脳梗塞退院後の歩行を見守る|観察のポイントと整える順番
目次
脳梗塞退院後の歩行を見守る|観察のポイントと整える順番

退院後しばらくに起こりやすい「歩行のつまずき」を先に知っておく
退院後しばらくは、病院の中と家の中で条件が違います。家は安心できる反面、狭い場所、段差、急いで動く場面が多くなります。生活の中では「立つ」「曲がる」「急ぐ」「同時に考える(会話しながら歩くなど)」が重なりやすく、そこでバランスが崩れることがあります。
また、歩行の状態は日によって揺れることがあります。疲れのたまり方、睡眠、気温、薬の影響、気持ちの緊張など、いくつかの要素が重なると、同じ距離でも違って感じる場合があります。
大事なのは、悪い日があること自体を「失敗」と決めないことです。何が起きると崩れやすいかが分かってくると、手の打ち方が選びやすくなります。
まず見る3つ
意識・体力・足の出方の3点で見る
ここでいう観察項目は、診断をするためのチェックではありません。安全に暮らすための見守り材料です。最初に見るポイントを3つに絞ると、情報が増えすぎず、家族も続けやすくなります。
- 意識(いつもと比べてどうか)
ぼんやりしている、反応が遅い、会話がかみ合いにくい、急に眠気が強い、などは歩行の安全に影響することがあります。いつもと違う感じがあれば、歩行の練習より先に「今日は負荷を下げる日かもしれない」と考える材料になります。 - 体力(疲れ方のパターン)
歩ける距離そのものより、どの場面で疲れが出るかを見ます。午前は良いが午後に崩れる、外出のあと翌日に足が出にくい、食事や入浴のあとにふらつく、などです。疲れが出るタイミングは、負荷の上げ下げを決める手がかりになります。 - 足の出方(つまずき方の特徴)
片足が引っかかりやすい、歩幅が急に小さくなる、足が外に流れる、体が片側に寄る、止まりたいのに止まれない、など。細かい原因探しより、「どう崩れるか」を言葉にできると相談が早くなることがあります。
この3つを見ながら、次の章のように「家の中」「外出」の場面に分けて観察すると、整理しやすくなります。
家の中の歩行
立ち上がり・方向転換・トイレ動作
家の中の歩行は、距離が短い代わりに、動作が詰まっています。特に立ち上がり、方向転換、トイレ動作は、転倒につながりやすい場面です。
立ち上がり
- 椅子から立つときに、ふらっとする
- 立った直後に足が出ず、いったん止まる
- 立ち上がりで体が片側に寄る
こうしたときは、急いで歩き出すより、いったん立って呼吸を整えてから一歩目を出すほうが安全な場合があります。本人の感覚として「立った直後が怖い」があるなら、そこが最初の調整ポイントになります。
方向転換
- 曲がるときに足が絡む、体が先に回って足が遅れる
- 狭い場所で歩幅が急に小さくなり、詰まる
- 止まる→再スタートが苦手
方向転換は、歩行そのものというより、リズムの切り替えです。家族が見守るなら、「曲がる場所は急がない」「曲がる前にいったん止まる」など、場面の区切りを作る声かけが助けになる場合があります。
トイレ動作
- 尿意で急ぐと動きが雑になりやすい
- ズボンの上げ下げで片手がふさがり、バランスが崩れる
- 夜間は眠気と暗さで危ない
トイレは「急がない」が難しい場面です。ここは気合いで乗り切るより、明かり、手すり、動線、足元の物を減らすなど、環境で安全を上げるほうが現実的な場合があります。
外出時の歩行
段差・屋外の疲れ・注意がそれる場面
外出では、段差や坂、信号、視線の動きなど、見えない負荷が増えます。屋外で大事なのは、危ない場面を「避ける」ではなく、「条件を整えて通れるようにする」発想です。
段差・坂・信号待ち
- 段差でつま先が引っかかる
- 坂で体が前に持っていかれる/後ろに残る
- 信号待ちからの一歩目でふらつく
こうした場面では、疲れがまだ出ていなくても崩れることがあります。外出の観察は「距離」より「どの条件で崩れるか」を見ると、次の相談につながります。
注意がそれる場面
- 会話しながら歩くと足が止まる
- 買い物で周りを見ると、足元がおろそかになる
- 人混みで焦って歩くと、リズムが崩れる
退院後しばらくは、体の操作と注意の配分がまだ不安定なことがあります。本人が「歩くことに集中したい」と言うなら、家族はそれを尊重して、「話しかけない時間を作る」「急がせない」などの調整が助けになる場合があります。
休み方と負荷の上げ下げ
やり過ぎないための考え方
歩行が不安なとき、つい「歩かないと落ちる」と思いやすいのですが、退院後しばらくは、上げる日と下げる日を作るほうが続きやすい場合があります。目標は、毎日同じ量をやることではなく、転ばずに暮らしを回すことです。
休むのは後退ではなく調整
- 外出の翌日は家の中中心にする
- 疲れが強い日は、歩く前に座って整える時間を入れる
- 午後に崩れるなら、午前に用事を寄せる
休むときも「何もしない」一択にしないのがコツです。座って足を動かす、短い距離をゆっくり、など、負担が少ない形を選べると安心につながることがあります。
安全を上げる工夫(環境・道具・声かけ)
- 動線に物を置かない、足元のマットを見直す
- 夜間は照明を明るくする
- 外出は荷物を減らし、休める場所を先に決める
- 声かけは「急がないで」より「いったん止まろう」のように具体にする
こうした工夫は、能力を上げる努力というより、転びにくい条件を作る作業です。家族ができる支援としても現実的です。
受診・相談の目安と、相談につながる記録のコツ
歩行の不安があるとき、自己判断だけで抱え込むと疲れてしまいます。ここでは一般論として、相談の目安を短く整理します。
急ぐサイン(一般論)
- 急に片側の手足が動かしにくくなった、しびれが強くなった
- 言葉が出にくい、ろれつが回りにくい、会話がかみ合いにくい
- 急なめまい、意識が遠のく感じ、強い頭痛などが出た
こうした変化がある場合は、迷うときは救急要請(119)も含め、早めに医療機関へ連絡することが勧められます。
落ち着くこともあるサイン(一般論)
- 疲れた日は歩幅が小さくなるが、休むと戻る
- 特定の場面(曲がる、急ぐ、段差)でだけ不安定になる
- 環境を整えるとつまずきが減る感じがある
ただし、迷うとき/いつもと違う感じが続くとき/転びそうな場面が増えるときは、早めに医療者へ相談することが勧められます。
連絡先の優先順位(一般論)
- 急な神経症状が疑われる変化:迷う場合は救急要請(119)も選択肢になります
- 急ぎではないが生活が回りにくい:かかりつけ医、退院元の相談窓口、訪問看護や外来リハビリへ
- 介助方法や環境調整の相談:訪問看護、外来リハビリ、地域の相談窓口
横浜市青葉区にお住まいの方は、地域の相談窓口や医療・介護サービスの情報も含めて整理しながら進めると、家族の負担が偏りにくくなることがあります。
相談が早くなる観察メモ(いつ/どこで/何がきっかけ)
受診や相談の場で役立つのは、「うまくいかない理由の推測」ではなく、起きた事実のメモです。
- いつ:午前/午後/外出後/入浴後など
- どこで:廊下、トイレ前、玄関の段差、買い物中など
- 何がきっかけ:急いだ、曲がった、会話しながら、荷物を持った など
これがあると、訪問看護や外来相談で状況を共有しやすくなる場合があります。
📢 迷ったら、まず相談を
「これって脳梗塞かも…?」と感じたら受診のサインです。症状が突然・いつもと違うなら、ためらわず119番を。退院後のリハビリや在宅支援のご相談は、地域の医療機関・保健所・ケアマネジャーにお問い合わせください。
🗂 よくある質問
- 退院後しばらく、家の中でつまずくのはよくあることですか?
- 生活の動きに切り替わる時期は、狭い場所や方向転換で不安定になることがあります。まずは「どの場面で崩れるか」を観察すると整理しやすくなります。
- 「歩ける日」と「歩けない日」があるのは悪化ですか?
- 体力や睡眠、緊張などで揺れることがあります。休むと戻るか、特定の条件で崩れるか、などのパターンを見るのが一つの方法です。
- 家族は何を見ておくと相談が早いですか?
- 意識(いつもと違うか)、体力(どの場面で疲れるか)、足の出方(どうつまずくか)の3つを、短いメモにすると共有しやすくなります。
- 外出は控えたほうが安全でしょうか?
- 一律に控えるより、段差や休憩場所など条件を整えて、短時間から試すほうが合う場合があります。心配が強いときは専門職に相談すると安心です。
- トイレで急ぐと危ないのですが、どう考えればよいですか?
- 「急がない」が難しい場面なので、照明や手すり、動線など環境で安全を上げる発想が助けになる場合があります。
- 受診を急いだほうがよいのはどんなときですか?
- 急な片側の麻痺、言葉の出にくさ、強いめまい・意識の変化などがある場合は、一般論として早めの医療機関への連絡が勧められます。迷う場合は救急要請(119)も選択肢になります。
🔗 参考サイト
- 厚生労働省:脳卒中の治療と仕事の両立 お役立ちノート(PDF)
- AHA/ASA:成人の脳卒中リハビリテーション指針(2016)
- AVERT試験:超早期離床の検証(2015)
- AHA/ASA:Poststroke Depression 科学声明(2017)
- WHO:Rehabilitation 2030 initiative









