脳梗塞後の歩行トラブルを部位別に整理|生活を取り戻す順番
目次
脳梗塞後の歩行トラブルを部位別に整理|生活を取り戻す順番

退院後の「歩きにくさ」
退院してしばらく。家の中の動きには慣れてきたはずなのに、歩くときだけ不安が残る。
「昨日は大丈夫だったのに、今日はふらつく」「玄関の段差が怖い」「外に出ると急に足が重い」。本人も、見守る家族も、同じところで立ち止まりやすい時期です。
この時期の歩きにくさは、珍しいことではありません。ただ、理由が一つに決まるわけでもなく、説明が難しいのも事実です。
この記事では、脳梗塞の退院後しばらくに出やすい歩行の症状を、部位別(足・体幹・感覚)とタイプ別(麻痺・感覚・バランス・疲れ)で整理します。そのうえで、生活を戻す順番と、相談の目安を落ち着いて確認できるようにまとめます。
退院直後と「しばらく経ってから」で感じ方が変わることがあります
退院直後は、移動そのものが少なくなりがちです。ところが「しばらく経って生活が動き出す」と、歩く場面が急に増えます。買い物、通院、家事、仕事の準備。歩行の負荷が増えることで、歩きにくさが目立つ場合があります。
日によって波があるのも珍しくありません
また、症状には波があります。朝は重い、午後はふらつく、雨の日は慎重になる。こうした揺れだけで「悪化」と決めつけないことが大切です。一方で、いつもと違う急な変化がある場合は、早めの相談が安心につながります(目安は後半で整理します)。
足・体幹・感覚で見え方が変わる
歩行が不安定に見えるときでも、つまずき方やふらつき方には違いがあります。まずは大ざっぱに「どこが困っていそうか」を分けてみます。
足:力が入りにくい/つまずきやすい
- 足が前に出にくい、引っかかる
- つま先が上がりにくく、段差でつまずく
- 踏ん張りがきかず、片脚に体重を乗せにくい
このタイプは、歩幅が小さくなったり、すり足っぽくなったりしやすいです。
体幹:ふらつく/立ち直りに時間がかかる
- まっすぐ立っているつもりでも、揺れる
- 方向転換で体が遅れてついてくる感じがある
- 立ち直るのに時間がかかる
このタイプは「ふらつく」「怖い」が前面に出やすい一方、足の力そのものは保たれている場合もあります。
感覚:しびれ/位置が分かりにくい感じ
- しびれ、触った感じの鈍さ
- 足の位置が分かりにくい(地面を捉えにくい)
- 左右差が自分では捉えにくい
感覚は本人の中で起きていることが多く、周囲から見えにくいのが特徴です。本人が「言葉にしづらい違和感」を抱えている場合があります。
ここで大事なのは、どれか一つに決めないことです。足・体幹・感覚は、混ざっていて普通です。「うちはどれだろう?」と荒く当てはめるだけでも、次の一手(生活の戻し方)が組み立てやすくなります。
麻痺・感覚・バランス・疲れが混ざること
歩行の問題は、部位だけでなく「仕組みのタイプ」でも重なります。
ひとつに決めつけない
混ざっていて普通です。
麻痺が関係する場合
力が入りにくい、動かすタイミングが遅れる、といった形で出ることがあります。見た目に分かりやすい反面、本人は努力しているのに動きが追いつかず、焦りにつながりやすいです。
感覚が関係する場合
力は出せても、足がどこにあるかが掴みにくいと、歩くたびに「確かさ」が減ります。結果として、慎重になり、動きが固くなることがあります。
バランスが関係する場合
方向転換、片足立ちに近い瞬間、段差などで不安定さが出やすいです。家族が「転びそう」と感じるのは、このタイプが多いかもしれません。
疲れやすさが関係する場合
退院後しばらくは、体力の土台が落ちていることがあります。集中力が落ちると歩行の質も下がりやすく、午後にふらつく、外出で急に重くなる、といった形で出る場合があります。
家族が見て分かる変化/本人しか分からない変化
本人しか分からないサイン(例:地面が遠い感じ、足裏の情報が薄い感じ)と、家族が見て気づくサイン(例:歩幅が急に小さくなる、手すりに頼る)が両方あります。家庭内では「どっちが正しいか」ではなく、「両方の情報を持ち寄る」方が安全です。
安全を確保してから少しずつ広げる
退院後の歩行は、「頑張って増やす」よりも「安全に増やす」が軸になります。順番のイメージは次の通りです。
まずは転倒を減らす条件づくり
まずは転倒のリスクを減らすことが優先です。転倒は本人の自信を削り、動くことへの怖さを強めやすいからです。家の中なら、手を添えられる場所、掴める家具の配置なども含めて「安全の条件」を整えます。
短い距離→屋内の課題→屋外の課題
短い距離から
歩行量は、まとまった距離より「短くても回数を分ける」方が続けやすい場合があります。疲れが溜まりきる前に休む、を最初から許可しておくと、フォームの崩れも減りやすいです。
屋内の課題へ(方向転換、狭い場所)
トイレ、洗面所、台所などは狭く、方向転換が多い場所です。ここが不安定だと生活全体が縮みやすいので、屋外に出る前に屋内の動きを整える意味があります。
屋外の課題へ(段差、歩道、横断歩道)
屋外は情報量が増えます。段差、人混み、信号、荷物。いきなり「以前の生活」に戻そうとすると、怖さが先に立ちやすいです。外出は短時間から、時間帯やルートを選ぶなど、条件づけが役立つ場合があります。
この順番は「必ずこうしなければならない」ではありません。ただ、混乱しやすい時期だからこそ、戻し方に筋道があると気持ちが落ち着きやすくなります。
環境と休み方で「歩き方」を守る
家での工夫は、大きく分けて2つです。環境を整えることと、休み方で負荷を調整することです。
家の中の危険ポイントを減らす
環境づくり(転倒を減らす)
- 床に物を置かない動線を作る(特に廊下と寝室まわり)
- 小さな段差やマットのめくれを減らす
- 夜間の移動に足元灯を用意する
- 必要なら手すりや滑り止めを検討する
「頑張る」より先に「転びにくい」へ寄せるのが、回り道に見えて近道になることがあります。
休み方と負荷調整(やりすぎ・やらなさすぎを避ける)
歩行は、疲れてくると崩れやすい動作です。崩れたまま繰り返すと、怖さや痛みにつながる場合があります。
- 疲れきる前に小休憩を入れる(体調に合わせて)
- 外出の翌日は、量や時間を少し控えることもあります(連日で増やしすぎない)
- 午後にふらつきやすい日は、無理のない時間帯に用事を分けることもあります
こうした調整は「サボり」ではなく、安全に続けるための工夫です。
記録のコツ(何が増えるとつらいかを見える化)
もし可能なら、1週間だけでよいのでメモを残します。
- 歩いた場面(屋内/屋外、段差、方向転換)
- その日の体調(睡眠、疲れ、気分)
- 困ったこと(つまずき、ふらつき、怖さ)
このメモは、相談するときに役立つ場合があります。「何が増えると崩れるか」が見えてくるからです。
受診・相談の目安と、横浜での相談先の考え方
最後に、相談の線引きを短く整理します。ここは自己判断を強めるためではなく、「迷ったまま抱え込まない」ための目安です。
急な変化があるときは早めに医療機関へ
早めに相談が役立つことがある変化(一般論)
- いつもと違う急な症状の変化が出た
- 転倒が増えた、または転びそうな場面が明らかに増えた
- 強い痛み、息切れ、胸の苦しさなどが歩行中に目立つ
- 急に話しにくい、顔の左右差、力の入りにくさが強まった感じがある
このうち、突然の片側の力の入りにくさ、ろれつが回らない、顔の左右差などが出た場合は、救急要請(119)を含めて速やかに対応してください。また、強い胸の痛みや強い息切れが急に出た場合も、救急要請(119)を含めて早めに相談してください。転倒が増えるなどの変化は、早めに主治医やリハビリの担当者へ相談すると整理しやすい場合があります。
迷うときの相談先:主治医/訪問リハ/外来リハの使い分け
相談先の考え方
- 主治医:体の変化の確認、薬や既往も含めた全体の相談
- 訪問リハ:生活の場(家)の中での安全づくり、動線や環境の調整
- 外来リハ:歩行の評価、練習計画、段差や方向転換など課題に合わせた練習の組み立て
「歩行の困りごとが続く」「転倒が怖い」「家での練習が不安」というときは、外来リハで評価と練習計画を相談すると整理しやすい場合があります。横浜市青葉区周辺でも、通院の負担や生活の状況に合わせて選べることがあります。
📢 迷ったら、まず相談を
「これって脳梗塞かも…?」と感じたら受診のサインです。症状が突然・いつもと違うなら、ためらわず119番を。退院後のリハビリや在宅支援のご相談は、地域の医療機関・保健所・ケアマネジャーにお問い合わせください。
🗂 よくある質問
- 退院後しばらくしてから歩きにくさが目立つのは、悪化ですか?
- 日常の活動量が増えることで、歩きにくさが目立つ場合があります。波があることも多い一方、急な変化があるときは医療機関へ相談する方が安心です。
- 歩きにくさは「足の力不足」だけが原因ですか?
- 足の力だけでなく、体幹の安定、感覚の分かりにくさ、バランス、疲れやすさなどが関係する場合があります。混ざっていることも珍しくありません。
- つまずきが増えたとき、まず何を見直せばいいですか?
- 室内の段差や床の物、マットのめくれなど、環境要因から見直すと安全につながりやすいです。あわせて「疲れてくると増えるか」も確認すると整理しやすくなります。
- ふらつくときは、歩く量を減らした方がいいですか?
- 一時的に量や条件を調整するのは、続けるための工夫になる場合があります。疲れきる前に休む、短い距離を分けるなどで負担を調整し、必要があれば専門職に相談すると安心です。
- どんな変化があれば早めに相談した方がいいですか?
- いつもと違う急な変化、転倒が増えるなどは、早めの相談が役立つことがあります。突然の片側の力の入りにくさ、ろれつが回らない、顔の左右差などが出た場合は、救急要請(119)を含めて速やかに対応してください。また、強い胸の痛みや強い息切れが急に出た場合も、救急要請(119)を含めて早めに相談してください。
- 外来リハでは何を相談できますか?
- 歩行の評価、課題(段差・方向転換など)の整理、家での練習量の組み立てなどを相談できる場合があります。生活状況に合わせた計画づくりが目的になります。
🔗 参考サイト
- 厚生労働省:脳卒中の治療と仕事の両立 お役立ちノート(PDF)
- AHA/ASA:成人の脳卒中リハビリテーション指針(2016)
- AVERT試験:超早期離床の検証(2015)
- AHA/ASA:Poststroke Depression 科学声明(2017)
- WHO:Rehabilitation 2030 initiative
免責
本記事は一般的な情報であり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
症状が強い、急な変化がある、転倒が増えるなど心配がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。突然の片側の力の入りにくさ、ろれつが回らない、顔の左右差などがあるときは救急要請(119)も検討してください。強い胸の痛みや強い息切れが急に出た場合も、救急要請(119)を含めて早めに相談してください。









