VOL.17 「報酬系と精神依存」 ~長兄のsmall talk~
こんにちは長兄です。今回も横浜からお届けして参ります。前回に引き続き真面目なお話第2弾です。
「苦労なく得られる快楽が依存症を引き起こす」
何かに依存してしまうことには、脳の「報酬系」とよばれる、神経の回路が深く関係している。報酬系は、人に快楽(喜び)をもたらす神経回路だ。たとえば、がんばって勉強したテストで高得点をとり、親や友人から褒められると、報酬系の神経細胞(ニューロン)どうしで、「ドーパミン」とよばれる神経伝達物質のやりとりがおき、その結果、快楽を覚える。すると、勉強と快楽が結びつけられる「学習」がおき、ふたたび勉強しようと思うようになるのだ。依存症を引き起こすような薬物を摂取した場合、報酬系が強制的に興奮させられ、がんばらなくても快楽が得られる。すると、薬物と快楽を結びつける学習がおき、ふたたび薬物を摂取したいと思うようになってしまう。そして、薬物の摂取を繰り返すうちに、今度は脳が“快楽に”“慣れて”しまい、それがないときに強い不快感を覚えたり、薬物のことをつねに考えたりするようになるのだ。このような状態を「精神依存」とよぶ。ギャンブルやゲームなど、簡単に達成感が得られる(ドーパミンが出る)ような行為でも、同様に報酬系で学習がおき、精神依存が引き起こされる可能性がある。
- コカインはドーパミンの回収を防ぐ
ドーパミン神経細胞から出たドーパミンが、別の神経細胞のドーパミン受容体にくっつくと、最終的に快楽を感じる。中枢神経興奮薬の一つであるコカインは、放出されたドーパミンを回収する「ドーパミントランスポーター」のはたらきを阻害することで、ドーパミンが受容体に到達する量を増やす。
- ニコチンはドーパミンの放出を促進する
タバコを吸うと、中枢神経興奮薬の一つである「ニコチン」が血管を通って脳に届く。こうしてニコチンがドーパミン神経細胞のニコチン受容体とくっつくと、ドーパミンの放出が促進され、快楽を覚える。
- アルコールやヘロインはドーパミンの分泌の“ロック”を解除する
ドーパミン神経細胞の隣には、GABAという物質を介してドーパミン神経細胞の働きを抑え、“ロック”する神経細胞がある。中枢神経抑制薬であるアルコールやヘロインは、この神経細胞の働きを抑える(“ロック”を解除する)働きをもち、ドーパミンの放出量を間接的に増やす。
Newton別冊
最前線の研究で解明された脳のしくみや知能、身近な病気
脳とは何か改訂版第2版より引用