脳梗塞の退院後、家族の「見落としたら怖い」を減らすために
目次
脳梗塞の退院後、家族が「見落としたら怖い」を減らすために

退院後の不安は普通の反応
退院直後は、本人も家族も「いま何が普通で、何が異常か」の物差しがまだ育っていません。昨日より少ししびれが強い、今日は表情が暗い、言葉が出にくい気がする。こういう小さな揺れがあると、頭の中で警報が鳴り続けます。
まず言っておきたいのは、ここで必要なのは根性ではなく「判断の軸」です。軸があると、落ち着いて相談できるし、逆に本当に危ないときは迷わず動けます。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
赤旗 迷わず受診・救急
次のような変化は、様子見よりも医療機関への相談を優先してください(救急要請を含みます)。
急に片側の力が入りにくい/急にろれつが回らない/急に片側のしびれが強くなる/突然の激しい頭痛/意識がぼんやりする、反応が鈍い/歩けないほどの脱力/排尿・排便の異常が急に出る、など。
このパートでは細かい知識よりも、「危ないときは早めに動く」ことを土台に置きます。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
判断の軸 3つ
退院後の不安を減らすために、家族が持っておくと役に立つ軸は次の3つです。
- 今すぐ相談(赤旗)か、早めに相談か
- 今日の負荷を下げる(休む・減らす)べきか、いつもどおりでいいか
- 次の受診やリハビリで何を聞くか(メモに残すか)
この3つがそろうと、情報の波に飲まれにくくなります。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
退院後に起こる気分の揺れ
脳梗塞のあとに残る変化は、筋力や感覚だけではありません。疲れやすさ、注意力の落ち込み、気分の揺れ、眠りの質の低下なども含まれます。
さらに、退院後は生活が一気に広がるので、病院では目立たなかった困りごとが表に出ます。家の段差、トイレ動作、入浴、外出、電話や手続き。できない場面が増えるほど、本人も家族も緊張しやすくなります。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
変化を3つに分ける
不安が強いと、どんな変化も「再発かも」に見えてしまいます。ここで役に立つのが、変化を次の3つに分けて見る方法です。
- A)急に出た(短い時間でガクッと変わった)
- B)いつもより強いが、休むと戻る・波がある
- C)じわじわ増えている(数日〜数週間で右肩上がり)
Aは赤旗になりやすいので、相談の優先度が上がります。Cも「様子見一択」ではなく、早めに相談の候補です。Bは生活負荷や睡眠、気分、環境が関係していることもあります。
ここで重要なのは、原因を断定することではなく、相談の優先順位を決める材料にすることです。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
再発予防は手順で
再発予防は大事ですが、恐怖で固めると続きません。家族ができる実用的な方向性は、まず「受診で確認すること」と「家でやること」を分けることです。
受診で確認すること:最近の変化の意味、次の受診の目安、生活で避けたい動きや状況。
家でやること:休む日を作る、転倒しにくい動線にする、生活の手順を減らす、困りごとをメモする。
この分け方があると、家で抱え込む量が減ります。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
受診時に伝わりやすい観察ポイント
家族の不安が強いと、「とにかく心配で…」になりやすいのですが、医療側に伝える情報が整うほど、対応も判断も早くなります。ここでは、専門用語ではなく“場面”で整理します。
困りごとメモ(3点)で十分
次の3つだけ書いてください。長文は不要です。
- 症状:何が、いつから、どう変わったか(急に/じわじわ/波)
- 生活:どの場面で困るか(例:トイレ、入浴、外出、会話、段差など)
- 不安:何がいちばん怖いか(再発の心配、転倒、眠れない、介護が回らない等)
この3点がそろうと、受診でもリハビリでも「次に何をするか」が決まりやすくなります。
家でできる安全なチェックは変化の有無を見るだけ
家でできるのは診断ではありません。おすすめは「変化の有無」を拾うことだけです。
例:話し方が急に変わった気がする、表情が急に左右で違う気がする、歩き方が急に崩れた、転びそうが増えた、飲み込みが急に不安定になった気がする。
こうした“いつもと違う”がはっきりしているほど、相談の優先度が上がります。迷うときは、赤旗に当てはまるかを先に見てください。
横浜市で生活が始まるなら、相談先も地図にしておく
退院後は、本人の状態だけでなく、家族の相談導線も大事です。横浜市のように支援窓口が多い地域ほど、どこに相談するかが分からず詰まりがちです。
主治医・外来、リハビリ先、ケアマネジャー、地域包括支援センターなど、まずは「最初の連絡先」を1つ決めておくと安心が増えます。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
家のリハビリは減らしても続ける
退院後の在宅は、がんばりどころが多すぎます。だからこそ、家のリハビリは「増やす」より「減らして続ける」が基本です。ここでの目的は、完璧なメニューを作ることではなく、日々の波に合わせて安全に続けることです。
中止条件を先に決める
セルフケアや運動は、悪化サインが出たら中止できる形にしておきます。
例:痛みやしびれが明らかに増える/力が入りにくくなる感じが強まる/歩行が不安定になる/熱っぽさや強い全身不調が出る/排尿・排便の異常が出る、など。
中止条件を先に決めておくと、家族も本人も「やったほうがいいのに怖い」の葛藤が減ります。
今日の小さな手順
今日やることは、運動を増やすことではなく「相談が前に進む準備」です。手順はこれだけです。
- 症状の変化を1行(急に/じわじわ/波)
- 生活で困る場面を1つ
- いちばん怖いことを1つ
この3点を、次の受診やリハビリの場でそのまま渡してください。家族が言葉に詰まっても、メモが話を前に進めます。
「頑張りすぎ」を減らす生活の工夫
生活の工夫は、立派な介護技術よりも「引っかかる場面を減らす」ことが効きます。
例:よく使う物を手の届く高さへ/動線に物を置かない/急がせない時間の作り方を決める/疲れやすい時間帯は予定を詰めない。
家族ができるのは、本人の努力を増やすことではなく、努力が必要な場面を減らすことです。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
家族の負担を軽くする
家族が疲れてくると、正しいことが続かなくなります。ここは気合ではなく設計です。
責めない言い方に変えると、リズムが戻る
「なんでできないの?」は本人にも家族にもダメージが大きい言葉です。代わりに、場面に寄せた言い方に変えてみてください。
例:「今日はここが難しかったね。次はどこを減らす?」
うまくいかない日の扱い方が柔らかくなると、本人の落ち込みも家族のイライラも減りやすくなります。
抱え込まない導線:家族も相談していい
本人の相談先は想像しやすいのに、家族の相談先は後回しになりがちです。家族が限界に近づく前に、ケアマネジャーや地域の相談窓口など「家族が相談していい場所」を使ってください。
困りごとメモは、本人のためだけではなく、家族の負担を説明する材料にもなります。
📌 要点
🪶 日常へのアドバイス
まとめ 迷いを減らす
退院後の不安を減らすコツは、全部を理解することではなく、判断の軸を先に持つことです。赤旗があるときは迷わず医療につなぐ。赤旗ではないけれど不安が続くときは、「急に/じわじわ/波」で変化を整理し、困りごとメモ(症状・生活・不安)を持って相談する。家での工夫は、本人の努力を増やすより、努力が必要な場面を減らす。家族も抱え込まず、相談先を地図のように決めておく。この順番で進めると、「様子見でいいのか」が少しずつ言葉になります。
📢 迷ったら、まず相談を
「これって脳梗塞かも…?」と感じたら受診のサインです。症状が突然・いつもと違うなら、ためらわず119番を。退院後のリハビリや在宅支援のご相談は、地域の医療機関・保健所・ケアマネジャーにお問い合わせください。
🗂 よくある質問
Q:
退院後、少ししびれが強い気がします。すぐ受診した方がいいですか?
A:
まずは「急に強くなったか」「他の変化(言葉、顔、歩き、意識など)が一緒に出たか」を見てください。急な変化や赤旗が疑われるなら、様子見より相談を優先してよい場面があります。急ではなく波がある場合でも、不安が続くなら困りごとメモを作って早めに相談すると話が進みやすいです。
Q:
家でできるリハビリは、何をどれだけやればいいですか?
A:
まずは「続く形」を優先してください。やることを増やすより、毎日ゼロになりにくい形にするほうが安全で現実的です。安全のために中止条件(悪化や新しい症状、強い体調不良など)を先に決め、迷ったら医療やリハビリの担当者に確認する流れを作るのがおすすめです。
Q:
本人が落ち込みやすく、家族も声をかけるのが怖いです
A:
落ち込みは「気持ちの問題」だけで片づけにくく、退院後の環境変化や疲れやすさが影響することがあります。家族ができるのは、評価や説得より「困る場面を減らす」「次に相談する材料を整える」ことです。責めない言い方に変えるだけでも、衝突が減ってリズムが戻ることがあります。
Q:
どんなときに救急を考えるべきですか?
A:
急な麻痺、急なろれつの乱れ、急な片側のしびれの増強、突然の激しい頭痛、意識がぼんやりする、歩けないほどの脱力、排尿・排便の異常などは、迷うより相談を優先してよいサインです。判断に迷うときは「急に」「いつもと違う」があるかを手がかりにしてください。









