かし、その鏡像を麻痺側肢の位置に重ねるように見てもらうことがこの療法の中心的な課題となる。

 

【ミラーセラピーの神経メカニズム

 健常者を対象にした研究では、ミラーセラピーによって運動肢同側の一次運動野、上側頭回と上後頭回が賦活したことが報告されている。この背景に、運動イメージに伴う脳活動やミラーニューロンシステムなどとの関連が考えられるが、必ずしもこれらに関連した脳領域の活動が示されないことも指摘される。脳卒中患者を対象にした研究では、両手運動を実施させたミラーセラピーによって、楔前部と後帯状皮質の活動性が有意に高まったと報告された。両手運動によって実際の麻痺側肢の運動と鏡像とのミスマッチが生じ、これが麻痺側への注意を増加させ学習性不使用を改善させることも一つの改善メカニズムと考えられている。

 

運動方法

 主に片手運動(非麻痺側肢のみを動かす)と両手運動(非麻痺側肢とともに麻痺側肢もできる限り動かす)が用いられる。その他、筋緊張が低下している症例には両手運動、筋緊張が亢進している症例には片手運動を実施した研究がある。また、療法士が対象者の麻痺側肢を非麻痺側肢の運動に合わせて他動的に動かす方法を用いた研究もある。

 メタアナリシスでは、片手運動、両手運動いずれの方法でも有意な効果を示したが、片手運動の効果量のほうが高かったことが示されている。両手運動では、麻痺側肢の疲労や両上肢に注意が向くことで麻痺側肢と鏡像への注意が減少する可能性がある。特に重度麻痺など、鏡像と実際の麻痺側肢の動きのミスマッチが大きくなる場合、両手運動を実施したミラーセラピーの効果が得られにくい可能性がある。

 

 

 

参考文献 

作業で紡ぐ上肢機能アプローチp114115142143  医学書院