VOL.27 小脳での感覚・運動ネットワーク ~長兄のsmall talk~
こんにちは長兄です。本日も横浜からお届けして参ります。暑かった8月も終わり今日から9月。ここ数日は秋の陽気で過ごしやすかった横浜ですが、まだまだ残暑が厳しいです。さて今日は小脳についてのお話です。
【小脳での感覚・運動ネットワーク】
前庭小脳・脊髄小脳は運動の調整、平衡感覚に関与
原小脳である前庭小脳は、体の平衡、とくに体軸の維持に関わる。
内耳の前庭器から受け取る情報は、頭部の位置と傾きについてである。この情報は、前庭神経から下小脳脚を通り、片葉小節葉に入る。片葉小節葉に直接入る場合もあるが、前庭神経核でニューロンを代える場合もある。片葉小節葉に入った情報は、白質層に存在する室頂核に伝導される。
古小脳である脊髄小脳は、運動の際に体幹や四肢の筋肉の緊張を調節したり、姿勢の維持に関わる。
脊髄小脳は、位置や運動の感覚、体に感じる抵抗などの全身の深部感覚を、脊髄を介して受け取る。下半身の深部情報は脊髄の側索を通り、上半身の情報は脊髄の後索路を通り、虫部と傍虫部に入る。
大脳との連携で運動のプログラム化をサポート
橋小脳、小脳半球にあたる新小脳は、前頭葉や頭頂葉など大脳皮質の広い領域から情報を受け取る。
大脳皮質からの神経線維は、脳幹の橋にある橋核でニューロンを代えてから、小脳半球に出力する。この伝導路は、左右で約2000本もの軸索を含んでいる。これは左右の錐体路の合計の20倍以上という太さである。
大脳皮質からの出力は、小脳の髄質に存在する歯状核で統合され、その後視床の視床外側腹側核を経由し、大脳皮質の運動野に向かう。すなわち大脳皮質から小脳、小脳から大脳皮質への伝導路を形成している。大脳皮質に情報をフィードバックしながら、具体的な運動プログラム、すなわち実際の動きかたを体得するのである。
小脳核を介して情報が入力・出力される
第四脳室の天井に近い小脳半球の髄質には、外側から順に、歯状核、栓状核、球状核、室頂核の4対の核がある。
もっとも大きいのが歯状核で、しわの多い不規則な形状が延髄下のオリーブ核に似ているため、小脳オリーブとも呼ばれる。室頂核は、第四脳室の天井部に接して存在する球形の核、栓状核と球状核は、その名の通りの形状である。これらの核はいずれも、小脳皮質からの線維の中継場所であり、小脳からの出力はほとんどここから行われている。
小脳へ入力する求心性線維には2種類ある。下オリーブ核からの登上線維と、脊髄、前庭神経核、網様体、橋核などからの苔状線維である。どちらも最後は小脳核で終わる。そして小脳核で、小脳皮質からの線維と接合する。
結局、体の位置情報や深部感覚は、小脳核で統合され、その後大脳皮質へと出力されるのである。
引用文献
ぜんぶわかる 脳の辞典:p48,49 成美堂出版