VOL.31 4つの脳室と髄液を作る脈絡叢の構造 ~長兄small talk~
こんにちは長兄です。10月に入り朝晩は随分と涼しくなってきた横浜です。まだまだ日中の日差しは強いですが。今週の雨で季節が一気に秋へと進みそうですね。季節の変わり目、体調の変化にはくれぐれもお気を付け下さい。
さて、今回は脳室と髄液のお話です。
やわらかく脆弱な脳を保護しているのは、脳を包むクッションとなる髄液の存在です。その髄液を生成しているのが脳室内にある脈絡叢(みゃくらくそう)である。
【脳全体の発達に伴い脳室が形作られた】
脳には、脳室と呼ばれる空隙があり、脳脊髄液(髄液)で満たされている。
脳室は、脳の原型である神経管の内腔が発達したものである。脳の発達に伴い中心管が拡張し、神経管にくびれができると、第三脳室、第四脳室と、両者をつなぐ中脳水道が形成される。そして最後に、左右1対の脳室(側脳室)が作られる。
位置的には、大脳から脊髄にかけて順に、まず左右の側脳室があり、その下に第三脳室がある。中脳の部位には中脳水道という通り道があり、その後に第四脳室に至り、脊髄へと続いていく。
4つの脳室はそれぞれ独立しているわけではなく、すべてつながっている。左右の側脳室から第三脳室へと向かう狭い道路は、室間孔(モンロー孔)と呼ばれる。
【房状の脈絡叢で髄液が作られている】
脳室内には常に30ml、軟膜とクモ膜の間のクモ膜下腔は110mlの髄液で満たされている。この髄液を産生しているのが、脳室の内壁にある脈絡叢という部位である。
側脳室、第三脳室、第四脳室の内壁は、上衣細胞と軟膜で構成されているが、これらが毛細血管を伴って脳室内に突出したものが脈絡叢である。ここで髄液を産生し、脳室内に放出しているのである。
左右の側脳室脈絡叢は、室間孔を通じて第三脳室に向かい天井を覆う。第四脳室では、背側の下半分が脈絡叢である。
脈絡叢が産生する髄液の量は1日に約5000mlにおよび、その産生速度はほぼ一定である。したがって脳室やクモ膜下腔を循環する髄液は、1日3~4回入れ替わっていることになる。
【脳室の形の変化は診断時の大切な情報】
病気や頭部の怪我などで、脳のCTやMRIなどの画像診断をする際には、脳実質の状態だけでなく、脳室の形状や大きさも大切な診断材料となる。
疾患によっては脳室の形状そのものが変化するため、病巣部位や異常の原因などが推測できるのである。
たとえば脳に腫瘍ができると、成長した腫瘍がその圧力で脳室の形状を変えてしまう。外傷や脳出血などで血腫ができた場合も脳室の形状が変わる。
また、脳の萎縮を起こすアルツハイマー病や、脳室内に髄液が溜まってしまう内水頭症などの疾患は、脳室が著しく拡張するのが特徴である。そのため、CTやMRIで脳室の大きさを計測することが診断に非常に役立つ。
脳室には脈絡叢があり、髄液を産生して脳室内に放出している。脈絡叢は、脳を覆う軟膜と上衣細胞が毛細血管を引き込んで形成されたもので、脳室内にぶどうの房のように突出している。脈絡叢が産生した髄液は、脳室と脊髄を循環する。
引用引用文献
ぜんぶわかる 脳の辞典:p56,57 成美堂出版