VOL.28 体で覚える 小脳記憶のしくみ ~長兄small talk~
こんにちは長兄です。9月も半ばになりましたが、まだまだ暑さが残る横浜です。今回も前回に引き続き小脳についてのお話です。
~自転車の乗り方などをはじめ、頭ではなく体で覚えた記憶は、時間が経っても忘れない。こうした運動記憶は、小脳が担う最重要機能といえる~
【体で覚える 小脳記憶のしくみ】
体の動かし方は小脳で記憶されている
はじめてテニスやスキーなどのスポーツをすると、最初こそうまくラケットを扱えなかったり、転んだりするが、経験を積むと体が覚えていく。このような運動の学習は、小脳の働きによると考えられている。
小脳は皮質と髄質からなるが、皮質は3層構造である。最表層の分子層には、星状細胞とバスケット細胞という種類のニューロンが存在している。中間層はプルキンエ細胞層といい、巨大なプルキンエ細胞が樹状突起を分子層に伸ばしている。
最下層は、顆粒細胞とゴルジ細胞が存在する顆粒細胞層である。この層の顆粒細胞は、軸索を上方へと伸ばし、表層に至ると今度は表層と平行に伸びていく。これを平行線維といい、プルキンエ細胞層から伸びるプルキンエ細胞の樹状突起群を貫く。
記憶の鍵となるのはプルキンエ細胞
運動の調整にとくに重要な働きを担っているのが、このプルキンエ細胞である。
小脳皮質の5種類のニューロンのうち、出力している唯一のものがプルキンエ細胞の軸索で、小脳核などで終わり、抑制作用を及ぼす。このプルキンエ細胞に入力している、大脳皮質からの線維に、下オリーブ核から伸びる登上線維がある。
一方、プルキンエ細胞、5種類のニューロンのうち唯一の興奮性ニューロンである顆粒細胞からも入力を受ける。
この2つの興奮性入力系統からの刺激の組み合わせによっては、プルキンエ細胞に長期抑圧という現象が起こる。
顆粒細胞の平行線維とプルキンエ細胞の間で、1時間ほどの長期、伝達効率が低下するのである。
小脳皮質の機能的単位を「小脳チップ」という
このような小脳皮質のしくみにより、運動時のミスの信号が登上線維から伝導され、それが消去される。それによって誤った運動が修正され、適切な動き方が出来るようになると考えられている。
登上線維は小脳皮質の特定の小さな帯状領域に分布しており、その領域内に小脳核や下オリーブ核が、ひとつのユニットを形成している。
この複合体が、小脳チップ、あるいはマイクロゾーンや微小帯域などと呼ばれるもので、運動のトライ&エラーの調整機能を担っている。
引用文献
ぜんぶわかる 脳の辞典:p50,51 成美堂出版