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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞リハビリシリーズ №1 「運動障害・歩行障害のガイドライン編」

2022/12/10

こんにちは長兄です。12月に入り一段と寒さを増してきた横浜。今まで書き続けてきた「マキ斗の拳」はしばらくお休みして、今週からは脳梗塞リハビリシリーズと称して、脳梗塞リハビリに関した記事を計52回に渡ってお送りしていきます。

なぜ52回?かは企業秘密・・・。

 

記念すべき第1回は脳梗塞リハビリのガイドラインについてお伝えしていきます。ひとつにガイドラインといってもたくさんの項目についてのガイドラインが存在しますが、今回は「運動障害」、「歩行障害」、に焦点を当てていきたいと思います。

 

 

1. 運動障害推奨

1 脳卒中後の運動障害に対して、課題に特化した訓練の量もしくは頻度を増やすことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
2 自立している脳卒中患者に対して、集団でのサーキットトレーニングや有酸素運動を行うよう勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
3 脳卒中後の運動障害に対する薬物療法の有効性は確立していない(推奨度C エビデンスレベル中)

 

解説

 脳卒中患者の運動障害は、片麻痺やバランス障害のみならず、不動による上下肢の筋萎縮や心肺持久力の低下などを原因とするが、実際にはこれらが混在することが多い。

 脳卒中患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)のメタ解析の結果として、反復した課題特化型の訓練は、標準的な訓練あるいはプラセボ介入に比べて、上肢機能、歩行距離、歩行機能をより大きく改善させること、そしてその改善は転倒などの有害事象をみることなく発症後6ヶ月まで持続することが確認された。

 脳卒中患者に対して、複数の訓練から構成されるサーキットトレーニングを集団で行うことで、歩行距離、歩行速度、バランス機能が有意に改善されることがRCTのメタ解析で示された。有酸素運動と筋力増強訓練を組み合わせた心臓リハビリテーションプログラムは、脳卒中患者の歩行速度、歩行機能、運動耐容能を有意に改善させ、さらには収縮期血圧と空腹時血糖を低下させた。しかしながら、脳卒中患者に対する心臓リハビリテーションプログラムが、脳卒中を含めた心血管疾患の発症予防につながるのか否かは明らかでない。

 脳卒中後の機能回復に関する薬物療法は、脳内神経伝達物質濃度を増加させることで機能回復の促進を目指している。RCTの結果として、デキストロアンフェタミンの投与は、脳梗塞発症3ヶ月後における運動機能回復を有意に大きくすることはなかった。脳卒中後の歩行不能患者に対して、レボドパとカルビドパの合剤であるコーカレルドパを訓練に加えて6週間投与したところ、歩行機能の改善はそれを投与されなかった群と同等であった。選択的セロトニン再取り込み阻害薬に関しても、RCTのメタ解析の結果より、脳卒中後の機能回復への有効性は示されなかった。

 

2. 歩行障害・歩行訓練(推奨)

1 歩行機能を改善させるために、頻回な歩行訓練を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
2 亜急性期において、バイオフィードバックを含む電気機器を用いた訓練や部分免荷トレッドミル訓練(PBWSTT)を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)
3 歩行可能な発症後早期脳卒中患者に対して、歩行速度や耐久性を改善するためトレッドミル訓練を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
4 歩行ができない発症後3ヶ月以内の脳卒中患者に対して、歩行補助ロボットを用いた歩行訓練を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)
5 下垂足を呈する脳卒中患者に対して、歩行機能を改善させるために機能的電気刺激(FES)を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)

 

解説

 頻回な歩行訓練が歩行速度や歩行耐久性を改善することは、明らかになっている。亜急性期脳卒中においては、バイオフィードバックを含む電気機器を用いた訓練や部分免荷トレッドミル訓練(PBWSTT)を行ったほうが、通常の歩行訓練よりも有効性が高い。ただし、亜急性期の重症患者に対するPBWSTTでは、有害事象が多いことに注意を要する。サーキットトレーニングは歩行速度を改善させるが、バランス機能や歩行機能全体に与える影響は明らかではない。歩行が自立している生活期患者に対する歩行訓練の強度決定については、一定の結論が得られていない。

 歩行可能な患者に対するトレッドミル訓練は、歩行速度、歩行耐久性、バランス機能を改善させる。しかしながら、通常に平地歩行訓練よりもトレッドミル訓練のほうが有効であることは確認されていない。

 ロボットを用いた歩行訓練は、機器が高額であるなどの理由でいまだ広まってはいないが、近年においてはその発展が著しい。歩行ができない発症後3ヶ月以内の脳卒中患者に対して、歩行補助ロボットを用いた歩行訓練を行うことで、歩行自立度の向上および歩行速度の改善がみられた。ロボットを用いることで早期からの反復歩行訓練が安全に施行可能となり、バランス機能も改善される。ただし、使用されるロボットは様々であるため、費用対効果を含めて継続した検討が必要である。バイオフィードバックや機能的電気刺激(FES)なども含めた装着型訓練装置のメタ解析では、ロボットを用いた訓練の有効性は明らかにされていない。

 歩行障害に対するFESの効果は、短下肢装具と同等である。特に、多チャンネルFESの導入による下肢運動機能の改善と機能的脳画像における脳の活動性改善が報告されている。ただし、FESを継続使用しても、それの装着が将来的に得られることは確認されていない。

 反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、急性期および生活期脳卒中患者の歩行能力や下肢運動機能を改善させると報告されており、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は歩行訓練と併用した場合に有効である。生活期脳卒中患者に対するバーチャルリアリティーを用いた歩行訓練は、歩行速度の増加、バランス機能の改善、筋緊張や筋力の改善をもたらすことが報告されている。

 

3. 歩行障害・装具療法(推奨)
1 脳卒中後片麻痺で膝伸展筋筋力もしくは股関節周囲筋筋力が十分でない患者に対して、歩行機能を訓練するために長下肢装具を使用することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル低)。
2 脳卒中後片麻痺で内反尖足がある患者に対して、歩行機能を改善させるために短下肢装具使用することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)

 

解説

 長下肢装具は亜急性期以後においても、膝伸展筋筋力はもしくは股関節周囲筋筋力が十分でない脳卒中後片麻痺患者の歩行訓練に用いられる。長下肢装具を用いることで麻痺側下肢の筋活動が促され、歩行時の下肢筋活動が正常パターンに近づき、下肢アライメントも改善される。脳卒中後片麻痺患者に対して長下肢装具を使用することで、立位バランス機能が改善するとの報告や、麻痺側下肢関節の屈曲伸展が促されるとの報告がある。また、重度感覚障害がある場合にも、長下肢装具が用いられる。しかしながら、長下肢装具を用いることで日常生活動作(ADL)が向上するとの報告はなく、生活期以後(在宅生活)で長下肢装具を使用することは多くはない。

 金属支柱付き短下肢装具の使用により、動的バランスの改善、麻痺側下肢による立位時間の延長、麻痺側下肢の振り出しの改善、麻痺側下肢の安定性の改善がみられる。また、金属支柱付き短下肢装具の使用は、麻痺側大腿四頭筋の筋活動を増加させる。プラスチック製短下肢装具の使用が、歩行速度を高めて歩行の安定性を改善させるという報告もある。短下肢装具を使用することで、立位バランスの左右対称性、1分間あたりの歩数、歩行速度が改善する。短下肢装具を処方された患者では、それを処方されなかった患者と比較して回復期リハビリテーション病棟入院中におけるADLの向上が大きかったとの報告もある。歩行困難な脳卒中患者に短下肢装具を使用すると、Functional Ambulation Categoriesで評価される歩行能力が改善して、患者の満足度も良好となる。

 

 

参考文献 

脳卒中治療ガイドライン2021p259263265  協和企画