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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №3 「手のリハビリ方法編・第一弾」

2022/12/17

手のリハビリ方法編ということで、今回は代表的な上肢機能アプローチについてご紹介していきます。

 

 

1. ボバースコンセプト

手のリハビリ方法のひとつ目として、ボバースコンセプトをご紹介します。

 

【ボバースコンセプトの歴史】

1933年、ドイツではアドルフ・ヒトラーが首相となり独裁制が敷かれるようになった。ボバース夫妻はユダヤ人であったためイギリスへ亡命したが、その後、2人はロンドンで仕事を始め、ベルタの臨床に対してカレルが神経生理学の立場から解釈するという二人三脚での作業を続けた。

当時のイギリスは、物理療法や関節可動域訓練が中心であった。ベルタ・ボバースは、1943年インド人の王室肖像画家サイモン・エルビスを紹介される。のちに「新しい治療の出発、それは全くの偶然だったが、多くの新しいアイデアはこのように始まるのではないだろうか」と述べている。彼は、右片麻痺を患っており、腕と手は屈曲位で固まったままの重度肩手症候群を示していた。動かされることに恐怖感が強い状態である。物理療法やストレッチでは減弱しない痛みだったが、体幹姿勢を変えたり、曲げる方向にゆっくりと動かしたりすることによって、屈筋痙性が緩んでくるという発見を経験し、当初はリラクゼーションと呼称した(のちに、カレルの指摘でinhibitionと呼ぶ)。

サイモン・エルビスの麻痺側上肢・手は、結果として実用手には至らなかった。しかし、彼の本業である画家の職業復帰にベルタ・ボバースは貢献したようである。いわゆる利き手交換、70年以上も前のことである。

この時代はRIPreflex inhibition posture)という抑制姿勢が主流であり、1960年代に入るとkey-pointsareaof controlが導入された。1970年代にはエガースがself-inhibition(自己抑制)を多く取り入れた書籍を出版し、日本の多くの作業療法士が影響を受けた。1990年に「Adult Hemiplegia Evaluation and Treatment(邦題:片麻痺の評価と治療)」が改訂され(第3版)、auto-inhibitionの概念が追加されることとなった。auto-inhibitionの概念では、対象者自身におけるpostural controlの自律的反応が治療において重要な役割を果たす。つまり、肩甲帯と骨盤帯が連結している体幹の機能的活動によって、上肢・下肢の効率的な動きに変化するという画期的なコンセプトでもあった。

1991年に2人はこの世を去った。その直前の言葉を3点に要約したい。

・常に中枢神経系の協調性を追求すること

・実用的な機能に必ず結びつけること

・感覚・知覚・行動適応の問題を運動障害と同時進行的に治療すること

これらはいまも受け継がれている。決して古い言葉ではない。素晴らしいのは、その当時からこれらを提唱していたということである。

 

ボバースコンセプトの定義

1995年にワシントンD.C.で開催された第12IBITA年次総会では、1970年版より改訂された定義が提案された。ボバースの概念は、[中枢神経系(CNS)の病変による機能、運動、姿勢制御の障害を持つ個人の評価と治療に対する問題解説のアプローチである]。このように、神経リハビリテーションにおける臨床推論の重要な役割、そして対象者の個別性の役割を強調した。そして2019年、(ボバースコンセプトは、運動回復を最適化するための包括的で個別化された治療アプローチであり、現代の運動および神経科学により情報を得て神経学的病変を有する人々のための可能性を提供する)と改訂されており、詳細な説明がなされているのでその一部を紹介する。「この概念は、神経病理学的状態が人全体に影響するという理解に基づき、機能的な運動の分析のためのフレームワークを提供する」「ファシリテーションはボバースの臨床的スキルであり、治療的ハンドリング、環境および言語による手がかりを通して、感覚情報に影響を与えようとする能動的プロセスである」などである。

 

【ボバースコンセプトにおける評価と治療(対象者とのやりとりハンドリングを中心に)

ボバースは徒手介入をハンドリングと表現した。語源は「hand」である。治療の成否のすべては、対象者と療法士間のフィードバックにかかっているだろう。われわれは対象者の「動き」に介入し、その操作に対する反応によって、どうすべきか導かれる。言い換えれば、療法士は現象から得られた様々な情報を分析・解釈し、口頭指示や操作を行う。たとえば、リーチを誘導していたとしよう。徐々に反応が高まったならば操作する加減を強めたりといったように対象者に合わせていく。評価と治療は同時進行し続ける。それが臨床といえる。この中で運動学習理論などを駆使し、対象者を援助する。その際には、療法士のhands-onからhands-offへつなげていくように段階づけることが求められる。具体的な目標(課題)設定のなかで段階を経ながら成果を上げるためには意味のある運動の繰り返しでなければならない。そうして最終的に実用機能に結びつけることこそが重要である。

 

 

 

2. 認知神経リハビリテーション

手のリハビリ方法のふたつ目として、認知リハビリテーションをご紹介します。

 

  【概要】

 認知神経リハビリテーションは、あらゆる運動や行為の回復を病的状態からの学習とみなし、回復には目に見える運動や行為の背景にある認知過程の活性化が密接に関わるとしている。上肢機能の評価においても、随意運動の能力や動作分析といった一般的な運動や行為の観察に加えて、その内部にある認知過程の観察を行う。介入では上肢の視覚や体性感覚の認知を問う認知問題を提示する。認知問題では、感覚の予測(運動イメージ)と実際の感覚との比較照合により、運動学習を促す。

 脳卒中後の上肢運動麻痺に対する介入手段として、運動イメージの課題のエビデンスが確立されており、認知問題も運動イメージを用いて介入するという特徴がある。また、介入によるアウトカムとして、目に見える運動や行為のみならず身体意識(身体認知)をみるため、定量的評価のみならず対象者の言語に着目するという特徴がある。

 

 【認知理論に基づくリハビリテーション】

 認知神経リハビリテーションは、1970年代後半にイタリアの神経科医Carlo Perfettiによって提唱された認知理論に基づいたリハビリテーションである。Perfettiは、「脳損傷後の運動機能回復は、病的状態からの学習過程とみなすことができる。学習が認知過程(知覚・注意・記憶・判断・言語・イメージ)の発達に基づいているのであれば、運動療法もまた認知過程の発達に基づいていなければならない」と述べた。人は、脳で形成された運動プランに基づき運動が生じ、それにより環境との相互作用が起こり、そこで得られた情報をもとに脳で次のプランを形成するというつながりがある。すなわち、情報を収集する(認知する)ための手段として運動が要求され、身体は情報の受容表面となる。人の動きは、目に見える関節運動や筋収縮の連続であると同時に、知覚や認知の連続でもあり、この循環により学習が生じる。認知理論とは、認知過程を適切に活性化させることで学習を促進できるというものである。

 

 【運動学習のメカニズム】

 認知神経リハビリテーションでは、学習過程を考える際に、旧ソ連の神経生理学者PyotrAnokhinによる運動学習のメカニズムに着目した。このメカニズムでは、運動前野と補足運動野で想定される行為受納器(運動プラン)と求心性信号(感覚フィードバック)の情報を比較照合することが学習過程に不可欠であり、この過程を経て適切な運動プランが築きあげられるとされている。運動プランは、運動の予測制御として働き、期待される感覚フィードバックの予測であり、運動イメージの形成にも関連している。運動イメージとは、「ワーキングメモリによって再生される身体運動を伴わない心的な運動の表象」や、「運動を実際に発現する前に随意的かつ内的に運動をシュミレートする過程」と定義づけられている。そのなかでも、Anokhinの行為受納器に相当する運動イメージとは、運動を見ているような映像を想起する視覚イメージではなく、運動時に感じる筋感覚や皮膚感覚などといった体性感覚の知覚経験を想起する筋感覚(体性感覚)イメージを指す。認知神経リハビリテーションの介入は、この学習メカニズムに従い、感覚の予測(運動イメージ)と実際の感覚フィードバックを比較照合・誤差修正させることで運動学習を促すというものである。

 

 

参考文献 

作業で紡ぐ上肢機能アプローチp9899100110  医学書院