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脳梗塞リハビリ リバイブあざみ野

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脳梗塞とくも膜下出血を正しく知るための安心基礎入門ガイド

2025/11/24


脳梗塞とくも膜下出血を正しく知るための安心基礎入門ガイド

🧠脳梗塞とくも膜下出血はどんな病気か

「脳卒中(のうそっちゅう)」という言葉は耳にしたことがあっても、「脳梗塞」と「くも膜下出血」の違いをきちんと説明できる方は多くありません。どちらも脳の血管のトラブルで起こる病気ですが、原因も症状の出方も、治療の考え方も少しずつ異なります。

まず大きなくくりとして、脳卒中は「脳の血管が詰まるタイプ」と「脳の血管が破れて出血するタイプ」に分けられます。前者の代表が脳梗塞、後者の一つがくも膜下出血です。脳梗塞は、動脈硬化や心臓の病気などを背景に、脳の血管が血のかたまり(血栓)やコレステロールのかたまりなどで細くなったり、詰まったりすることで起こります。その結果、その先の脳の細胞に血液が届かず、酸素や栄養が不足して障害されてしまいます。

一方、くも膜下出血は、脳の表面近くを走る動脈にできた「血管のこぶ(脳動脈瘤)」が破れることで起こることが多い病気です。脳は、外側から順に硬膜・くも膜・軟膜という膜に包まれていますが、このうち「くも膜」と「軟膜」のすきま(くも膜下腔)に突然血液が広がり、脳全体を強く刺激します。そのため、「人生で経験したことのないような突然の激しい頭痛」が典型的なサインとして知られています。

どちらの病気も、発症した直後の対応が命やその後の生活に大きく影響します。脳梗塞では発症から数時間以内に行える治療があり、くも膜下出血では「再出血」を防ぐための緊急の処置が重要になります。「これは様子を見ていいのか、それともすぐ119番なのか」と迷う場面があるかもしれませんが、脳卒中に関しては「迷ったら救急車」が基本と考えてよい病気です。

この記事では、脳梗塞とくも膜下出血の違い・症状・検査・治療・予防について、できるだけ専門用語をかみくだきながら整理していきます。ご本人だけでなく、ご家族や介護をされている方が「いざというときにどう動くか」を考える手がかりになれば幸いです。

📌 要点

脳梗塞は脳の血管が詰まって起こる病気、くも膜下出血は脳表面近くの血管のこぶ(動脈瘤など)が破れて出血する病気であり、どちらも発症直後の対応が命と生活に大きく影響する。

🪶 日常へのアドバイス

「脳梗塞」「くも膜下出血」という言葉だけでも区別して覚えておくと、ニュースや診察室で説明を受けたときに理解しやすくなり、いざというときの判断にも役立ちます。

🚨脳梗塞とくも膜下出血の症状・前兆サイン

「実際に起こると、どんなふうに症状が出るのか」がいちばん気になるところだと思います。脳梗塞とくも膜下出血では、症状の出方にも特徴があります。ここでは、「どんなサインが出たら脳卒中を疑うべきか」を整理していきます。

🧭脳梗塞の典型的なサイン

脳梗塞は、「脳のどの場所に血液が行かなくなったか」によって症状が変わりますが、代表的なものとして次のようなサインが知られています。

  • 顔の片側がゆがむ(口角が下がる・笑うと左右差が目立つ)
  • 片方の手足に力が入らない・しびれる
  • うまく話せない・言葉が出にくい・ろれつが回らない
  • 言われていることが理解しづらい
  • 片方の視野が欠ける・物が二重に見える
  • ふらついて立てない・まっすぐ歩けない

こうした症状は、突然または数分〜数時間のうちに急に現れることが多いです。痛みをあまり伴わないこともあり、「少し疲れているだけかな」「しばらく休めば治るかも」と様子を見てしまう方も少なくありません。しかし、脳梗塞では発症からの時間が治療の可否に直結します。「片側の顔・手足・ことば・視野」のいずれかがおかしいと感じたら、迷わず救急要請を検討すべきサインです。

🔍くも膜下出血のサイン

くも膜下出血では、「これまで経験したことのない突然の激しい頭痛」がもっとも典型的な症状として知られています。多くの方が「バットで殴られたような」「いきなり雷が落ちたような」と表現するような強い頭痛です。痛みは後頭部〜頭全体に及び、首の後ろの痛みや、光がまぶしく感じる症状を伴うこともあります。

同時に、次のような症状がみられることがあります。

  • 吐き気・おう吐
  • 意識がもうろうとする・呼びかけに反応しづらい
  • けいれん
  • 急な脱力・しびれ・言語障害

ただし、一部では「最初は軽い頭痛だけ」「ピリッとした違和感が何度か続いた」など、いわゆる「警告頭痛」と呼ばれる段階から始まるケースもあります。この時点で受診できれば、動脈瘤が完全に破裂する前に治療の方針が立てられる可能性があります。「いつもと明らかに違うタイプの頭痛」が突然起こった場合には、「頭痛だけだから」といって自己判断で様子を見ないことが重要です。

脳梗塞とくも膜下出血はいずれも、「症状が出た瞬間」が勝負です。曖昧であっても、「もしかして」と感じたなら、かかりつけ医よりもまず救急要請を優先した方がよい状況が少なくありません。

📌 要点

脳梗塞は顔や手足・ことば・視野など「からだの片側の突然の変化」が典型で、くも膜下出血は「経験したことのない突然の激しい頭痛」が代表的なサインであり、いずれも発症時刻が分かることと早期の救急受診が重要になる。

🪶 日常へのアドバイス

家族と一度、「顔のゆがみ・片側の手足の脱力・言葉が出ない・突然の激しい頭痛があったら119番」というルールを共有しておくと、迷う時間を減らすことができます。

🧪脳梗塞とくも膜下出血はどうやって見つける?

「救急車で運ばれたら、そのあといったい何をされるのだろう」と不安に感じる方は多いと思います。脳梗塞やくも膜下出血が疑われるとき、病院では「本当に脳卒中かどうか」「どのタイプか」「今どこまで進んでいるか」を、時間との勝負で確認していきます。

最初の入口は、医師や看護師による問診と神経学的な診察です。いつから症状が出たのか、どんな経過で悪くなったのか、持病や飲んでいる薬(特に血液をサラサラにする薬)などを確認しながら、顔のゆがみ・手足の力・感覚・言葉・視野などを丁寧にチェックします。ここで「発症時刻」がはっきりするかどうかは、その後の治療(特に血栓を溶かす薬を使えるかどうか)に大きく関わってきます。

🔍CTとMRI、それぞれの役割

脳卒中が疑われたとき、多くの病院で最初に行われるのが頭部CTです。CTは数分程度で撮影でき、頭の中に出血がないかをすばやく確認するのに優れています。くも膜下出血では、くも膜の下にたまった血液が白く写るため、発症から時間があまり経っていない場合には診断の決め手になります。

一方、MRIは、脳の構造や血流の状態をより詳しく見ることができ、特に脳梗塞の診断に役立ちます。DWIと呼ばれる撮影方法では、発症から間もない脳梗塞のサインが強く写り、どの範囲まで障害されているかを確認することができます。また、MRAなどの血管の画像を組み合わせることで、「どの血管がどの程度狭くなっているか」「詰まっているポイントはどこか」を推定します。

ただし、救急現場では「一刻も早く治療に進む」ことが何より大切です。病院によっては、CTを中心に評価しながら、その場で血管内治療(カテーテル治療)に進む流れを整えているところもあります。検査の組み合わせや順番は施設ごとにやや違いますが、「出血かどうかを急いで見分ける」「治療の可否を早く判断する」という目的は共通しています。

📝そのほかの検査:血液・心臓・血管

脳梗塞やくも膜下出血の原因を探るために、画像検査だけでなく、血液検査・心電図・心臓エコー・頸動脈エコーなどが行われることもあります。

  • 血液検査:コレステロール・血糖・炎症反応・凝固機能などを確認
  • 心電図・心エコー:心房細動など、不整脈や心臓の病気が原因になっていないかを調べる
  • 頸動脈エコー:首の動脈の狭窄やプラーク(コブ状の固まり)の有無を確認

こうした検査は、再発を防ぐ「二次予防」を考えるうえでも重要です。「なぜこの脳梗塞が起きたのか」「くも膜下出血の原因になった動脈瘤は他にもないか」をできるかぎり明らかにしておくことで、その後の治療方針や生活上の注意点が変わってきます。

「検査がたくさんあって不安だ」と感じるかもしれませんが、ほとんどは短時間で終わり、痛みを伴わないものが中心です(カテーテル検査など一部を除きます)。わからないことがあれば、その場で「これは何のための検査ですか?」と遠慮なく聞いてかまいません。

📌 要点

脳梗塞とくも膜下出血が疑われた場合、まず問診と神経学的診察で症状や発症時刻を確認し、頭部CTで出血の有無を迅速に評価、必要に応じてMRIや血管の画像検査、血液・心臓・頸動脈などの検査を組み合わせて原因と範囲を調べる。

🪶 日常へのアドバイス

日ごろから自分や家族の持病・飲んでいる薬・過去の病気の情報を書き出しておくと、いざというときに問診がスムーズになり、適切な検査や治療につながりやすくなります。

🏥脳梗塞とくも膜下出血の治療とリハビリの流れ

脳梗塞やくも膜下出血は、「どれだけ早く、適切な治療にたどり着けるか」で、その後の経過が大きく変わります。ここでは、発症直後からリハビリに至るまでのおおまかな流れを、できるだけイメージしやすく整理してみます。

脳梗塞の場合、発症からの時間と脳画像の所見によっては、血栓を溶かすt-PA静注療法(静脈内血栓溶解療法)が検討されます。一般的に「発症から4.5時間以内」が有効な治療時間帯とされており、この時間を過ぎると、脳出血の危険が高くなるため使えないことがあります。また、太い血管が詰まっているタイプでは、足の付け根などからカテーテルを入れて血栓を直接取り除く「血管内治療」が行われることもあります。

一方で、くも膜下出血では、まず「再び出血させないこと」が最優先です。多くは脳動脈瘤の破裂が原因のため、

  • 開頭してクリップで動脈瘤の根元を挟む「クリッピング術」
  • カテーテルで動脈瘤の中にコイルを詰める「コイル塞栓術」

などの手術的治療が検討されます。どちらを選ぶかは、動脈瘤の場所や形、年齢、全身状態、病院の体制などによって異なります。

🧭急性期を過ぎたあとの「回復」と「生活の再設計」

急性期の治療がひと段落すると、多くの方は回復期病棟やリハビリ専門病院に移り、集中的なリハビリテーションを受けます。ここでは、

  • 起き上がる・座る・立つ・歩くなどの基本動作
  • 食事・トイレ・着替えなどの日常動作
  • 言葉の訓練・飲み込みの訓練・認知機能のリハビリ

といった、「生活を取り戻すための練習」が中心になります。脳梗塞でもくも膜下出血でも、「どこがどれくらい障害されたか」によって、必要なリハビリの内容や期間が変わります。

大切なのは、「良くなる部分」と「残りやすい部分」を早い段階で見きわめ、本人と家族・医療者が同じ方向を向いてリハビリに取り組むことです。たとえば、「右手の細かい動きは時間がかかりそうだが、歩行は改善が見込める」といった見通しがあると、リハビリの目標も立てやすくなります。

ご家族としては、「どこまで良くなるのか」「いつごろ退院できるのか」が何より気になるところだと思います。医師やリハビリスタッフから説明を受ける際には、遠慮せずに「半年〜1年くらい先に、どのような生活を想定していますか?」と、少し先のイメージも確認してみてください。

📌 要点

脳梗塞では発症から限られた時間内でのt-PA静注療法や血管内治療が検討され、くも膜下出血では脳動脈瘤に対するクリッピング術やコイル塞栓術などで再出血を防ぐことが最優先となり、その後はいずれもリハビリを通じて生活機能を回復させていく。

🪶 日常へのアドバイス

もしご家族が脳卒中で入院した場合、医師だけでなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などリハビリスタッフとも直接話す機会を作り、「家に戻った後の生活をどう整えるか」を早い段階から一緒に考えていくことを意識してみてください。

🛡脳梗塞とくも膜下出血を防ぐためにできること

脳梗塞やくも膜下出血は、「完全に防げる病気」ではありませんが、「起こりにくくする工夫」ははっきりとわかってきています。とくに、血圧・塩分・喫煙・飲酒・運動不足といった生活習慣は、どれも脳卒中リスクと強く結びついていることが、多くの研究で示されています。

「体質だから仕方ないのかな」と感じている方もいるかもしれません。ただ、遺伝や年齢など変えられない要素よりも、血圧や生活習慣といった「変えられる要素」を少しずつ整えていくことで、将来のリスクを下げられる可能性があります。では、具体的に何から手をつければよいのでしょうか。

🧭血圧と塩分:いちばん大きな「修正できるリスク」

脳梗塞・くも膜下出血のどちらにとっても、いちばん重要な危険因子は高血圧です。脳の血管に常に強い圧がかかることで、動脈硬化が進み、血管が詰まりやすくなったり、弱い部分(動脈瘤)が破れやすくなったりします。日本のガイドラインでも、「血圧のコントロール」が脳卒中予防の柱とされています。

血圧を下げるために特に大切なのが、塩分(食塩)のとりすぎを防ぐことです。

  • 日本の食事摂取基準2020では、1日の塩分量の目安として「男性7.5g未満、女性6.5g未満」を示しています。
  • 高血圧のある方については、日本高血圧学会ガイドラインで「1日6g未満」を目標とすることが提案されています。

とはいえ、「いきなり6g未満」と言われても、普段どれくらいとっているのか、ピンとこない方が多いと思います。日本人の平均的な塩分摂取量は、今もなお1日10g前後と報告されており、目標よりかなり多いのが現状です。

まずは、次のようなところから見直してみてください。

  • 味噌汁・スープは「おかわりしない」「薄める」
  • しょうゆは「かける」ではなく「つける」に変える
  • 漬物・塩辛・干物など、明らかに塩分の多いおかずは量と回数を減らす
  • 市販のお弁当や外食は、汁ものを残す・大盛りを避ける

「全部は無理」と感じる場合、まず「毎日食べている塩分の多いものを一つだけ減らす」と決めても構いません。小さな変化でも、長い目で見ると血圧と脳卒中リスクに影響してきます。

🔍喫煙・飲酒とくも膜下出血

くも膜下出血の背景には、脳の動脈瘤(血管のこぶ)が破れるタイプが多く、その危険因子として喫煙(たばこ)と高血圧が特に重要だとされています。

たばこに含まれるさまざまな有害物質は血管の内側を傷つけ、炎症や動脈硬化を進めます。その結果、

  • 脳梗塞が起こりやすくなる
  • 動脈瘤ができやすく・破れやすくなる

という二重のリスクが高まります。

もし今も喫煙している場合、「本数を減らす」だけではリスクは十分には下がりません。禁煙外来やニコチンパッチなど、医療機関のサポートを利用しながらの完全な禁煙が、医学的に見て最も効果的な対策です。

飲酒についても、「量が多い・一度に大量に飲む」ことは、血圧上昇や心房細動(不整脈)の誘発を通じて脳梗塞リスクを上げることが知られています。

  • 週に何日も深酒してしまう
  • 休肝日がほとんどない

といった場合は、少なくとも「1日の量を減らす」「週に2日は飲まない日をつくる」といったところから始めてください。お酒を飲まない人が「健康のために新たに飲み始める」ことは推奨されていません。

📝運動・体重・血糖の管理

運動不足・肥満・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)も、脳梗塞の重要な危険因子です。

世界保健機関(WHO)は、成人に対して

  • 週あたり150〜300分の「中等度の有酸素運動」(例:少し息が弾む程度の早歩きなど)
  • または週あたり75〜150分の「強い有酸素運動」

を推奨しています。

いきなり「週150分」と聞くと、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、毎日30分ではなく、

  • 1日10分×3回
  • 週5日だけ実践する

といった形に細かく分けても構いません。散歩・買い物・家事など、「すでにやっている動き」をほんの少しだけ増やすことから始めるのが現実的です。

糖尿病や脂質異常症を指摘されている方は、

  • 内服薬やインスリンを自己判断で中止しない
  • 定期的に血液検査を受ける
  • 食事内容と運動について、主治医や栄養士と一緒に計画を立てる

ことが、長期的な脳卒中予防にもつながります。

📝すでに脳梗塞・くも膜下出血を経験された方の「二次予防」

一度脳梗塞やくも膜下出血を起こした方の場合、「もう一度起こさないための対策(二次予防)」がとても重要です。日本および海外のガイドラインでは、

  • 抗血小板薬や抗凝固薬(血をサラサラにする薬)
  • スタチンなどの脂質低下薬
  • 血圧をコントロールする薬

を、主治医の指示に従って継続することが強く推奨されています。

「調子が良いから」「薬はなるべく飲みたくないから」と自己判断で中止すると、再発リスクが大きく跳ね上がる可能性があります。薬を減らしたい・やめたいと感じたときこそ、「なぜそうしたいのか」「他の選択肢はあるのか」を主治医と率直に相談してください。

また、退院後のリハビリテーションや外来フォローは、

  • 運動機能の維持・改善
  • 再発予防のための生活習慣の確認
  • 不安や疑問を話す場

としても大切な役割があります。「もう十分だから」と自己判断で受診やリハビリをやめていないか、一度振り返ってみてください。

📌 要点

脳梗塞・くも膜下出血の予防では、高血圧と塩分、喫煙・飲酒、運動不足や生活習慣病への対応が柱となり、すでに発症した方は薬物療法と生活習慣の両方を続けることが再発予防に直結します。

🪶 日常へのアドバイス

完璧を目指す必要はありません。「塩分の多い食品を一つ減らす」「エレベーターを一回だけ階段に変える」「薬の飲み忘れをメモに書く」といった、小さな一歩を今日から一つだけ増やしてみてください。

🧠脳梗塞とくも膜下出血の違いをふりかえりながらまとめる

ここまで見てきたように、脳梗塞もくも膜下出血も「脳の血管のトラブル」ですが、その起こり方・症状・初期対応にははっきりした違いがあります。とはいえ、どちらにも共通しているのは「時間との勝負である」「迷ったら救急車を呼ぶべき病気である」という点です。

脳梗塞は、脳の血管が詰まって一部に血液が届かなくなる病気で、顔半分のゆがみ・片側の手足の脱力・言葉が出にくい・視野の一部が欠けるなど、「からだの片側の変化」や「ことばの変化」として現れやすいのが特徴でした。痛みを強く感じないことも多く、「なんとなくおかしいけれど我慢してしまう」ケースも少なくありません。

一方で、くも膜下出血は、脳の表面近くで血管のこぶ(動脈瘤)が破れて、くも膜の下に一気に血液が広がるタイプの出血でした。「これまで経験したことのない突然の激しい頭痛」がもっとも典型的なサインで、首の痛み・吐き気・意識が遠のく・けいれんなどを伴うこともあります。ごく一部には、軽い頭痛や「チクッとした違和感」から始まるケースもありますが、「いつもと違う突然の頭の痛み」は必ず警戒してよいサインです。

どちらの病気でも、救急現場では「いつから症状が出たのか」「どのように悪くなってきたのか」を確認し、CTやMRIで出血かどうかを見分け、脳梗塞のタイプなら血栓溶解療法や血管内治療、くも膜下出血なら再出血を防ぐためのクリッピング術やコイル塞栓術などを検討していきます。治療方針は、年齢・全身状態・画像所見・病院の設備などを総合して決まっていきます。

そして、どちらの病気も「急性期の命を守る治療」と「その後の生活を取り戻すリハビリテーション」、さらには「再発を防ぐための薬と生活習慣の見直し」という三つの段階をたどります。完全に元通りにならない後遺症が残ることもありますが、それでも早期の治療とリハビリによって、できることを一つずつ増やしていける可能性があります。「何もできない」ではなく、「今できる一歩は何か」を一緒に考えていくことが大切です。

脳卒中は、日本でも世界でも、いまなお主要な死亡原因・要介護原因の一つです。しかし同時に、高血圧の管理・禁煙・飲酒のコントロール・運動習慣・糖尿病や脂質異常症の治療など、私たち一人ひとりが関われる予防のポイントがはっきりしている病気でもあります。

「もし家族がその場にいたら、どう動くか」「倒れたとき、どこの病院に運ばれるのか」「持病や薬の情報をどう共有しておくか」。こうしたことを、元気なうちに少しだけ話題にしておくことで、いざというときに迷う時間を短くできます。完璧な準備はできなくても、「このサインが出たら迷わず救急車」「このメモを一緒に持っていく」といった、小さな決めごとからでかまいません。

🗂 よくある質問

Q:
脳梗塞とくも膜下出血は、どちらのほうが「危険」なのですか?
A:
どちらも命に関わる病気で、「どちらが軽い・重い」と単純には比べられません。くも膜下出血は発症直後の死亡率が高い一方で、脳梗塞も適切な治療が遅れると広い範囲が障害され、重い後遺症につながることがあります。どちらにせよ「疑ったらすぐ救急車」が大切です。
Q:
脳梗塞でも頭痛は起こりますか?ないと安心していいのでしょうか。
A:
脳梗塞でも頭痛を伴う場合はありますが、多くは強い頭痛を感じないか、軽い違和感程度にとどまります。むしろ「頭痛がないから安心」という考え方は危険です。顔のゆがみ・片側の脱力・言葉が出にくいなどのサインがあれば、頭痛の有無に関わらず脳卒中を疑って受診してください。
Q:
「いつもと違う頭痛」があったとき、自分で様子を見てもよい目安はありますか?
A:
「経験したことのないほど突然の激しい頭痛」「首の痛みや吐き気・意識が遠のく感じを伴う頭痛」は、くも膜下出血などの可能性があるため、自分で様子を見るべきではありません。軽い頭痛の場合でも、「いつもと明らかに違う」「急に立てない・しゃべれない・手足が動かない」などを伴うときは救急要請を検討してください。
Q:
若くても脳梗塞やくも膜下出血になりますか?
A:
高齢者ほどリスクは高くなりますが、若い世代でも起こり得ます。とくに高血圧・喫煙・大量飲酒・経口避妊薬の使用・先天的な血管異常・心臓の病気などがある場合は注意が必要です。「若いから大丈夫」とは言えないため、危険なサインが出たときは年齢に関わらず受診が必要です。
Q:
どの診療科にかかればよいのか分かりません。
A:
急性期(症状が出たばかり・急に悪化した)の場合は、診療科を選ぶよりも、まず救急車で救急外来に向かうことが最優先です。多くの地域では、救急隊が脳卒中に対応できる病院を選んで搬送します。落ち着いた段階では、脳神経内科・脳神経外科・総合内科などが中心となってフォローすることが一般的です。

📢 迷ったら、まず相談を

「これって脳梗塞かも…?」と感じたら受診のサインです。症状が突然・いつもと違うならためらわず119番を。退院後のリハビリや在宅支援のご相談は、地域の医療機関・保健所・ケアマネジャーにお問い合わせください。

📚 参考サイト

🪶この記事は公的ガイドラインおよび査読済み学術資料に基づいて執筆されています。診断・治療は必ず医療機関で行ってください。