VOL.22 なぜ、脳卒中後の片麻痺患者の肩関節は亜脱臼するのか? ~長兄のsmall talk~
こんにちは長兄です。本日も横浜からお送りしております。
今回は脳卒中後(脳梗塞)亜脱臼についての内容です。
脳血管障害は上下肢の麻痺が高頻度で生じる疾患です。その中でも、上肢の麻痺が重度な片麻痺患者の肩関節が亜脱臼していることが多く、上肢の機能回復を妨げる要因の1つといえます。
一般的に、肩関節の亜脱臼は、装具療法や電気刺激を併用した運動療法を行うことが多いと思いますが、必ずしも全ての片麻痺患者に効果があるわけではありません。
ここで重要なのは、単に「肩関節の亜脱臼」として一括りに解釈するのではなく、「肩関節の亜脱臼は何か」を評価することです。
- 棘上筋の機能
上腕骨を上方に持ち上げる作用のある棘上筋の筋緊張低下は、必然的に肩関節亜脱臼を引き起こす可能性を高める。肩甲骨が下方回旋していると棘上筋のベクトルが変化して、上腕骨頭が関節窩に合致せず亜脱臼になる。
- 片麻痺の亜脱臼は早期であれば改善する可能が高い
発症後6ヶ月以内で、麻痺が軽度であれば約4割が改善するとされている
- 肩関節以外の全身の身体機能、姿勢を総合する
亜脱臼に直接関係する肩甲上腕関節だけでなく、座位や立位など、日常生活で起こる様々な姿勢を考慮して亜脱臼の状態を評価していく。円背姿勢で小胸筋の筋活動が現れると、肩関節の亜脱臼を助長する方向に作用する。体幹の麻痺側側屈は関節窩が下方に向くため亜脱臼を助長する姿勢となる。
- 運動療法
ゼロポジションでの上肢の保持練習やリーチでの練習などの、肩関節への介入だけでなく姿勢の改善や生活の中での工夫などを踏まえて多角的に展開する。
引用文献
脳卒中運動学
監修 鈴木俊明
第1版第1刷